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02 10
2008

書評 ビジネス書

『日本の優秀企業研究』 新原 浩朗


日本の優秀企業研究―企業経営の原点 6つの条件 (日経ビジネス人文庫)
新原 浩朗

日本の優秀企業研究―企業経営の原点 6つの条件 (日経ビジネス人文庫)


 私は企業活動というものに興味をもてず、しかたなく生活のために企業で働かざるを得ないが、なぜかほんとに企業活動に興味がもてないんだな(笑)。製品とか商品をみてもまったく興味が落ちるし、企業活動のなにが魅力なのかと思ったりする。

 まあ、これではいけないので私の興味のある社会学的な観点から企業活動をながめて興味をもたせることはできないか。あるいは下っ端にすぎない者が企業を動かすというはどういうことなのか、そういった観点からみてみるのも勉強になるだろう。

 この本はよくあるようにカタカナや専門用語の経営理論を上からもってきた本ではなくて、現にある優秀企業から成功の理由を抽出した本である。だから現場感覚に近い本で、なかなか好評であったようである。経営の専門家より、現場の経営者のほうが肌で経営というものをより多く知っているはずであるし、上からもってきた理論は自企業と合うとは限らないし、つぎはぎや、ときに自社の強みを削ってしまうかもしれない。ケースバイケースなんだろう。

 優秀企業の第六の条件が掲げられていて、優秀企業からの具体的な例がひかれていてひじょうに納得しやすいつくりになっている。ただよい条件というのは、必ず悪い条件にも転嫁する例があると思われるので、かんたんには絶対条件だとはいえないと思う。その見極めが大事なんだろう。

 優秀企業の条件を羅列すると、「分からないことは分けること」、「自分の頭で考えて考えて考え抜くこと」、「客観的に眺め不合理な点を見つけられること」、「危機をもって企業のチャンスに転化すること」、「身の丈に合った成長を図り、事業リスクを直視すること」、「世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること」、となっている。

 優秀企業としてあげられているのは、花王、キャノン、シマノ、信越化学工業、セブン・イレブン・ジャパン、トヨタ自動車、任天堂、本田技研工業、マブチモーター、ヤマト運輸、となっている。どの企業もこの優秀企業の条件にぴったりと合わさった具体例があげられていて、さすがだなと思う。

 得意分野に絞ることや、業界の常識・成功の形を信じない、改革は主流から離れた経営者のほうがうまくいくなどなるほどと思うが、私がとくに強く思ったのは第六の条件「世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること」である。

「キリスト教精神のサービス・アンド・サクリファイスとは、自己犠牲と奉仕の精神が崇高な人生であるという人生観であり、そこから来る使命感が、米国の持続的な優秀企業のCEOには感じられる」

「成果の良くない企業を見ていると経営トップの軸が金にあり、したがって、その企業の提供する製品・サービスがどのように顧客から評価されているかについて本当の意味では経営トップが関心を持っていない」



 企業というのは社会的な利他行為をなすことであり、その見返りに報酬や金銭があたえられるものである。社会への貢献があるからこそ、顧客は金を払うし、商品を買い、信頼するものである。この基本を忘れたら、すぐに市場から退却させられるし、存在の理由もなくなる。

 こんにちは金や稼ぎがまず最初にきてしまうようになることが多くなったが、基本的には人間関係と同じで、いやな思いや奪うことばかりする人間はすぐにそっぽを向かれる。利他行為が利益の源泉なのである。ただ企業には資金がたくさんあり金にものをいわせることも可能であるが、社会貢献を忘れた企業は顧客の損失と不満を招き、市場から淘汰される運命にあるのだろう。

 こんにちは自分の利益や稼ぎ、自分さえ良ければいいといったミーイズムがふつうの人に中にあると思う。それを口で否定するのはかんたんであるし、私自身も人を批判できるほど強い犠牲精神をもっているわけではない。なぜこういう風潮がふつうになったのかを考えるべきだと思う。

 社会貢献や利他行為が至上であるといった規範や評価が世間からなくなってしまった。消費社会や個人主義が利他行為や道徳的行為を評価しなくなったからだろうか。企業活動の根本が失われている気がするのである。

 強制的な利他行為ほど腹だたしいものはないが、市場は社会のニーズにあった貢献をするものに報酬をちゃんと与えるものである。もちろん権力や政治のバイアスがかかるのを多く割り引いてみなければならないわけだが。



見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み 決算書がおもしろいほどわかる本 新会計基準対応版―貸借対照表・損益計算書からキャッシュ・フロー計算書・経営分析まで 管理者の基礎テキスト ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則 ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則
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04 29
2008

書評 ビジネス書

『スタバではグランデを買え!』 吉本 佳生


スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学
吉本 佳生

スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学


 100円ショップはなんであんなに安くなるのかとだれもが思うだろう。そのような価格の謎を解いたこの本は経済本としては異例の15万部が売れたそうだ。値段のリテラシーってけっこう私たちがほしがっているもので、それで賢明な消費者になりたいと思っているのだろうし、日常生活にぽっかりと開いた私たちの身近な究明しやすい謎でもあり、好奇心に駆られやすいのだろう。

 よく雑学の文庫などで値段のカラクリを説明した本が売られていたりする。私も『儲けのカラクリ』という本を読んだ。たしかにカラクリに驚いたり感嘆したりするのだが、しかしこの手の本は二ページくらいで一項目を図やグラフで大きく説明していて、すぐにつぎの項目に移る。それからの考察や追及がおこなわれないのである。

 もうすこし文章で追究したのがこの『スタバではグランデを買え!』ということになるのだろうけど、価格の考察はもっと深く奥まで追究するべきだと私は思う。謎や考察はもっと先に開かれているべきなのである。そういう意味で説明がすぐ終わったり、説明はこれで完結したと思わせる本は、親切ではない。「こうであるか?、いや、こうでないか?、あるいはこうかもしれない?」と考察の迷宮に読者を放り込むことが、優れた経済書であると私は思う。謎がいつまでも究明できないのがこの世というものであり、それでこそ知識や学習の楽しみはつづくのである。

 私はこの市場経済のからくりを解くことが、社会現象や人間社会を解く鍵だと思っている。経済原理が人間の謎を解くのである。たとえば結婚にしても、人間関係の軋轢にしても、また職業観についても、経済原理または物々交換の関係がその根底を規定づけていると思うのだ。価格にならないものでも、けっこう交換の関係で規定づけられているものである。

 そのような目で社会の謎を解きたいと経済学の本に手を伸ばしたりしたものである。フリードマンの『選択の自由』なんてじつに納得させるものであったから、市場原理はこの社会をうまく説明できる原理であると思った。市場原理で社会を解明すべきだという究明はまだ私の中に根づいている。だけどなかなか思いのツボを得た経済学の本にそう出会わないのである。まあ、経済学者の究明したいことがらと、私の究明目標は違うからだろう。私は経済人類学や経済社会学?のような方向に向かうとしたら、経済学者はやっぱり経済現象に目標をとめるからかもしれない。経済学で社会をぜひとも読み解いてほしいものである。

 ちなみにこのような本である。
 『不道徳教育』 ウォルター・ブロック
 『隷従への道』 フリードリヒ・ハイエク
 『経済学で現代社会を読む』 ロジャー・ミラーほか
 『経済学的思考のセンス』 大竹文雄
 『リバタリアン読本』 森本進

 人間の社会を社会学や心理学で解くだけではなく、社会生物学から解くという視点もなかなかおもしろかった。竹内久美子の説明理論である。繁殖戦略から人間を読み解く視点はすこしうならされるものがあるのだが、人間繁殖だけがすべてではないと思うのだけど。

 旧ホームページになるが、社会生物学の考察と書評。
 「繁殖で頭がいっぱい!」 2001/5/7
 「身体言語-社会生物学」 2001/5/13書評集

 繁殖か、あるいは価格と市場原理か。人間をつき動かす根本の原因とはなんなのか。表面的には市場原理が人間を動かし、おおくの現象はそれで説明できるかもしれないが、マルクスは経済を下部構造として位置づけたのだっけ、まあ繁殖戦略が根本にあるのはまあ、うなづけるところである。

 市場原理が人間をつき動かす大きな要因であるという究明はまだ私の中ではつづけたいと思っている。この本は価格からそのような試みに近づいた本ということになるだろう。しかし社会を読み解くという考察には及んでいないのであるが。そして説明が完結したと思わせる本よりか、疑問や謎を噴出させて考察の追及をまだまだおこなわせようとする本であったら、もっとよかったかもしれない。説明はこれで完結したと思わせる本はそれでおしまいなのである。


お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書) 金融商品にだまされるな! 世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく 効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法 レバレッジ勉強法
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07 20
2008

書評 ビジネス書

『会社が放り出したい人 1億積んでもほしい人』 堀 紘一



会社が放り出したい人 1億積んでもほしい人 (PHP文庫)
堀 紘一

会社が放り出したい人 1億積んでもほしい人 (PHP文庫)


 むかし私もビジネス書をよく読んだ。いまの経済はなぜこうなっているのか、どうしてこうなったのか、と歴史的なものを学びたかった。だけど商売や業績、出世に興味のないヘンな読み方であるが。堺屋太一、ドラッカー、日下公人、大前研一、江坂彰、などを読んだ。げんざいの経済の起源や原因を教えてくれるような堺屋太一やドラッカー、大胆な発想をする日下公人、などが好きであった。

 堀紘一もそのような本として読んだ。TVでもよく見かけ、押しのある自信のありそうな声が印象に残っている。かねがね経済やビジネスの変化をつたえるビジネス書は読みたいと思ってきたのだけど、薄っぺらい本でも千五百円もしたりして、買うのを控える機会が多かった。

 まあ、この本は会社人間的発想で生きていれば、二十年三十年後に悲惨な目に会うというビジネスの変化を謳った本である。でもそういう会社人間的、社内力学的なものは、片足はつっこんでないとこれもまた問題だと思うのだが。世の中変わらずにそういう力学で動いてゆくのもまた事実だろう。

 堀紘一は45年生まれで、たぶんに団塊世代的な環境や世代を生きているからだろうから、のちの世代がぴったりと参考になる環境や考え方を学べるかは怪しんだほうがいいかもしれない。人間というのはどうしても世代や環境の枠内でしか見えないほうが多いだろうし、自分の職業やまわりの環境で世界を普遍化してしまう傾向もあると思う。経済・社会全体を語っているように見せかけて、自分の業界や半径10mのことじゃないかとツッコミを入れたくなることもあるのだが、そこらへんはよくかみ分けて読むことが必要なんだろう。たとえば就職氷河世代はまた違った時代を生きていることも理解しておくべきなんだろう。

IBMの取締役は、社長たった一人に嫌われるだけで、これまで何十年もかけて築いてきた地位や名誉も一瞬にして失ってしまうことになる。
「オレなんか、年間に千台も自動車を売っているんだから、誰か一人の客に嫌われたって、売上が一台減って九百九十九台になるだけだ」
自分の生殺与奪権を握っている上司に見放されたら終わりというのでは、あまりに情けない生き方だと思うのである。



 これはこの社会の基本だろう。世間では中古車の販売店より、デカイ会社の社長のほうが偉いとされているが、根本の強さでは、社長や部長の地位は風前の灯の前に立たされている。社会主義か市場主義のどちらがいいかということもこの言葉は語っていて、社会主義もトップのサジ加減ひとつや機嫌でどうにでもなるものであり(ほんとうに殺された)、市場でのプレーヤーは民主的な強さや多様性の強さをもっているといえるだろう。社内の政治力学もあいかわらず大事だと思うが、市場での強さも考えなければならないということである。

 会社が放り出したい有害な社員は、仕事ができるかできないかではなくて、こういわれている。「欲のない」人である。

①マイナス思考の人
②デマを飛ばす人
③ヤル気のない人



 いっぽう、一億円プレーヤーの基本条件はこうである。

《大前提》何か一芸に秀でている。
《基本条件》強烈な目的意識を持っている、常に自分原因論で生きている、絶対に諦めない、表現力が身についている、信用がある、真の仲間がいる



 私などは企業活動にやる気を見出せないし、一億円プレーヤーなんかめざしたくなくもないし、会社が放り出したくなる「欲のない人」なのであるが、だからこそなにが会社で評価されるのかも悟っておく必要がある。擬態は必要である。それにしてもこういう、人を善と悪に切り分ける二分法って、けっきょくは人の悪口に近いものにたどりついて、好き嫌いに帰着するという、自分の性格に合うものを語っているに過ぎないと思うこともある。他人の評価って究極的には、いっている本人の性格の適合性しか語っていないんじゃないかと見なしておいたほうがいいんじゃないかと思う。どんな理論で武装されていようと。


サラリーマンなんか今すぐやめなさい 実践的リーダーシップの鍛え方 突破力!(仮) (PHPビジネス新書) 超人脈力 (講談社ニューハードカバー) 常識として知っておきたいビジネス数字
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10 21
2008

書評 ビジネス書

『今すぐ転職でチャンスをつかむ55の方法』 椎野 欣治


今すぐ転職でチャンスをつかむ55の方法―業界選び、仕事選びが楽しくなる本 (成美文庫)今すぐ転職でチャンスをつかむ55の方法―業界選び、仕事選びが楽しくなる本 (成美文庫)
(2000/12)
椎野 欣治

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 成美文庫というのは実用的な文庫を出していて、だいたいは三笠知的生きかた文庫とかPHP文庫の近くにならんでいる。書評も書くまでもない読み捨てるような文庫にも思えるが、なぜか律儀な私は読んだ本のすべても書評にする。なぜなんだろう(笑)。

 転職の本と思ってブックオフで百円で気軽に買ったが、商業系のコンサルタントの消費分析のような本だった。なにが売れるのか、どうすれば売れるのか、消費はどう変わってきているのかという分析がおもで、転職の本というにはムリがある。そういうなにが売れるのかという本は読んでいておもしろいことはおもしろいのだが、私は転職の本を期待していたのであるが。

 著者は消費のコンサルタントで、アイデアや発想を羅列するのだが、なにをいおうとしているのかといった文章的なつながり、流れといったものを全体的に把握していないように感じられた。文章や項目が細切れで、文章も流れていなくて突発的で、アイデアマンには必要な素質なのだろうが、流れとしての文章や書物としてはあまり適していないように感じられた。木を見て森を見られないといった感じだ。全体の構想力がないのである。まあ、私の読書の読解力もあやしいもので、個別の感銘箇所によく出会ったとしても全体としてなにをいおうとしているのかよくつかめないことがある。人のことはいえない。同類かもしれないな。

 消費とか業種とかいうのはかなり変化してきたと思う。作ればモノが売れた時代は終わって、気分や気持ちで買われる時代になった。若者には消費の減退がめだつ。生産者より消費者のほうが買い物のプロになってしまって、消費者の発想でサービスをおこなわないと成功しない。だいいち、もう生産者に踊らされるのはまっぴらだ。けっきょく、人のつくったもの、サービスといったものに厭世的・倦厭的になってしまってきていると思う。サービス化社会というのはそういう人に手の上でもてあそばれることであり、ノッてしまうことであり、サービスする側としては人にどこまでも媚びたり、おだてあげなければならない。もううんざりだと人は田舎や自給自足にもどっていき、長期的に文明のピークは終わっていってしまうのかもしれない。サービスは人を選ぶ、農漁業や製造業のようにガンコ一徹にもなれない。サービス社会は離反者を増やすように思える。

 転職のいく人かの事例が紹介されていたのだが、あまり参考にならなったか。仕事や会社の長所というのはべつの一面から見ると欠点となる。そういう例として会社や仕事の見え方を引用する。ものごとの長所しか見えない人には要注意。長所にはかならずほかの面からの欠点がはりついていることをしっかり覚えておくべきなのだろう。よいことは悪いことの裏返しで、一面を強調する言葉や主張には裏面の欠点もしっかりと見抜く必要があるのだろう。

好きな仕事――最初から収入はない
仲良し仲間――自分勝手にやれない
高収入――超多忙で、ひまがない
人気企業(有名)――すたることもある
伝統のある会社――ほとんどの場合は地味
大企業――大組織にしばられる
安定した会社――社長以下の重役が年寄りで、若い社員の主張が通りにくい
儲かっている会社――とにかくお金のことばかり
新しい会社――なんでもやらされる
おしゃれな会社――方針が気分で変わる



転職のいい本はないかな
僕はこうやって11回転職に成功した会社は2年で辞めていい (幻冬舎新書 (や-3-1))自分に適した仕事がないと思ったら読む本―落ちこぼれの就職・転職術 (幻冬舎新書 ふ 1-1)人生を変える「リベンジ転職」マニュアル (講談社+アルファ文庫 C 79-2)自分にあった仕事が見つかる本―天職バイブル (PHP文庫 か 59-1) (PHP文庫 か 59-1)

10 22
2008

書評 ビジネス書

『超「高速」仕事術』 西村 克己


超「高速」仕事術―「先手を打つ」「核心をつく」「頭がいい」87の習慣 (成美文庫)
西村 克己

超「高速」仕事術―「先手を打つ」「核心をつく」「頭がいい」87の習慣 (成美文庫)


 仕事を漫然とやってきた私は、なにか改善したい点があったとしても自分でなかなか改善策を思い浮かべられなかった。仕事術のような本も手を出したことがない。優秀さとはなにか、仕事ができるとはなにかという立脚点からなんとか読むことができるようだ。自分がのびないと気づいたのなら、人の手をおおいに借りるべきである。

 著者は優秀なコンサルタントだと思う。こういう仕事を工夫する考え方をいくつも書けるのはさすがだと思う。著者は入社した製造業で生産管理の問題から生産管理のシステムをたちあげていった。私などにはとてもできないなと思う。またコンサルタントいう仕事は、会社の内部の人間のほうが自分たちの仕事のことは自分たちがいちばん知っていると思うはずなのに、その会社の問題点や改善的を提示してゆく。そうとうの知識やノウハウがないとできたものではないと思う。

 この本はおもに仕事を早くする方法が書かれていると思うのだが、仕事ができるようになる方法も書かれているのだと思う。感銘した部分を羅列していこう。

 朝は頭がいちばんすっきりしているそうだ。睡眠によって頭の中が整理されて、ものを考えるには最適である。反対に夜は頭も体も疲れているので思考は悲観的になって落ち込んだり、「NO」を導きやすいということだ。寝てしまって整理されたすっきりした朝の頭をつかおうということである。

 仕事を早くするにはいまできることを保留せず、先に済ませるようにするだけでスピードの達人になるという。メールもすぐにレスポンスするようになると、客にも喜ばれ、仕事が速いと評価されるそうだ。どうしたら仕事の効率をあげられるかをつねに考え、創意工夫を重ねる。

 本を読んだり書いたりするときは目次をじっくりと熟読したり考えたりすることで、全体像や書きたいことが明確化されるという。これはなるほどと思う。章立てをしっかりと意識せずに読んでいると文章の海におぼれてしまったり、海底をはうだけで全体や言いたいことが見えなくなってしまう。目次から内容を推測し、全体像と意図を上のほうから把握することは大切であると思う。

 また情報も捨てることから整理整頓がはじまる。著者は本を読んでも十冊のうち八~九冊は捨てるそうだ。整理されないと思考も煩雑になるし、ひらめきや発想も生まれてこない。朝の頭と同じことで、情報も頭も整理されていないと、効率のよい頭の使い方ができない。本を一冊も捨てられない私は、ずいぶんと頭が混雑していることだろう。読み返さないし、覚えてもいないのに捨てられないのである。整理の優先順位を理解できないと仕事の効率もあがらない。

 悪い情報は放置しているとますます悪くなる一方だから、はやく連絡するのが定石である。でも悪い情報は叱られたりするから隠すことになり、連絡をほめるのも大事である。いい情報をあとからつたえると、気分のいい状態がつづくことになる。

 義務感や苦手意識をもってしまうと、知識やスキルはなかなか身につかない。苦手意識は「ほかの人にできて自分ができないわけがない」とと言い聞かせて気持ち的に乗り切る。できないと理由を探すのではなくて、「できる理由」を探すことで、新しい分野にチャレンジしたり知識を深めることができる。ほんとうに「できる理由」を探すことは大切だと思う。できない理由ばかり探せば成長はそこでとまってしまうし、自分の可能性もそこまでだ。自分の限界に壁をはやばやと設けてしまうのである。

 他人にほめてもらうために仕事をしていると、「こんなにがんばっているのに」とかのグチばかりになる。自分のために、自分の成長のために仕事をしていると思うようになると、利害関係や損得勘定は気にならなくなる。他人との比較や横並び、損得を考え出すと、たしかに仕事はさっさと壁にぶちあたるだろう。自分のためにと考えることで、仕事のブレーキも限界もなくなってしまうのだろう。

 仕事術というのは頭の整理術にも通底しているし、それはとりもなおさず人生の生き方や処世術にも通底しているものなのだと思う。仕事を整理することによって頭も人生も俯瞰的に見られたり、整理できたりする。仕事の方法論は人生論でもあり、人生の操作法でもあり、認識の方法論であるのだろう。仕事はとりわけ行動や人とのかかわりでの見識をもたらすものである。


思考を「見える化」する技術 論理力1分間トレーニング ロジカルに考え、伝える技術 (その1分があなたを変える!)
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10 25
2008

書評 ビジネス書

『望み通りの仕事をつかむ人の共通点』 蛭田 敬子


人材紹介のプロが教える 望み通りの仕事をつかむ人の共通点
蛭田 敬子

人材紹介のプロが教える 望み通りの仕事をつかむ人の共通点


 どちらかというとポジティヴな本というよりか、ネガティヴ・リストから成功例や目標はどのようなものかとくり抜く本である。7章のうち、ダメな例が5章とりあげられている。ダメな例にあてはまる人は、耳が痛いというか、頭が痛くなる、しまいに気分さえ悪くなってしまうかもしれない。

 人材派遣、人材紹介企業の取締役である著者が見聞きした具体的な事例が書かれていて、リアルで、なまなしい。資格があるのに採用されない人、同じ仕事でも価値が下がった人、高学歴でも仕事に困る人、大企業でも細分化された仕事で市場価値のない人など、市場で生き残っていけない人たちの具体例が山ほどとりあげられている。この本はそのような失敗例からどのように市場で生き残っていけばいいのかをくり抜く本であるのだろう。陥りやすい失敗例をあらわしているのである。

 文章は一見やわらかく、悪意をもった文章にはとても見えないが、人材紹介の人のまなざしはとても冷淡で薄情な感じがしてしまう。求職者をダメだダメだと一刀両断してゆくのである。それは依頼してきた企業に能力に叶った人材を紹介しなければならないわけだから、とうぜんまなざしは厳しくなるものである。人材紹介者はいつの間にか市場の厳しさと同一化してゆくのである。「商品」を不良品や粗悪品としてぽんぽん捨ててゆく姿勢が身についてしまう。そういう作業に慣れてしまって、切られた人の痛みも苦しみもわからなくなってしまうのだろう。もちろんそれが企業や市場というものである。

 「過労死は自己責任」と発言した人材派遣会社社長の奥谷禮子と一脈通じるものを感じる。労働市場の厳しさ、商品としての人材というまなざしを身につけると、労働者側から見ると、鬼畜のように思えてしまう。それが労働市場というものであるが。

 この本でのべられている通り、労働市場というものは厳しいものである。優秀さや成功の事例はどんどん陳腐化されてゆくし、変化してゆくものであり、安住できるものではない。ショック療法が必要なのだろう。労働市場でダメな例を見つけて、市場で価値のある生き方に転換しなければならない。そういった失敗にすばやく気づき、はやくに転換するためにはこの本は役に立つのだろう。

 「自分を勘違いしている人の共通点」「仕事が見つからない人の共通点」「仕事が長続きしない人の共通点」「正社員になれない人の共通点」「会社が辞めさせたい人の共通点」といった5項目において、転職に叶わない人たちの失敗例があげられてゆく。具体例はまるで自分と同じような人たちをそこに見出すことができるかもしれない。私なんて人はだれでも優秀になれないからそういう状態に膠着してしまうと思うのだが、そこからどうやって抜け出す力を与えくれるのかが、こういう本の良書・悪書の判断基準になるのだろう。

 労働市場というものは厳しいものである。文句や不満をいったってだれも助けてくれない。自分で高めたり、強くなってゆくしかない。それはどうしようもないほどの事実であり、圧倒的な現実である。この本の失敗例や自分にあてはまる事例をしっかり見つめながら、自分を高めてゆくしないのだろう。いまの経済や労働状況は圧倒的に悪くなっているし、右肩下がりである。それを理由にして努力しなければもっと悪くなる一方である。どこかで外的要因を切り離して、自己の努力要因を強める行動も必要なのだと思う。いい時代に成功する人はあたりまえのようにたくさんいるが、悪い時代にも成功する人もたくさんいるのである。

 この本から要点だけを抜き出そう。だれもがしたい仕事は代わりの人がいくらでも見つかるから収入は低い。収入をとるのか、したい仕事をとるのか。新卒とか職務経験のない人に企業は投資する、企業の損害をとりかえすようなつもりで働くことが肝要。仕事をやらされていると思ったら伸びない、自分のためにしないと仕事ができるようにならない。

 人材ビジネスでは人生観が変わる、高学歴、職務経験豊富、難資格者でも仕事に困る人をたくさん見るからだ。女性のほうが仕事を見つけやすい、給料が安いからである。ある程度の年齢まで経営サイドにいけない人には居場所はない。日本人は会社が一生面倒をみてくれる安心している、そんな甘い考え方をしているのは日本人だけだ、いま仕事がなくなったらどう生きるか考えなければならない。

 人は生きてきた過去をいつも評価される。企業に対して自分がどのように給料以上の利益を提供できるかを考える。職場の人間関係で悩む人は「相手が~だ」と相手にふりまわされる、求めるのをやめることである。大手企業で一部の仕事しかせず高収入をもらっているとスキルがない人になってしまう。年齢に対する企業の拒否反応が強いのは、注意しにくい、気を使う、口ばかり、対応力がないなどである。自分の損得ばかり考え、人の利益や信用を考えられない人はだれも雇ってくれなくなる。

 社員がやることがないといっている会社はつぶれる、処理方法、経費削減などやることはいくらでもある。人は常に前任者など自分の知らないだれかと比較されている。与えられた仕事だけをこなす人は多く、自分はできると思っているが、期待値以上の仕事をして人に感動を与えている人もいるものである。仕事のできる人ははじめての出来事に対して新しい体験のチャンスと考え、できない人はやったことがないと逃げる。

 厳しい本であるが、マイナスや失敗の例に陥らないための自覚が覚えられるし、そこから成功例が導き出されてくる。私自身はずいぶんと失敗して、まわり道して、目標もてんで定まってこなかった反省をこの本からひどく味わわされたのだが、もう手遅れの年齢だと思ってしまうのだが、それでも生きてゆかざるを得ないのである。がんばろうというしかない。


社員を働かせてはいけない (ベスト新書 175) ヘッドハンティング・バイブル 人材紹介業完全手引き―小資本・低リスク・未経験者でも開業できる 人材コンサルタントに騙されるな! (PHP新書 472) 売れる人材―エグゼクティブ・サーチの現場から
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10 27
2008

書評 ビジネス書

『会社は2年で辞めていい』 山崎 元


会社は2年で辞めていい (幻冬舎新書 (や-3-1))
山崎 元

会社は2年で辞めていい (幻冬舎新書 (や-3-1))


 転職の人生に自信をつけてもらおうと読んでみたが、12回の転職を経験した著者はあまりにもスーパー・エリートすぎて共感がなかなか得られない本であった。東大を出て金融大手をわたり歩く著者の考えを、私のようなフリーター、投げやり、逃げ、反抗のアバウト人生で歩いてきた者が共感できるわけがない。一般論の部分になってようやく共感できる部分も出てきたが、ときすでに遅しといった感じだ。私はダメダメ転職人生でも自信をもって生きてこれたといった武勇伝のほうを楽しんで読みたかったのかもしれない。

 私の興味としてはこの十年、二十年で企業の転職にたいする考え方はどう変わってきたのかということではないかと思う。企業はこの二十年の労働市場の変化をどう捉えているのだろうか。フリーターの増加、派遣労働の規制緩和、終身雇用の崩壊、能力給の導入、名ばかり管理職や名ばかり正社員などによる長時間労働の酷使、大卒社員の離職率三割、右肩下がりの時代に、企業は転職や人材をどう捉えるように変わってきたのだろうか。そのへんを捉えるには、この本はあまりにも個人履歴的な本であり、あまり一般的な労働市場の視野に立った本ではないのだろう。「労働経済白書」のようなものを読むべきなのだろうが、この本はあまりにもカタくて、内容を読みとるのはかんたんではない。

 この本の要はもちろんキャリアや市場価値を高めるための転職を奨めており、3年といわず、2年でもいい、時間をむだにするくらいなら早くに行動したほうがいいという本である。私はキャリアを高める、市場価値を上げるとはどういうことなのかとまったくピンとこない経歴や企業を体験してきて、それすらもわからない(泣)。ウリや戦略がなんなのかまったくわからない。転職の理由もいやだ、つまらない、やってられっかという逃げの姿勢が多かった気がする。はじめから戦略のあるスーパー・エリートとは立つ位置がまったく違うので、この本はとうぜんあまり参考にならない。エリート的なポジティヴ労働価値観ってふつうの人に役に立つのかと思ってしまう。

 著者は、どんな会社でも人生を丸ごと託して任せられるような相手ではない、会社は社員の一生に責任をもつ存在ではないし、個々の社員の可能性にすべて応えられるものでないから、転職することに引け目を感じる必要はないといっている。キャリア優先の価値観ではそうなるのである。自分の人材価値が落ちるようならさっさと会社に見切りをつけなければならない、アメリカのように好況時でもリストラされることがあるのだ、といった考えのようである。このようなアメリカナイズされたキャリア優先の価値観で、旧態とした終身雇用的な考えの残る日本企業を現時点でぽんぽんと移ってゆくことができるのだろうか。キャリア至上主義の考え方でいまの日本はもう渡れるのだろうか。日本企業って人材にかんしてそこまでドライになっているのだろうか。ウェットな終身雇用、忠誠心的な心情がどろどろ残っていそうな気がするのだが。

 12回転職した著者は「7勝4敗1引き分け」だといっている。負けは仕事のレベルにも社風にも失望したケースが一つ、キャリア上意味がなかったケースが二つ、破綻した会社(山一証券)がひとつだ。失敗を怖れていては可能性が制約されるし、失敗すればやり直せばいいのだといっている。転職の多さを嫌ってきた日本企業はこういう転職観を受容するようになっているのだろうか。あるいは企業自身がそのように望むようになっているのだろうか。

 転職とは「単なる取引先の変更だ」と著者は言い切る。転職の面接に聞かれる退職理由を、商談相手に、事実と気づかいのバランスをとりながら、破綻のない理由を説明するプレゼンテーションの能力テストなのであるといっている。なるほど会社との関係をこういうふうに商談や取引先と考えれば、全人格的なかかわりの容認/否認という関係で苦しまずにあっさりと狭い関係に限定できるものである。日本企業は全人格的なかかわりを要求してきたから、日本人は苦しんできたのである。こういう考え方は身につけたいものである。

 企業は人材や転職にたいする考え方をこの二十年で変えたのだろうか、あるいは変わらなかったのだろうか。そのへんをもうすこしつっこんで知りたいと思う。


僕はこうやって11回転職に成功した 転職哲学―気分良くはたらくための考え方 仕事のタブー300連発! (幻冬舎文庫 や 16-1) 新しい株式投資論―「合理的へそ曲がり」のすすめ (PHP新書 488) 自分に適した仕事がないと思ったら読む本―落ちこぼれの就職・転職術 (幻冬舎新書 ふ 1-1)
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11 02
2008

書評 ビジネス書

『巧みな提案ができる人 できない人』 中島 孝志


巧みな提案ができる人 できない人 (知的生きかた文庫)
中島 孝志

巧みな提案ができる人 できない人 (知的生きかた文庫)


 なかなかおもしろかったし、役に立つ本ではないかと思う。人にいわれたとおりの仕事、決まった仕事、進歩のない仕事から抜け出すための改善や効率のいいやり方といったものがいろいろ教えられている。そのような方法を知らないといつまでたっても仕事の向上や進歩はみこめないし、仕事のできる人から置いていかれる。

 仕事の改善や提案を沸き立たせるには質問や疑問が大事である。この仕事でいいのか、違う仕事をすべきではないのか。だれがしているのか、なぜその人なのか、ほかの人でもいいのではないか。なぜその仕事が必要なのか。どうしてそこでするのか、ほかの場所のほうがいいのではないか、どうしてこの時間なのか、ほかの時間のほうがいいのではないか。どうしてこの方法なのか、ほかの方法はないのか。このような疑問や質問をもつことにより、仕事の改善や提案はおこなわれて、効率アップや改善がはじまるのである。この疑問がなければ、仕事はいつまでたっても同じままであり、業績も売り上げは増えない。

 すべてのビジネスは「問題解決業」だという。レストランは食べる問題を解決する仕事、ホテルは泊まる場所の問題という仕事、自動車は移動の自由を解決する仕事だといえる。ビジネスというのはかつてはなくて、問題があったものから生まれるものである。これはおかしい、どうにかならないか、といった問題解決から新たなビジネスは生まれる。だから、困ったこと、不都合なことに気づいたときこそ、チャンスなのである。

 そしてそういうイノベーションは余裕のある企業から生まれない。使い捨てカメラはカメラ・メーカーから生まれず、宅配便が郵便局から生まれず、引っ越しビジネスが大手運送会社から生まれず、回転寿司が寿司屋から生まれず、アマゾンが大手書店から生まれなかったというわけだ。たとえば使い捨てカメラは高級品や耐久消費財と考えているカメラ・メーカーからは生まれず、使い捨てに慣れているフィルム・メーカーから生まれるのである。

 「発見とはみんなと同じものを見ながら、違うことを考えることだ」。問題の発見、着眼が重要なのである。「あっ、本当の問題はここにあった」と気づくことが大事なのである。

 人間の脳は一日六万個の想念を思い浮かべ、そのうち95%がきのうと同じことを考えているそうだ。固定観念や既成概念を壊すのがいかに難しいかわかるというものだ。根本的な疑問や質問がいかに大事かということである。儲かっている業態、新しい企業というのは、あるひとりのそういう発想や着眼から生まれたものなのである。

 ダメな営業マンは商品をただ万遍なくセールスしようとする。「会社にいわれたからセールスしているだけです」というレベルである。売れる商品からどんどん売らなければならない。そしてもっとも必要としている顧客をだれか知らなければならない。たとえば調理器具のセールスマンはむやみやたら商圏内を歩き回るが、もっとも調理器具を必要とする新規開店の店を知ればもっとも売れる。売れる相手をしっかりとつかむことがムダな行為を防ぐのである。メーカーの最大の顧客は消費者と思っているが、問屋や小売店こそが顧客と気づいてから売れるようになる。

 「あれ?」「なぜ?」「どうして?」と不思議に思ったときこそが、提案力を発揮するベスト・タイミングなのである。そこから改善や効率アップ、業績向上がみこめるのである。

 この本はなかなか参考になったな。私は仕事にかんして進歩も向上心もなく、ただ決まりきった仕事を漫然と過ごしてきたと思う。改善や向上をおこなおうとしても、ほとんどアイデアが思い浮かばなかった。そういう日々の疑問や不思議なこと、質問が大事であるとよくわかった。読書にかんしては疑問を推進力にして数多くの読書をそういう方法でおこなってきたのだが、仕事や業務に関してはそういう頭をつかうことはなかった。なるほど参考になった。ただ改善の方法を思いつくこと、解決能力、実践能力はかなり欠けていると思う。そういう解決策をみつける能力が必要だと思うのである。


大人の仕事術 「問題解決」ができる人できない人―どんな状況にも使える仕事の技術! (知的生きかた文庫) 巧みな質問ができる人できない人―問題の「急所」をズバリ突く技術! (知的生きかた文庫) 「A4一枚」仕事術 解決志向(ソリューションフォーカス)の実践マネジメント
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11 06
2008

書評 ビジネス書

『「仕事ができる人」のビジネス心得帖』 堀場 雅夫


「仕事ができる人」のビジネス心得帖―「経営者の頭」で考えるビジネスマンとなれ! (知的生きかた文庫)
堀場 雅夫

「仕事ができる人」のビジネス心得帖―「経営者の頭」で考えるビジネスマンとなれ! (知的生きかた文庫)


 このところ仕事ができるとはどういうことか、優秀さとはどういうことなのかというシリーズで、ブックオフの100円本を読んでみた。この本はベンチャー企業向けに書かれた本であり、あるいはサラリーマン向けには経営者の頭と発想で自分の仕事が考えられる人になるようにはどうしたらいいかといった本であり、私的にはあまりおもしろい本ではなかった。

 私は本を読むときはかならず赤線を引き、感銘したページには隅を折るドッグ・イヤーをおこなっている。自分にとって感銘した部分は記憶しておきたいと思うし、残しておきたいと思う。書評を書くときにも参考にする。そういう文章を抜書きすることにする。

 成熟市場というのはもうこれから先はないと思うものだが、だからこそまったく新しい違った発想が入り込む余地があるというのである。なるほどである。電子取引は生産者と消費者を直接結びつけ、これから急速に発展する可能性がある。農家はふつうの流通ルートを通すと卸値が小売価格の四分の一にしかならないが、消費者に直接売ると粗利益率は四倍になる。中間搾取がいかに激しかったかということだ。

 堀場製作所では「自分のジャンルで世界一になってくれ」というそうである。世界一になる目標をもってこそ一流の会社になれるからだそうだ。日本では失敗は許されないが、アメリカのベンチャーのある人は「なんども失敗して相当経験をつんだから、こんどこそは成功するはずです」と自信満々にいうそうである。

 偏差値人間は新しいことにチャレンジしないように育てられる。平均点の高い人は発想がない。すぐに金太郎アメになってくれるから扱いやすいそうだ。たしかに学歴でいい点をとった人が儲けるとか、新しいビジネスを考えるといったことを志向するには思えないものである。

 アウトソーシング(外注化)では仕事の内容や価値を知らないで丸投げするのは危険である。知識がないと高い金を不当にとられているのか、サービスしてもらっているのかもわからなくなり、信頼関係が築けない。自分で価値判断する知識は必要なのである。

 まあ、この本は私にとって仕事ができるとはどういうことなのかといった疑問の参考にはならなかった。経営者なら人を動かすとか人を評価するということはどういうことなのかもっと生々しいことも聞きたかった気もするのだが、そういう点でも満足はいかなかった。


人の話なんか聞くな! 出る杭になれ!―「いい人」やめれば仕事ができる (祥伝社黄金文庫) イヤならやめろ!―社員と会社の新しい関係 (日経ビジネス人文庫)
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11 18
2008

書評 ビジネス書

『採用の超プロが教える仕事の選び方 人生の選び方』 安田 佳生


採用の超プロが教える仕事の選び方 人生の選び方
安田 佳生

採用の超プロが教える仕事の選び方 人生の選び方


 なかなか逆説的な考えやこれまでにない捉え方を披露してくれるのだが、いまいち目からうろこの衝撃的なレベルには達しない。おしいというか、就職や転職について語っているのだから高尚な人生哲学を期待してもムリというのだろう。

 例によって感銘した部分を抜書きしてみよう。

 自分がいままでどんな仕事をしてきたかというキャリアはその人の価値を判断する材料にならないそうだ。どれほど突出した成果をあげたかが問題なのである。求人市場が求めているのは、過去の経験や地位ではなく、入社後にどんな利益をもらたしてくれるのかという能力なのである。過去の実績を未来と新しい会社に結びつけなければならないということだ。

 大人たちが才能があるといいつづけてあげれば、子どもたちは自分を信じるようになる。まだ実績をあげていない自分に対して、根拠のない自信をもってやれるのは自分だけだ。根拠がなくても自分を信じてやることが大切なのである。人が本当の能力の発揮できない90%の理由は、自分を信じていないことにある。プロ野球選手になれないと思った人はなれるわけがない。著者はさきのページで過大評価は不幸だと矛盾したことをいっていたが、根拠のない自分があるかないかで人生行路は別れてゆくのだろう。

 自分をいつまでも信じてやることは、自分の勤めや責務と考えるべきなのだろう。死にそうになったとき、人は必ず自分を助けようとするように、命を助けるくらいに自分を信じることは大切な自分に対する生命線だと捉えるべきである。

 著者はできないことや失敗した人の多い人こそ成功するといっている。失敗に気づくからこそ成長するというのである。失敗したことのない人は失敗したことに気づかない人間であり、成長することのできない人間なのである。できないことや失敗が多くある人間はそれだけ失敗に気づいているということになる。だから改善や修正して成長する機会が生まれるのである。逆説的であり、改善ができないのならただの失敗した人で終わるとツッコミを入れたくなるのだが、この後のバネや成長意欲が重要になってくるのだろう。

 話し好きは一般に営業や接客業に向いているといわれるが、おしゃべりの人は人の話を聞くことに向いていなことが多い。接客業に向いている人は相手に喜んでもらうことに喜びを感じられる人なのであり、営業マンには話し好きより、人の話をじっくりと聞ける、臆病なまでに相手の気持ちが読めてしまうという人が向いているという。なるほどである。人の要望を聞ける人がすぐれたサービスマンなのであって、自分の話や楽しみを押しつける人ではない。

 ふつう人は会社から給料をもらっていると思っているが、そうではなくて会社にお金を払っているという。社員が顧客から得た報酬を会社がすくいあげて社長が社員に分配しているというわけである。報酬は社長や会社からもらっているのではなくて、顧客からもらっている。会社から給料をもらうという考えは、会社を実体視する弊害や、社長を偉い人と見なす上下観を生み出して、客のためではなくて会社や社長のために働くという転倒した考えが生み出される元になるものだろう。会社は幽霊のように存在しないものであり、機能や個人によって運営されている「約束事」、「業務の流れ」と捉える必要がある。

 日本人は会社がつぶれることを恐れて安定企業や大企業に入りたくなるのだが、著者は「つぶれたらどうして困るのか」の先を考えろという。会社がつぶれて困るのは自分に転職する能力やスキルがないと感じるからであり、つぶれたら転職すればすむだけのことである。どうして自立心がなく、技能や自信がなく、会社にここまで依存してしまうのだろう。会社がつぶれるリスクの心配より、そういう心配は自分のスキルや能力にふり向けたほうがよいというものである。

 つぶれたら死んでしまうというのなら、どうして死んだら困るかそこまで考えろという。なんのために働くのか。食うため、生きるためとなる。死なないためという理由もある。死なないためというのは生きる目的ではない。何のために死なないかを考えなければならないという。何のために死にたくないかと考えると、なにかをやるためだということに気づく。これが人生の目標だというのである。
 
 アメリカの若者は資本主義というのは雇う側と雇われる側がはっきりしていて、雇う側にならないとおいしい果実をつかむことができないと考えるそうだ。まあ、たしかに人を働かせる立場にならないとラクになれないとはいえる。そういう面ではラクであるが、責任や責務もかなり厳しいものがある。どっちもどっちである。日本人は会社依存で、仕事や業務をつくるという発想をなかなかもてないものである。資本主義の中でどこをめざすのか、しっかりと考える必要があるようである。

 以上のようにこの本は論理的な考えをつきつめて新しい発想や捉え方を与えてくれる本なのであるが、それ以上の感銘を私はうけなかった。転職や仕事について語っているのだから、それ以上のことを期待すべきではないからかもしれない。


採用の超プロが教えるできる人できない人 採用の超プロが教える伸ばす社長つぶす社長 下を向いて生きよう。 採用の超プロが教える伸ばす社長つぶす社長 (サンマーク文庫) 千円札は拾うな。
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世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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