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考えるための書評集

Categoryレイライン・死と再生 3/10

敵は全面的に悪だという「怪獣ごっこ」だね―『一神教の闇』 安田 喜憲

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一神教の闇―アニミズムの復権 (ちくま新書)安田 喜憲 筑摩書房 2006-11by G-Tools なんだかなあ。一神教が全面的な悪で、アニミズムが全面的な善のような単純な切りとり方には、あきれるほどの稚拙さを感じたな。自文化中心主義の欠点ももろに出ているし。まるで「スター・ウォーズ」や子どもの怪獣番組みたいな単純な善悪二元論の世界をこれでもかも見せつけられた気分。 一神教が「力と闘争の文明」で、アニミズムが「美と慈...

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神が身近にいたひと昔前の暮らし―『日本人の神さま』 戸井田 道三

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日本人の神さま (ちくま文庫)戸井田 道三 筑摩書房 1996-02by G-Tools 現代の多くの人はもう神なんて信じられなくなっているのではないかと思う。でも神が身近にいた生活や習慣はまったく滅び去ったわけでもなく、ところどころに顔を出す。そういった世界観の根を掘ってみたいと思ったら、この本のような身近な神を語った世界をのぞいてみるのもいいかもしれないね。 昭和のはじめ、著者はおばあさんから「お客さんがきたから肩...

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オリエントから見える日本の宗教・習俗―『輪廻の話』 井本 英一

輪廻の話―オリエント民俗誌井本 英一 法政大学出版局 1989-01by G-Tools 井本英一はペルシアやイラン、オリエントの宗教や民俗の比較から、日本の宗教民俗をうきぼりにした人である。中国からの比較では距離が近すぎて見えないものも、オリエントの比較から見えてくるものがたくさんある。どうも原始宗教は世界的に共通した世界観が共有されていたようだ。 この本は雑誌や新聞に発表されたものを集めたエッセイになっているが、...

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雌岡山・雄岡山はなぜ男と女にかたどられたのだろう

 神戸市西区には雄岡山(おっこうさん)と雌岡山(めっこうさん)という男と女がかたどられた山がある。そして雌岡山には性器信仰の神体がのこった裸石・姫石神社がある。 この山はどうして男と女がかたどられたのだろう。 大地に性を見て、大地の神が交合することによって太陽や収穫の豊穣がもたらされると考えたのが古代人である。この男女をかたどられた山にはどのような神話があるのだろう。 こちらが男の雄岡山。三角錐のきれ...

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性の解放はおこなわれたのか―『盆踊り』 下川 耿史

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盆踊り 乱交の民俗学下川 耿史 作品社 2011-08-19by G-Tools 盆踊りには乱交や性的アナーキーがつきものだったのか。歌垣といわれるものはお見合いパーティというなまやさしいものではなくて、ただの乱交パーティだったのか。そういうことを確認したくてこの本を読む。 わたしとしてはこの著者の姿勢は感服しなかった。むかしの性を民俗学者のように農耕儀礼や祖霊信仰で説明してしまうのではなくて、性それ自体の問題としてと...

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女はすべて神の嫁だった―『性の民俗誌』 池田 弥三郎

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性の民俗誌 (講談社学術文庫)池田 弥三郎 講談社 2003-08-08by G-Tools まえに読んだのをすっかり忘れてまた古本で買ってしまったが、問い方がこんかいは違ったので違う文脈であたらしい読み方ができたということでムダな買い方ではなかった。 こんかいの問いというのは性と神のかかわりなので、いぜん読んだむかしの性の放縦を知るという好奇心だけではなかったので、よりこの本の深みを感じられた。 この本は昭和三十二年に...

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神々と交合する神聖なる性―『世界の神々と性』 黒沼 健

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世界の神々と性 (1967年) (ノンフィクション・シリーズ)黒沼 健 山王書房 1967by G-Tools アマゾンで「性神」について検索するとそういう日本の土俗信仰について語った本は70年代、80年代を境にほとんどとぎれている。興味も関心もうすれ、神を媒介にした性といった世界観は途絶したかのようだ。 わたしが興味あるのは世界の創造・再生としての性の役割であり、性は神とどう結びつけられていたのかという世界観だ。放縦だった日...

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文学にあらわれた遊女像の変遷―『遊女の文化史』 佐伯 順子

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遊女の文化史―ハレの女たち (中公新書)佐伯 順子 中央公論社 1987-10by G-Tools 佐伯順子のこの本はどんなテーマの下で書かれたのだろう。哀れに思われる遊女やおとしめられてきた性の復権か。この本では「文学にあらわれた遊女像の変遷」がイシュタルから、和泉式部、小野小町、永井荷風や吉行淳之介までたどられている。 わたしが知りたいことはこの本の追究するテーマと違った。わたしは性と神のつながりを知りたかったので...

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性とは神への歓待や豊穣の祈りではなかったのか―『遊女と天皇』 大和 岩雄

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遊女と天皇(新装版)大和 岩雄 白水社 2012-01-18by G-Tools 大和岩雄はこの本が出される1993年より十年前の1983年に、レイラインを考察した『天照大神と前方後円墳の謎』という本を出している。 夏至や冬至の太陽の日出没の方角に寺社山岳が地理上で結ばれているのではないかというレイラインの分析である。そこで本書の考察の主題となる「一夜妻」や「神聖淫売」がとりあげられていて、わたしはもっとくわしい本を読もうとこ...

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死や死者がともにある人類学的思考―『大阪アースダイバー』 中沢 新一

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大阪アースダイバー中沢 新一 講談社 2012-10-11by G-Tools 「大阪アースダイバー」は週刊誌に連載していたころから期待していたのだけど、本になって読んでみて、大阪に住んでいながら知らない大阪のことをたくさん教えてもらった。 死者とともにある世界とか人類学的な思考とか、中沢新一でないとえがけない大阪の構造を切りとっているのでしょうね。ふつうのおカタい歴史書ではあじわえないたのしさを堪能させてもらった。 ...

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