フリーター雑誌の新創刊があいついでいる


フリーターズフリー vol.1 (1)フリーター論争2.0―フリーターズフリー対談集m9(エムキュー) (晋遊舎ムック)ロスジェネ 創刊号

 上に図示した雑誌のように、フリーターや格差社会、ロスジェネなどについて語ったオピニオン雑誌の創刊があいついでいる。

 フリーターやワーキングプア、格差社会について一般の人たちが語り、考え、意見を交換・共有しあう場所がいま求められているのだろう。大手メディアはとりあげたと思ったらブームが去ったようにいつの間にか消えてしまうが、当の若者たちにとってはいつまでも終わらない日常の話なのである。継続して考え、解決してゆかなければならない問題なのである。

 私はあまり雑誌は読まない。書籍のようにひとつのテーマで一直線に最後まで運んでくれる編集の仕方ではなくて、興味のないテーマも多くはさまれていて、その部分を読み捨ててしまうことになるので、雑誌はあまり好きではないのである。それで書籍ばかり読んでしまうことになるのだが、書籍というのは継続して語られる場や情報が共有される場がずっとプールされているわけではないので、オピニオンにたいしての情報欠落をきたしやすいと思う。継続して読みたい雑誌もいままでなかったのである。

 私はいちおう思想系のほうにも興味があったのだが、『現代思想』とか『ユリイカ』のような思想系の雑誌はレベルが高すぎて興味とレベルがついていけなかったし、『文藝春秋』とか『中央公論』のようなジイちゃん雑誌などまず読む気がしなかった。読みたい雑誌というとせいぜい『SPA!』くらいで、それもなんだか商業主義だしなぁ〜ということで、私はほぼオピニオン雑誌を読まず、ついでに新聞も読まず、興味のあるテーマの書籍ばかり読んできたわけである。私の興味あるテーマの雑誌が出ているということはまずなかったのである。というよりか、私の興味のあるテーマに編集された雑誌など永久に出ることがないと思うが。

 私は約20年前ほどになるが、ずっと労働について考えたいと思ってきた。私はあまり働かずに自分の好きなことをしたかったし、会社人間や滅私奉公のような人生なんて心底おぞましいと思ってきた。そのような会社主義を批判してひとり気を吐いていた評論家が佐高信だけであって、労働について考えられる時代ではなかったのである。

 このような労働のあり方というのは人生としてのよい生き方ではないと私はずっと悩んで、職を点々とするフリーター人生を歩んできたわけである。そしてそのころはまだバブルが崩壊したばかりで、今日のようにフリーターや派遣労働が際立って増加したわけではないし、まだバブル崩壊不安の中高年リストラに社会的非難が集まるような時代であった。予定調和のサラリーマン人生を再考するという機運はまったくなく、若者はエスカレーター式に自分たちもそのような人生を歩むだろうとぼんやり考えていたのである。「だめ連」のような働かない人たちも一時ブームになったりもしたが、労働について考えられることはなかったのである。

 それがいまはフリーターや派遣労働などの非正規雇用の増加により、書店の本棚にはフリーター本や格差社会論が所狭しと並ぶようになり、フリーター雑誌のようなオピニオン誌もぞくぞくと出るようになったのである。しっかりとよりよい労働と人生とはどんなものか、熟慮してもらいたいものである。フリーターや非正規の権利獲得や待遇上昇のような問題だけではなくて、よりよりい人生、社会としての労働をしっかりと考えてもらいたいものである。

 このような雑誌に出る人たちといえば、杉田俊介や赤木智弘、雨宮処凛とかになるのだろうか。フリーター経験の中から労働や非正規雇用、経済について考えてきた人たちである。これらの本は私は残念ながら未読であるが。

フリーターにとって「自由」とは何か若者を見殺しにする国生きさせろ! 難民化する若者たち

 フリーター雑誌はとうぜんのように格差是正や待遇改善の要求をつきつけるのだろうけど、昭和の時代のような終身雇用・滅私奉公のような人生が獲得される最終目標だのような恐ろしい路頭に迷わないでもらいたいと思う。フリーターも当初はそのような人生からの逃れられる希望の星として語られた時代もあったのである。そのイメージが強いから、フリーターはいまだに怠け者としてバッシングされるのである。構造的な弱者、被抑圧者としてのイメージをもたない人も多くいるわけである。過去の社畜にもどらない人生を目標にしてもらいたいものである。

 非正規・ワーキングプア問題はいったいどこらへんにいきつくのだろうか。けっきょくはなんの解決もできずに定着してしまうのかもしれない。産業界や経済界は国家とともに労働者を社会保障するような社会主義の時代からさっさと足を洗いたい要求ではちきれんばかりなのだろう。放り出された労働者はどうするのか。貧しいながらも、不安定ながらも、自力で生きてゆくしかないのである。

 労働者がぼろぼろに使い捨てにされる実感が職場にひしひしと感じられるから、小林多喜二の『蟹工船』はブームになって読まれるのである。昭和はじめのプロレタリア文学がリバイバル・ブームになるなんて、いかに若者をとりまく環境が大きく変貌したか、世の大人たちはしっかりと銘記しておくべきである。

 蟹工船・党生活者 (新潮文庫)蟹工船 (まんがで読破)

 でも私としては国家や企業が守ってくれる、社会保障を与えてくれるという時代、捉え方のほうが異常で、常識っ外れだと思うのだが。なんで労働者を企業や国家が死ぬまで面倒を見てくれるというのか。それはなんらかのメリットがあるからで、右肩上がりの長期的な高度成長の時代にはそのような長期的保証が企業奉仕に合致したからであって、今日のように定常型社会といわれる時代においてはそのような交換にはメリットがない。

 だからわれわれは守られないのが常識だという前提のもとでこの世を渡っていかなければならない時代の突端に立っているわけである。でも守られるというのも、またぎゃくに高度な奉仕や過重な労働を交換として捧げなければならなかったわけで、それもそれで犠牲の大きな選択であったわけであるが。だからわれわれはこの高い保証には高い犠牲が必要だという「交換のワナ」にも注意深い警戒が必要なわけである。

 労働というのはほんらい使い捨てや搾取がとうぜんのベースとある過酷な闘争関係のあるものである。それが高度成長の社会保障や終身雇用の時代にすっかり忘れられてしまったから、私たちは過重労働と企業中心の社会に生きることになってしまったのである。この過酷な使い捨て社会というのはほんらいの社会の関係に戻っただけだと捉えるべきなのである。その上から、労働のあり方や企業との関係は考えられるべきであって、私たちは社会保障の時代の能天気な時代のツケを支払わされているのだと思う。若者が自分の問題を考えることは、「お客さま」として生きられた昭和サラリーマンの時代より、よほど真剣に賢明に生きられる時代だと私は思うのである。

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