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03 26
2012

書評 ビジネス書

『レイアウトデザインのルール』 オブスキュアインク

4862670245レイアウトデザインのルール ―目を引くページにはワケがある。
オブスキュアインク
ワークスコーポレーション 2008-02-05

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 最後まで読めそうでないので書評だけアップしておく。読めなかったわけはレイアウトを学ぶという意気込みがつづかなかったことと、画像は情報量が多すぎてつかみどころがなかったからだろう。

 活字本は一直線にさいしょから終わりまで一本線を読めばいいだけだが、ビジュアル雑誌のような本はあっちこっちに目を動かして情報をとってきて、またあっちこっちを探してととりとめがないので、根気がつづかなくなった。

 この本はレイアウトを学ぶにはひじょうにきれいな雑誌のレイアウトが集められていて、それだけで満足しそうな本である。レイアウトの実例集がたくさん集められた本である。書店の数十冊あるレイアウトを何冊もながめてみて、これがいちばんいいかなと手にとってみた。

 わたしのような活字に慣れた者にはビジュアル本より、いっそ新書で言葉がずっと並ぶ本で学んだほうがなにごとかをつかめたかもしれない。なまじビジュアルが多いととりとめのない印象を与えて、言葉での意味のあつめ方を失敗してしまうのかもしれない。もやもやとしたものを言葉でぎゅっと濃縮してほしいのである。

 わたしは雑誌はもうほとんど読まなくなった。テーマが興味ない特集が多すぎるし、読みたいテーマに一本だけに集約された本を読みたい。雑誌はあれもこれもで、わたしにはムダすぎるのである。ひじょうに局限された言葉に集約することがこの世界を理解するということではないだろうか。

 ブログやWEBサイトをつくるとき、技術的な記述をした参考本は多いのだが、ベーシックになるデザインやレイアウトを学ぶ機会はひじょうに少ない。どんなレイアウトが美しくて釣り合いがとれているのか、こういう本に学ぶ必要があるのではないかとこの本を手にとってみた。

 こんどこういうレイアウトを学びたいときは言葉や概要が多くて、ビジュアルの美しさに魅かれないような本選びが必要だなと思った。感覚でレイアウトを捉えるより、言葉で捉えないとどうもつかみどころがない、学んだ感じがしない。ひじょうにビジュアルがきれいな本であるけれどもね。


だれでもレイアウトデザインができる本 ―レイアウト・文字組・配色、センスアップのコツ― (エクスナレッジムック) デザインのルール、レイアウトのセオリー。 7日間でマスターするレイアウト基礎講座 (DESIGN BEGINNER SERIES) ノンデザイナーズ・デザインブック [フルカラー新装増補版] 配色デザインのルール―美しい色の組み合わせにはワケがある。
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03 02
2012

書評 ビジネス書

ジャーナリズムの本?―『新版 編集者の学校』 元木 昌彦

4062812622新版 編集者の学校 カリスマたちが初めて明かす「極意」 (講談社プラスアルファ文庫)
元木 昌彦
講談社 2009-02-20

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 ん、あれ? 編集の仕事ってなんだろうと思うほど、ノンフィクション作家のインタビューとか取材法が語られていて、それはそれですごい職人ワザが聞けるのだが、なんの本だったのかという感がいなめない。

 ジャーナリズムとかノンフィクション作家の指南本といったほうが近く、わたしは本はどうつくられるのかとかどう企画されるのかとか、つくられる過程とか知りたかったのだが、思い切りズレていった感がある。

 わたしはシンクタンクでワープロ雑誌の編集をバイトでしたことがあるが、テレアポばかりでなんの仕事やってるんだろうとやめた。記事はライターの外注だったし。新聞社のぼうや(ゲラの運び屋バイト)もしたことがあるが、編集部の人は定規をもって見出しとか文章が収まるかとかの作業をしていただけだった。編集ってなんの仕事だろうという思いがぬぐえなかった。

 編集の仕事は八割が企画を考えることだといわれているから、企画を考えることがおもな仕事なのだろう。

 幻冬舎の見城徹なんて四六時中、作家やアーティストとつきあっていないと本を出してもらえる人間関係がつくれないと、坂本龍一とか尾崎豊とか友だちづきあいみたいにベッタリしていたそうだ。編集の仕事って人のつながりをつくることが仕事なの?

 自分の感動したものをとにかく見ろ、読めという情熱をぶつけることが編集の仕事だという。広報マン的な仕事なのである。

 この本は三人ほどの編集者に話を聞いていて、あとの人たちはほとんどノンフィクション作家やジャーナリストの取材法やインタビュー法になっている。編集の話と違うな~と思いながらも、この人たちの肌感覚で語られる取材法は達人というか、超人だという域に達していて、思わずひきこまれるのだけど。

 ジャーナリズムは「のぞき」と「泣かせ」だと喝破しているのは、小林道雄というノンフィクション作家。わたしはあまりノンフィクションは読まないので作家名をよく知らないのだが、この本の作家はだいたいは名前を聞いた子がある人たち。ジャーナリズムの本質はこのようなゲスなもので、嵐山光三郎も正義の味方など思うな、興味の味方だと思えといっている。

 小林道雄という人は少年の凶悪事件は、目立つことを価値にしてしまったメディアの功罪にあるといっている。まったく同感である。

 吉岡忍の達観もすごいなと思う。見つけたいのはその人の思考のパターンだといい、リズムやクセで人間はものを考えており、その人なりの思考のパターンを見つけるのが取材だと考えている。事件の当事者も話したがっているのだが、口を開いてくれるまで信頼をつくるということだ。

 短い記事を書くときも、長い本を書くときも、明らかにすることはひとつだ。このひとつをつかめないとあれもこれもの文章になってしまうのでしょうね。

「自分とは関係ないや、と思って取材に行く人が多いですね。悪いやつは悪いやつ、それはおれではない、というのが、すぐに顔や態度に表れる。…おまえ、もう社か自宅に帰れよ、といいたくなる。おまえに関係ないことをいくら取材したって、そんなもの、ガラクタだぜ、とね」

 編集の本と思っていたら、ジャーナリストの卓越した肌感覚や皮膚感覚のリアルな人との関係のつくり方が聞ける本である。達人のからだで極めた言葉はやはり違う。

 でもこれって編集の仕事なんだろうか。人とのなま身の関係性の重要性をずっと語られていた本だという気がする。人間の精神とか思いとかをかたちにしてゆく仕事だからなんでしょうね。


編集者の学校 1週間でマスター 編集をするための基礎メソッド 働く、編集者―これで御代をいただきます。 編集者の仕事―本の魂は細部に宿る (新潮新書) 編集とはどのような仕事なのか―企画発想から人間交際まで
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02 22
2012

書評 ビジネス書

意外にいい本―『トヨタ流「改善力」の鍛え方』 若松 義人

4415070574トヨタ流「改善力」の鍛え方―強者のノウハウはあらゆる場で必ず強い! (成美文庫)
若松 義人
成美堂出版 2004-03

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 意外にいい本だった。

 ただトヨタとタイトルがつくのはいやだけど。大企業だからとか売れているからとかで礼賛されるとしたらなんの説明もしていないし。上昇気流に乗っていたからとか、市場拡大期をうまくつかめていたから大きくなっただけだったとしたら、トヨタ式の方法がよかったとはなにもいえない。大企業によりかかった成功礼賛本はそれがコケたとき、すぐに馬脚をあらわす。

 改善の本であるが、あまり改善の話ばかりだったとは思えない本であったように思う。かんたんな抜き書きだけになるが、興味をもたれた方は読んだほうが文脈からのほうがよくわかる。

 「規則だから」とお客様の不便に目をつむる。「前例がないから」と社員の不便や働きにくさに目をつむる。よくあることだが、「慣れてください」とか「我慢してください」では解決にならない。不便を便利に変えてこそ仕事だといえる。

 サービスというのはある水準に達したとしてもそれがすぐに当たり前になり、つぎつぎともっと進んだサービスを求められる。逃げ水のようなものである。いまは満足のいくレベルだとしても、少しでも改善を怠るとあっという間にとり残されてしまう。

 「忙しくて人が足りないくらいだ」と思い込んでいる。「いまやっていることが悪いんだ、ムダがあるんだ、まだ改善の余地があるんだ」と考える。

 スタッフの仕事は専門化する傾向がある。「あの人でないとわからない」となってしまう。仕事の標準化が進んでいないだけで、たいていのものは初心者でもできる、そうすることが必要だ。

 病院や銀行では長く待っても「混んでいるから仕方がない」ですませてしまっている。「なぜ混んでいるか」という真因を追究して、仕事のやり方を見直すことが必要だ。

 ノウハウは自分で苦労して身につけるもの。安易な他力依存はみずからの成長をさまたげる。

 テレビは視聴率のデータの後追い主義だから、顔ぶれ、ネタ、タイプが同じものになる。パターン化し、多様性から程遠くなる。過去のデータは過去の成功をくりかえさせてしまう。成功法を改善するのが成功者だ。

 決定は新たな決定の叩き台にすぎない。

 相手が悪いでは改善はできない。自分の売りたいもの、都合にいいものを売ったり、押しつけたりしていないか。技術者は技術に絶対の自信をもっていたり、顧客のニーズは全部わかっていると思い込んでいる。つくり手や会社の都合で仕事をするな。

 身のまわりのサービスを当たり前と考えるな。すこしでも不便を感じたなら、「なぜ」と問いかける。

 小売店は己の実態をつかんでいない。客はどんな人か、商品の動きは、一日どれだけ売れ、動いているか、初歩的なことを数字でつかんでいない。モノサシがあるから判断や評価が可能になるし、比較もできる。主観で仕事するな。

 恐い監督や演出家がいるという。でもある人にはやさしく、ありがたい人にうつる。「怖いという人は役者としての準備が足りない人とか、本当のことをいわれるのが怖いのでは」。耳の痛いことでも謙虚にうけとめれば進歩と発展がある。自分が最高と思うと進歩は止まる。

 問題点の指摘だけに終わると恨みを買ってしまう。どうすれば改善できるかいっしょに考える。

 壁にぶち当たっていつも引き返していてはいつまでたっても壁は突破できない。あきらめない人が最も強い人。よくやったとかおしかったと感想をのべるだけでは成長がない。いったん壁を越えてしまえば、自信となり、さらなる成長へとつながる。

 失敗は責任を問うより、二度と同じ失敗をくりかえさないための原因追究がなによりも大事である。さもないと同じ失敗をなんどもくりかえし、みんなが失敗を極度に恐れるだけになってしまう。隠すようになれば最悪である。

 わたしはむかしじっさいにはなんの役にも立たない思想や社会学ばかり好んで読んでいた。いまはその空虚さを感じるようになってきたので、結果や現実に活かせる方法や手段がものすごくほしくなってきた。知識は知識を知ることの楽しみももちろんあるが、現実に落とし込めない知識ばかり蓄積してもあまりにも空しいと感じるようになってきた。

 ふつうの人はその逆というか、ハウトゥやノウハウばかり求めて原理や理由をつかめないので、自分のものにすることや、応用や用途に失敗してしまうと思うのだけど。



トヨタ式「改善」の進め方―最強の現場をつくり上げる! (PHPビジネス新書) マンガでわかる トヨタ式カイゼン (宝島社文庫) 行動科学を使ってできる人が育つ!教える技術 9割のお客がリピーターになるサービス (知的生きかた文庫) フードサービス業チェーン化入門
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02 20
2012

書評 ビジネス書

ブログで使えるかも―『「つまらない」と言われない説明の技術』 飯田 英明

4532194245「つまらない」と言われない説明の技術 (日経ビジネス人文庫 ブルー い 13-1)
飯田 英明
日本経済新聞出版社 2007-11-01

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 会社の会議やプレゼンでの説明の技術を紹介した本だが、ブログにももちろん使える。書く側だけの都合や視点しかもてない人はこういう目の前に人がいる説明の技術を学べばいいかも。

 説明では自分が「話したいこと」よりも、相手が「聞きたい」ことをとりあげる。自分の言いたいことをまず封印することからはじめる。他者の視点から要点をまとめることが必要である。

 自分にとっての常識は相手にとってもほんとうに常識なのか。

 経験や知識をえるにしたがって、まだそれらをもっていない人の考え方や発想ができなくなる。デキル人や経験者が新人やできない人の「わからない」ことをまったく理解したり知ろうとしないこととおなじである。

 よく知っていることほど説明しづらい。

 説明は説明自身が目的ではない。理解してもらう、認識してもらうは説明の目的にならない。説明の結果、なにを得ようとするのかゴールを明確にすることがたいせつである。「どうしてほしいのか」の具体的なゴールを目的に説明の材料や方法を考える。

 説明は資料やデータを集めるだけが目的ではない。データは重要度や関係をとらえなければならない。

 「もし自分が説明を受ける側なら」と立場をおきかえて、「これだけの材料だけでは判断できない」とか、「このゴールにはこの説明などいらない」などを判断する。

 情報が多ければ多いほど「大切なこととそうでないこと」の区別がしにくくなり、「必要な情報はどこにあるのか」がわからなくなる。ぶあつい思想書とか学術書なんか典型ですね。さっぱりなにをいいたかったのかわからない。わたしは自分の感銘したところをひきだす方法を採用しがちなので、著者や本のメイン・メッセージとズレていることが多々ある。

 説明ではなぜ大切なのか、判断に必要な情報がどこにあるかわかるようになっていなければならない。ポイントを絞る。

 「何がいいたいか」をひと目でわかる表現にする。説明や資料ではさいしょから最後まで本のように読まれることはなく、新聞や雑誌のように飛ばし読みされる。

 グラフの使い分けは、棒グラフは「数量の比較」にもちいられる。折れ線グラフは「数量の推移」。円グラフは「構成要素の比率」。

 要点やポイントは三つでまとめる。ふたつだけの案は決定的な要因がないと決めにくくなる。多くの案だと優先順位をつけにくい。三つだと選択できるし、順位もつけやすい。

 説明の場では近くの人に話しかけるより、いちばん遠くの人に話しかける。全体に話しかけている印象を与えることができる。近くの人だけだとうしろの人は疎外感を抱く。うなずいてくれる人、熱心に聞いてくれる人に話しかけるとプラスの反応で自信をつけることができる。

 説明される側の視点はどのようなものかと考えたい人には参考になる本ですね。こういう視点で考えると重要なことや要点、なにをいちばんにいいたいのかをまとめるのはひじょうに大事になってくる。

 自分のいいたいことをだらだらいっているだけだと、聞く側から考えるとあとからなにをいっていたのかさっぱり覚えていないということになり勝ちだ。

 わたしはブログを長々と書いてきて、読者の視点が欠如しているというのはわかっている。読者の視点から発想してみるという要素をとりいれるためにこの本を読んだ。思想とか学問の本ではなかなかそのような本に出会わないが、ビジネス書にあるんだな。



プレゼンに勝つ図解の技術 (日経文庫) 質問力―論理的に「考える」ためのトレーニング (日経ビジネス人文庫 (い5-2)) PowerPointビジネスプレゼン ビジテク~図を描き・思考を磨き・人を動かすプレゼンテーション (ビジテク―BUSINESS TECHNIQUE) わかりやすく説明・説得する技術 考具 ―考えるための道具、持っていますか?
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02 11
2012

書評 ビジネス書

思考の欠点とは―『図で考える人は仕事ができる』 久恒 啓一

4532193141図で考える人は仕事ができる (日経ビジネス人文庫)
久恒 啓一
日本経済新聞社 2005-10

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 図解についての本ははじめて読んだのだが、期待は高まったが、この本では自分で使う図解の技術はほとんど身につかない。宣伝文ばかりで、使ってみたいと思わせるのだが、そのまま終わってしまうのは唖然とした。

 実践編がべつに出ているようだが、このような本を読む人はじっさいに身につけたいから読むのであって、宣伝や解説だけではない。みごとな肩すかし本である。

 ただし、文章で考える思考の欠点や特徴がみごとにあぶり出されていて、その点を読むには価値のある本である。だからタイトルは「図解思考で見えてくる文章思考の欠点と特徴」としたほうがまちがいはないと思う。

 思考のなんたるかをわかっている人に書かれた本であることはまちがいない。文章思考の欠点は思考じたいの欠点もあらわすから、思考の問題点を考えたい人には深い材料を提供することだろう。わかるとはどういうことか、一考に価すると考えさせられる。

 文章思考の問題点というのは狭いトンネルを歩いているようなところがあって、「虫の目」、あるいはモグラの目しかもてないと指摘されている。ほかの関係やつながりが見えないのである。

 対して図解思考は「鳥の目」をもち、鳥瞰図的な視点からながめられ、一目瞭然であり、全体像をつかめるという。文章というのは蟻のつながりをたどるようなところがあって、ひとつひとつたどっていたらほかの全体は見えないし、時間もずいぶんたってしまう。これはわたしもよく感じることである。図解思考はその欠点を補えるという。

 文章思考のこういう欠点を教えてもらったのはクリシュナムルティという宗教哲学者だった。思考の欠点を考えつづけた人だ。クリシュナムルティは思考で一瞬の理解はむりだといった。思考の静まったところにしか全体の理解は得られないといった。

 ほかに文章は位置関係を表すことが苦手だ。道を聞くのでも言葉で聞くより、地図をみたらひと目でわかるようなものだ。俯瞰的な視点を地図はもつのである。文章が地をはっているとしたら、地図=図解は鳥のような鳥瞰の目をもてるということだ。

 概念の説明にはその細部の詳細をのべるにしたがってわからなくなるということがある。ほかの似たものや別のものとの比較によって理解が進むケースがある。比較という方法は図解が適しているそうだ。

 文章というのはつながりや関係を表すのが苦手で、そのキーワードが大きいか小さいか、どの情報の質が高いか低いかも表しにくい。図解はそのような遠近的な見方を得られる。

 わたしは文章思考でものを考えてきて、ブログ記事の論理も言葉をつみかさねることで解明を図ってきたのだが、この方法しかもたないとそれを対象化・客観化する機会は少ない。図解思考の方法を知って、あらためて文章思考の欠点や特徴を垣間見せられた。比較によって思考の方を鳥瞰する目を与えられた。もうすこしこの文章思考の欠点や特徴について考えを深めたいと思った。

 図にすると次のようになる。ちょっと重複や整理ができていないが、まあ思考と図解の対比はアバウトにこのようなものになる。

zukai.jpg
▲文章思考と図解思考の対比。

 テレビで専門家にコメントが求められる。わかるように説明してもらいたいと人々は思っている。情報は膨大にあってもそのつながりを見つけられないでいる。その方法がわかれば宝の山に住んでいるも同然だ。物事の関係を見いだす力、関係発見力・関係構築能力が求められているというわけだ。図解思考はその方法を提供してくれると著者はいう。

 夜空の星はてんでばらばらで意味を見いだせない。しかし星座を教えられるとかたちや配置を覚えられる。星座を知る前に星空は存在しなかったのである。われわれは見ていても「見ていない」という状態があまりにも多いのだろう。つながりや関係を見つけられた人だけがその意味を知らせられる。

 まあ、図解思考というのは単純化とか本質をつかむ方法が必要ということなのだろう。

 文章思考の欠点と特徴をひじょうに彫りだしてくれる本だが、図解の方法を身につけようと思ったらまずはムリな本であった。


▼図解本はたくさん出ていてどれがいいかわかりませんね。
頭がよくなる「図解思考」の技術図解主義!マッキンゼー流図解の技術マッキンゼー流 図解の技術 ワークブック説得できる図解表現200の鉄則―ロジカル思考をアピールする概念図はこう描く

考えをまとめる・伝える 図解の技術 (日経文庫)自分の考えをまとめる図解の技術できる人の「超」図解術 (中経の文庫)図解で思考する技術 (PHPビジネス新書)図解力の基本 ちょっとしたコツだけど、だれも教えてくれない88のテクニック

02 01
2012

書評 ビジネス書

切迫した道案内かも/『35歳までに読むキャリアの教科書』 渡邉 正裕

448006572535歳までに読むキャリア(しごとえらび)の教科書 就・転職の絶対原則を知る (ちくま新書)
渡邉 正裕
筑摩書房 2010-10-07

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 よい本であり、おすすめしたい本であるが、出てくる人物がレベル高すぎてそんなエリートでも優秀な人物でもない人はどうしたらいいのかと自分にたいする残念感・負け犬意識を煽られる本でもあるな。

 まあ、わたしなんかハナからキャリアなんてぼろぼろで四十代だから、世間の相場やどんな売り方、買い方で労働市場が動いているのかとつかむために読んだ本である。

 ちょっとごちゃごちゃ詰め込みすぎた感のある本で、第4章の「動機を顕在化するには」の章がいちばん大事だと思うのでこの章をふくらませてもっとわかりやすくしたほうがよかったかもしれない。

 動機というのは自分の価値観で、なにをやることに価値を感じるかという考え方のことだ。この価値観とできることの仕事のすりあわせを二十代、おそくとも三十代半ばに完成させておけということである。自分の価値観とすり合わない仕事をやっていると充実もないし、成長もないし、成功もないだろう。「やらされ感」や「時間の切り売り」だけの仕事人生で終わってしまう。

 外発的な動機を見誤ってはならない。安定しているからとか、給料が高いからとか、世間や親ウケがするというのは内発的な動機にもとづいていない。自分の人生を放棄するようなものだ。チャレンジできる二十代のうちに内なる動機とすりあわせることのできる仕事のポジションをつかまえておけということである。

 ドラッカーの強みを伸ばすことの踏襲をしろということだ。

「努力しても並みにしかなれない分野に無駄な時間を使わないことである。強みに集中すべきである。無能を並みの水準にするには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーを必要とする」

4478300593プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))
P・F. ドラッカー Peter F. Drucker
ダイヤモンド社 2000-07

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 多くの学校や組織が無能を並にすることに懸命になっている。日本では「成功の鍵は強みにある」と思っている人は二割しかいない。

 ただ「才能ある分野で努力すれば、きっと報われる」には著者は否定的だ。「人材は育たない」と考えているそうだ。才能をバカでもないが、1%ももちあわせていない人間は意外に多いという。「努力すれば報われる」という政治的な言葉はもう通用しない。才能や資質がなく、強みがない分野で戦って生きてゆけるほど、世の中甘くない。

 動機とかけ合せるべき能力を知るには「他者に比べ、(圧倒的に)能力を発揮できた瞬間」を思い出してみろといっている。それが自分ができることの強みである。

 日本の労働市場が新卒や二十代までの若者しかとりたがらないのは、解雇ができない日本の法体系では定年まで雇うことが大前提だからである。いまの能力だけを借りるのではなく、ポテンシャルやのびしろ、育てがいが大事になるからである。

 さらに四十代になると事実上転職市場がなくなってしまうのは、日本ではピラミッド型組織でありながらレースから落ちた社員を解雇できないから過剰になる運命にあり、よほどの貢献がないかぎり四十代が雇われることはない。また管理職になる四十代では会社の内部に精通している者のほうがふさわしい。

 著者は三十代半ばまでに市場価値のある人材になっておけといっているのだが、日本の会社内人事というのはまずは下積みで販売現場でお客さんの声を聞き、地方のドブ板営業をこなして、それからというふうになるのだが、このコースを会社にいわれるままにこなしていると市場価値をゆいいつつけられる二十代の大切な時間をつぶされてしまう。

 商品企画や国際展開、マーケティングなどの市場価値が高まる仕事は最後までとっておかれて、市場価値が高まらない下積み、ドブ板営業を若手社員はずっとさせられる。それで五年、十年の月日を費やして外部の市場価値が高まらないまま、もしそこが衰退産業ならもっとも転職が厳しい四十、五十にリストラで外に出されて泣きを見るしかなくなる。

 これまでの会社は二十代に下積みをさせて育て上げるという考え方であったし、人員構成上そうせざるをえないところがあったのだろうが、四十代で事実上転職市場がないのなら、二十代で市場価値を高めることが必至になる。さもないと会社の業績悪化でなんのスキルもつかないまま四十代で市場に放り出されれば目もあてられないことになる。二十代が決戦の場なのに会社の人事に従っておれば、いちばんヤバイ状況に追い込まれるかもしれないということである。

 この本で出てくる人たちは自分の動機と能力をすりあわせるために転職をくりかえす人ばかりが出てくる。スキルが上がり、ほんらいの価値観=動機とすりあわせに成功した転職例がとりあげられている。売れない四十代に会社から放り出される人がほんとうに多くなった。市場価値の高まらない仕事に滞留させられるのは死に等しいのだろう。

 よい本である。若い人たちに向けてこれからどう市場価値を高めるキャリアをどう築けばいいか説明されている。ただごちゃごちゃしすぎて、頭の中にすっきりと整理しにくい。この書評を書いていてもどの要点を抜き出すべきかまだ定まらない。

 まあ、会社にお任せ人事では市場価値をゆいいつ高められる二十代を下積みですごすことになって、市場価値がつかないまま四十代になって外に放り出されないためのキャリアを考えないといけないということである。

 すぐれたキャリア本や生き方戦略本というのはそうないように思うのだが、この本は比較的すぐれている読むべき本なのだと思う。

 ほかにキャリア本ですぐれていると思ったのは、山本真司の『30歳からの成長戦略』という本で、コモディディ化(日常品化)されるものからいかに差別化をはたすかという戦略がすごかった。

 ちなみにわたしはこの本のキャリアコースからまったく外野外であり、周回コース・衛星コースでもうハレー彗星となって星になってしまったのだが、そういうばあいのキャリア・生き残り戦術についても考えている本がほしかったな。


▼わたしの書評。
30歳からの成長戦略』 山本真司

456966779130歳からの成長戦略―「ほんとうの仕事術」を学ぼう (PHP文庫)
山本 真司
PHP研究所 2007-02

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▼著者の感想をゲットしたぜ!
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▼この本も読みたいですね。
4062170663僕は君たちに武器を配りたい
瀧本 哲史
講談社 2011-09-22

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▼この本も一種のキャリア本?
4334034292非属の才能 (光文社新書)
山田 玲司
光文社 2007-12-13

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▼自分でキャリアを切り開かないと会社から放り出されたときに。。
キャリアショック ―どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか? SB文庫キャリアノートで会社を辞めても一生困らない人になる自分らしいキャリアのつくり方 (PHP新書)自分のキャリアを自分で考えるためのワークブックキャリア・デザイン・ガイド―自分のキャリアをうまく振り返り展望するために (Career Anchors and Career Survival)

01 06
2012

書評 ビジネス書

『残念な人の仕事の習慣』 山崎将志

4776206307残念な人の仕事の習慣 (アスコムBOOKS)
山崎将志
アスコム 2010-09-20

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 前著の『残念な人の思考法』が20万部ととすこし売れていたようだ。ビジネス書はよくなる方法は多く書かれるが、どんなことが残念なことなのか書かれていることは少ない。それとルーティーンワークを実験の場と考えるようなことが書かれてあったので読むことにした。

 まあ、客の立場でサービスのもっと改善点や効率的な方法はないかと考えたエッセイ本のようなものである。ゴルフ場、ホテル、ファミレス、タクシー、書店などの自分なりの改善方法が書かれている。客なんだから好きなことをいえる愚痴のいいたい放題の本に近いが、こういうほかの店のサービスに改善点を思いめぐらす訓練も必要なのではないかと思った。

 読み飛ばすような本だと思うが、ドッグイヤーの二、三点だけ銘記しておく。

 仕事の勉強というのは払ってするものではなくて、お金をもらってするものだといわれている。お金をもらう以上、ちゃんとした質の仕事を提供しなければならないというプレッシャーに追われることによって真の勉強や技術が身につくということだ。研修などの勉強ではこのようなプレッシャーの環境を演出することができないのだ。

 所得というのはどれだけ替わりがきく仕事をしているかと、勤務先のビジネスモデルでほとんど決まる。自分のやる仕事がどれだけ差別化されているか、勤務先の業種でどれだけ差別化されているかで生き残りが決まる。

 マネジメントの考えていることは仕事の標準化である。だれにでもできて、だれにでも替えのきく仕事に標準化してゆく。そうすれば賃金はどんどん低賃金化してゆく。

 チャップリンの時代から工場でずっとおこってきたことだが、90年代後半からはホワイトカラーでもおこっている。さっこんの賃金下落傾向は景気の問題ではないのである。

 差別化できずに標準化され、賃金が下落してゆく仕事というのは、

 ①よその国、とくに発展途上国でできること
 ②コンピュータやロボットにできること
 ③反復性のあること

 といわれている。このような仕事はいずれ発展途上国なみの賃金をうけいれざるをえないのである。

 働き手はいつも標準化の圧力にさらされている。得なこと、利益になることで選ばれている。選ばれることに鈍感である人には自分が商品を選ぶときのことを考えてみろといわれている。

 自分の選び方のこだわりはあなたの選ばれ方に比例しているかもしれない。いい加減に選ぶ人はいい加減に選ばれる。安いものばかり選ぶ人は安いかどうかで選ばれる。自分の消費行動を反省してみる必要があるのかもしれない。

 会社側が標準的な仕事ばかり押しつけてきたり、それ以下しか期待していないばあい、われわれはどう差別化してゆけばいいのだろうか。マネジメントの視点、創業的な視点を得るしかないのだろうか。


残念な人の思考法(日経プレミアシリーズ) 仕事オンチな働き者(日経プレミアシリーズ) 残念な人の英語勉強法 残念な人の仕事の中身 ~世界中の調査からわかった「組織で評価されない人」の共通点 30の「勝負場面」で使いこなす ロジカル・シンキングの道具箱
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12 28
2011

書評 ビジネス書

『名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方』 鈴木 康之

4532194490名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方 (日経ビジネス文庫)
鈴木 康之
日本経済新聞出版社 2008-07

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 文章は自分のために書くものか。人に読んでもらうためのものか。ブログなんて自分のために書くことが多いと思うが、多くの人に読んでもらいたいという気持ちもあわせもつ。読まれるブログははじめから読まれることを想定したターゲットが明確なのではないだろうか。

 わたしは自分のために書く。でないと反響がなかったり読まれなかったら長つづきはしないだろう。だけど読まれること、読者の顔や反応も大事なことはわかっている。それができないので、こういうはじめから読まれることを想定したコピーの本を読む。

 「文章は書くものではない 読んでもらうものである」

 コピーというのははじめから読まれることを目的にしている。自分のために書くのではない。商業コピーはあくまでも客商売、お客あっての文章という目的が明確である。芸術的な文章術となるとそこらへんがあいまいであったり、ぶっとばされたりする。このベクトルがまずは大事なのだが、自分のためにやむをえず書かざるをえない文章が高尚な芸術や文学だったりする。ひとりよがりや他人がおおよそ興味のない文章を書きつらねるだけの文章もまだ問題である。どうすれば読者の気持ち・思いを察することができるようになるのだろう。

 「コピーは読者への土産話である」と著者がいうように広告コピーは企業と読者をつなぐ媒介役にすぎない。「一つのメッセージがどうやったら一番届くかという方法論を探ること。個性を出すとかそういうことじゃない。…クライアントと対面して、なにが大事かを掘り起こして代筆する。うまいことを言ってやろうというコピーライターはいるけど…」

「僕らの仕事ってイタコに近いですね」

 広告コピーというのは出発点が企業の宣伝となるよい点、知らせたいことを探ることがまずいちばんたいせつである。そのベクトルが広告コピーではさいしょから規定づけられている。そのうえでどうしたら読者の目をひくコピーや文章を書けるかが考えられる。ほかの文章とは立ち位置、出発点、方向がさいしょから違うのである。読まれるために書く文章は自分のために書く文章だって参考になる視点である。

 著者は広告学校の講師をしているが、「まずは似たものの違いの説明」という文章を書かせるそうである。同じようなものの中から、どちらがトクとか、優劣をつけてそれを推すといった文章を書かせる。

「広告コピーは、飲料、ケイタイ、住宅、旅行、なにであれ、似ている競合商品群の中での差別化なのです」

 なるほど。

「こんなテーマはほかの人も書くだろうな、ぐらいのことは気づかなければダメです。人と同じようなことをすることは恥ずかしいと思って避けなさい、独創的オンリーワンでありなさい」。

 でもこうもいっている。「独創的で突飛なことを書くようにしよう、と思うことから文章と取り組まないでください。ごくふつうの考え方、一般論、大衆感覚、そういうものを無駄だと思ったり、無視したりしてはいけません」

「広告はみんなに呼びかけ、みんなに共感してもらわなければならないものです。それにはベースとしてのみんなの考え方、現実の暮らし方をよく知っていなければなりません。「みんなこうなんだよな」「そうなんだよな」という共通認識、共有の感覚から仕事を始める必要があります」

 クリエイティブとか芸術をめざす人は大衆や一般の人の感覚や感性をバカにする傾向がある。だからこそ高尚でハイブロウな作品ができると思うからだ。だけど商業広告には一般の大衆の感覚も大事にしなければならない、高尚の極地に閉じこもってはならないのである。芸術志向や自分を高く評価されたいと思う人は高尚のバベルの塔に閉じこまれないのはキツイだろうな。広告は商業や客あっての商売だと割り切らなければならないのである。

「読む人がこんなテーマを面白がって読むかどうかくらいのことを想像できないようでは、コミュニケーションの仕事をする資質に欠けている、書けばいいってもんじゃない、読んでもらえるかどうか、考えて書くものだ、と渇を入れ、根性を入れ替えさせます」

 文章は読んでもらえないもの、さいしょのとっかかりにふれてくれるだけでもありがたいと思うほどの謙虚な出発点からスタートしないと、読者をさいしょからふり飛ばしていってしまうものだろう。自分のために書く人は読者をのせないで飛んでいってしまう牛や馬のようなものなのだろう。だれにもつかまらないが、それはなんのための文章か。

「書くことは読む人との気持ちのゲーム」

「巧みに書かれた文章は「え、なんだって」「なるほどね」という反応を読み手の中に引き出します。…読み手の顔つきを想像して、どう反応するか、これでいいかどうか、用心深くよーくチェックしながら書き進めてください」

 こういう読者の想像ってできますか。わたしは自分ならこう反応するかは想像できても、自分とまったく違う人の反応を想像することはまず想像外である。そういう他者の反応像というのは自分のなかでストック・ひきだしをたくさんつくらなければならないと思うのだ。ブログではコメントで人の反応を知ることができるが、文章一句一句にどう反応したかはわからない。

 たくさん書きたい人も文章を文字数の制限によって絞らなければならない。「書く人の書きたい順ではありません。読んでもらう人にとっての知りたい順です。…いい文章はその想像力で決まります」

 商業文章の書き方は徹底的に読者に読まれるために存在する文章である。読まれたいブログをめざしたいと思っている人は商業文章を訓練するのがいいのでしょうね。


文章がうまくなるコピーライターの読書術(日経ビジネス人文庫 ブルー す 4-2) 広告コピーってこう書くんだ!読本 新・コピーライター入門 キャッチコピー力の基本 ひと言で気持ちをとらえて、離さない77のテクニック マーケティング脳 vs マネジメント脳 なぜ現場と経営層では話がかみ合わないのか?
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2011

書評 ビジネス書

『「WHY型思考」が仕事を変える』 細谷 功

456979078X「WHY型思考」が仕事を変える (PHPビジネス新書)
細谷 功
PHP研究所 2010-08-19

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 この「WHY型思考」というのはまさしくわたしが知識を漁る際につかってきた謎かけ法で、この問いかけがあるために知識はつぎつぎとドアを開いてきたといえるだろう。それをコンサルタントがどうまとめているかを見たいと思った。

 この思考のあり方をまず問うのはコンサルタントではなくて、知識人や教育学者ではないかと思うが。「なぜ?」と問うことにより広がる知識の世界、教育でなぜを問わずに決まった答えを覚えさせる学校。多くの問題提議をかかげるテーマだと思うのだが、もはや社会問題といえるべきテーマが仕事の応用だけの技術論に閉じ込められるなんて。。

 著者の細谷功は「WHY型思考」の対比に「WHAT型思考」というものをもちだしているが、わたしにはいまいちぴんとこないネーミングだった。「そのままくん」や「操り人形」、「マニュアル人間」とか、いわれていること、決められていることをそのままくりかえす思考停止のことをさすのはわかるが、それは「WHAT」ではなく、「考えないこと」、「自分の頭で考えないこと」で充分だろう。

 要するには決まったこと、きのうまでにできあがったことをそのままくりかえすことだ。学校では決まった答えを教えられ、社会に出てもきのうまでの決まりや規則を遵守し、なにひとつ違ったこと、ほかのことをなさない。ルーティンやマニュアルが決まった社会や企業では必要とされてきたのだが、製造業のキャッチアップが終わった日本にとってもはや危険な思考法だろう。

 しかしその日本で「なぜこうなっているのか?」「なぜこういうしくみになっているのか?」と問われることはほとんどない。学校にしてもきのうまでに発見された「真実」と「答え」を教えるのみ。きのまでの知識というのは過去の範例や既成の社会をくりかえすさいには適しているのだが、新しいもの違ったものが求められる時代においてもはや危険な過去の遺物だろう。それなのに新しい世界や変化を切り開く「なぜ?」という問いが発せられたり、学校で推奨されることはないのである。

 「自分で考えろ」とか「考える頭をつくる」という掛け声はよく発せられる。しかしそのあいまいな言葉ではなくて、「WHY型思考」と絞り込んだことにこの本の慧眼は光るのだろう。「なぜ?」と問うことは表面にあらわれたことを見るだけではなく、その本質や理由、背景を問うことだ。学校のクイズ形式の勉強では表面の問いと答えの閉ざされた世界に閉じ込められ、そしてきのうまでの「真実」と「慣例」に従って同じことをくりかえすだけだ。

 社会学なんてものは「常識」や「当たり前」、「自明性」を疑ってみる学問だ。学問なんてものは既成の知識やあり方について「なぜ?」という問いからはじまり、その問いなしにははじまらないといっていい。でも学校というのはその「なぜ?」ではなくて、なぜを問うた答えを覚えさせるだけである。つまり問い方の思考法を身につけさせるのではなくて、答えを与えてしまう。自分で考える頭を養えないのはとうぜんである。

 ちなみにわたしは知識や学問にかんして「なぜ?」を問いつづけてきたのだが、仕事についてもこの思考法を応用してみるべきなんて思ってもみなかった。「なぜ」を問うことによって仕事の改善や向上がおこなわれるのですね。ルーティンの仕事だから考える隙間なんかないとバカにしてきたせいだろうか。

 WHY型思考というのは教えることができなくて本人が自発的にそうならないと絶対に育たないといわれている。わたしのばあいも疑問を感じてそれを文章に書いてゆくうちに関連書を読みあさり。。といった循環をしぜんにかたちづくっていった。自分の疑問や「なぜ」を追いかけてゆくうちにしぜんに身につくものだろう。

 バーナード・ショーいわく「人に何かを教えても、その人は何も学ばないだろう」

 「WHY型思考」というのは答えのない世界である。学校で教育をうけた人はこの世に答えは絶対あると教え込まれ、社会に出ても答えはだれかが知っている、どこかにだれか知っているエライ人がいるはずだと思い込んでいるのだろうが、「WHY型思考」の人間にはこの世界にはなにひとつ「答えなんてない」と思っている。「なぜ?」の問いには無数の解釈や仮説があり、それが絶対だといえる根拠や証拠も確実ではない世界にずっととどまることである。

 もしかしてあなたはこの世界に正しい「答え」や「正解」があるとまさか思っていませんよね。


▼自分で考える本は無数に出ているのですが。
すぐに実行できるのに誰も教えてくれなかった考える力をつくるノート (KEIO MCC Intelligence Series)考える力を伸ばす教科書―ダイアローグと論理で思考力を高める「考える力」はこうしてつけるすごい「考える力」! (知的生きかた文庫)考える技術

自分のアタマで考えよう自分で考えることができる人、できない人自分の頭で考える考え方のつくり方―自分のアタマで考えるメソッドポール・スローンの思考力を鍛える30の習慣

究極の思考術―あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点15「思考」のすごい力Think!別冊NO.1  一流の思考力 (シンク!別冊 No. 1)

12 17
2011

書評 ビジネス書

『すぐに稼げる文章術』 日垣 隆

4344980131すぐに稼げる文章術 (幻冬舎新書)
日垣 隆
幻冬舎 2006-11-30

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 わたしは自分のためにものを書いてきたから、人に読まれるもの、人の読みたいものを想定することが苦手である。文章術は読者がどういうものを読みたいかを想定する方法を教えてくれればいいのだが、この『稼げる文章術』はさいしょから読者に読まれることを発想するわけだから、その手に近い本かなと思って読む。

 趣味の創作というのはだいたいは自分のやりたいことからはじめるのであって、読者がどういうものを読みたいかを考えながら書かないのではないかと思う。創作者ってなかなか読書の読みたいものを想定する想像力をはぐくむのが苦手なのではないか。読者の読みたいもののツボを押さえられる人が世に出てゆくのだと思うが。

 以下、この本に書かれていること。

「書評とは①その本を買いに走るように行動提起する文章 ②レビューそのものがエッセイとしておもしろく読める、そのどちらかでなければいけない。「この本は買うな」と言いたいのであれば、わざわざレビューなど書くなということです」。

 わたしは読むに値しないと思った本も書評に書く。書評はそういう本をより分ける導きでもあるべきだと思っている。商業印刷物の書評は売るための書評をのせるものかもしれないが、ブログの書評は売るためだけに書かれるのではない。

 おもしろい文章を書くためにいいところ、悪いところを言語化してみるといっている。そういう理解がないと自分の文章が悪文と同じわだちをふんでしまうといっているのだが、書評でも同じだろう。悪いことを書くということはその失敗の理由を理解して、ほかの本でも失敗しない理解をかたちづくることでもあると思う。

「文章がおもしろいということは、ひとことで言えば意外性があるということです。意外性をもった書き出しと文章運びがなされていることがおもしろい文章の実態なのです」

 これを読んでまっ先に村上春樹の文章を思い出した。比喩の意外性や哲学的な文章の挿入で、村上春樹の文章は意外性に満ちている。タイトルでもありきたりであたりまえのことをいっていても人はなんの興味も示さないもので、意外性でひきつけるものがなければならない。意外性を感じる読者を自分の頭の中に住まわせておきたいものだ。

「本来相手には必要ないかもしれないものを、読者の時間を奪って読んでもらうわけですからね。場合によっては文章に対してお金を払って読んでもらうのですから、それなりの工夫が必要です」。心したい指摘である。

 文章で稼げるようになるにはその人しか書けない、喉から手が出るほどほしい素材や内容が必要である。ネットでタダで優秀な文章を書く人が増えている現在、文章で稼げるようになるのは平々凡々なものしか書けないようではダメだろう。

 文章を書くというのはそれまでいわれてきたことに対して、不満や違和感があるからこそ文章を書く。考えるということは、反論し、否定すること。深い指摘である。日常に満足していて、ほかの人と同じことをやっていたらいいと思う人に文章や表現の意欲はわいてこないものだ。

「インパクトのある文章の正体とは、読んだ人の約3割から反発を招く文章」。反論や反発を恐れているようでは読まれる文章は書けない。ブログの炎上はかなり感情的な反発を多くの人に感じさせるものだから勘違いしてはならない。8割の人に感じさせてはならないし、ましてや炎上マーケティングなどの勘違いもよしたほうがいい。

「たとえ明確でも、ありふれた主張であってはおもしろくありません。斬新さが必要なのです」。

「文章をリピーターにしていくためには、文章に中毒性を織りこむことは欠かせません。…文章の中に覚醒剤のようなものを入れこむことが大切だと思います」。

 美術大学や芸術大学があっても卒業しても学校の先生になるくらいしか道がない。作品を売って、美術で食ってゆく道をこれらの大学はまったく教えていない。これはほかの大学や学校でもそうで、学問や知識は教えても食ってゆく方法や利用法というものは一分たりとも教えていない。欠如したビジネス的な発想や方法が求められているのではないだろうか。

 日垣隆はtwitter上で見かけたことがあるが、ひどい人格障害者ではないかと思えるような誹謗中傷を吐いていたような覚えがあってうんざりしたのだが、この本ではその印象はうすれてふつうに論理的に読めた。知識というのは人格上の向上や陶冶もふくめてほしいものだが、この人のばあいは論争に勝つとか、勝利にこだわる気質をもっているのだろう。

 日垣隆の『売文生活』という作家の収入をぶっちゃけにさらした本は興味深かった。『ラクをしないと成果は出ない』という本はビジネス書の真似をしてみまたしが、失敗しましたという本に思えた。日垣隆という人はジャーナリズムがおもな活躍の場所かしらないが、ビジネス書的なものにも色気を出している。思想的でも哲学的でもない立ち位置が中途半端に感じる。
 

こう考えれば、うまくいく。 ラクをしないと成果は出ない (だいわ文庫) 2週間で小説を書く! (幻冬舎新書) 売文生活 (ちくま新書) 知的ストレッチ入門―すいすい読める書けるアイデアが出る (新潮文庫)
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うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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