新入生にすすめる10冊の本、私ならこれを選ぶ
「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」で、「東大、京大、北大、広大の教師が新入生にオススメする100冊」という企画をやっていた。800近いはてなブックマークがついていたので、かなり評判のようですね。
ベスト10を順番にならべるとこうなる。










人文書好きな私から見ると、理工系の趣があって物足りない。人文系にしぼるともっと楽しめたかも。
『銃・病原菌・鉄』は未読なので、そんなにおもしろいのかと少々びっくり。サイードの『オリエンタリズム』は少々専門的なので、私は村井紀『南島イデオロギーの発生』か北川勝彦『帝国意識の解剖学』あたりをすすめる。『カラマーゾフ』は読んでないなあ。スティーヴン・ジェイ・グールドってそんなに読む価値があるのか。『夜と霧』のアウシュッピッツはどうもなあ。
以下ちょっと目についたものをとりあげる。11位のウォルフレン『人間を幸福にしない日本というシステム』。官僚批判と生産マシーン国家を批判した、たしかに私もおすすめしたい本なのだが、世間からすっかり忘れられていたと思っていた。14位に『ワイルド・スワン』。中国の文化大革命をとりあげていて、なんていう国家だと思わせる。33位に大森荘蔵『物と心』がランクインしていて、この人は評価されているのだなあ。私は仏教の哲学版だと思っているが。

物と心 大森荘蔵
ベンヤミン・コレクションが53位。再評価がいちじるしいですね。ベイトソンの『精神の生態学』が61位。読みそびれているなあ。69位の岩波新書のカー『歴史とは何か』は根強いですね。
ベンヤミン・コレクション〈1〉近代の意味



72位は私の大好きなフロムの『自由からの逃走』。人間心理の透徹した洞察というものである。86位にリップマン『世論』。ステレオタイプに流される世論を批判。100位にナショナリズムを分析したアンダーソン『想像の共同体』。



ちなみに私なら新入生にすすめる本はつぎのように選ぶ。といっても、書棚や記憶のひきだしから、おすすめ本を選び出すのは容易ではない。当時読んだときの記憶や印象を鮮明に覚えているわけではないからだ。私の記憶力がよければその感動量の大小で選ぶことができるのだろうが、読書時の鮮明さを覚えているわけなどないし、甲乙つけがたい本もたくさん記憶に眠っているし。まあ、かなりの程度手近に思い出した本のリストになる。
どんな本を選ぶべきかもむずかしいが、4年後に社会に出て働くことになるのだから、労働や企業、経済について先に学んでおくべきだと思う。
1位にはアラン・ド・ボトンの『もうひとつの愛を哲学する』を選ぶ。ステータスや名誉を求める心というものを見極めることは人生とってとても大切なことだと思う。人間を動かす原動力というものをしっかり知っておくべきだと思う。

2位には流動化してゆく雇用情勢・働きかた、企業というものを知っておくためにこの本をすすめます。風間直樹の『雇用融解』。若者の雇用はどんどん流動化・非正規化していっている。その現実を見極めることが大切だと思う。

3位にはリチャード・カールソンの『楽天主義セラピー』。私はほかの機会にもこの本をすすめまくっているのだが、「思考を捨てる」という方法が人生の危機や不安にどれだけ必要な知恵か、どんなにいってもいい足りないと思う。この知恵を身につけるかつけないかの違いによって人生の落ち込みや危険度もかなり変わってくるだろう。

4位にはヴェブレンの『有閑階級の理論』。ファッションや車やインテリアやショッピングに事欠かない現代社会では、「みせびらかし消費」について分析した本はとても重要なものだと思う。消費を反省する意味でぜひとも読んでおきたい一冊。

5位にはこんな本をあげれば教養の方を疑いがかけられるが(笑)、櫻井健古の『捨てて強くなる』という軽い自己啓発書をすすめたい。人間の比較や価値を相対化する視点を与えてくれる本で、その軽い外装とは別にかなり深い哲学をふくんでいると私は思う。愚かになったり、無価値に生きるススメが説かれていて、むかしの仏教者はそのような達観した生き方をしたのだが、現代人は比較や優越の欲にまみれた愚かな生き方をしている。勝利や優越や権力を笑うための本。
捨てて強くなる―ひらき直りの人生論 櫻井健古

6位には少々ハードボイルドで冷酷すぎるかもしれないが、ロバート・グリーンの『権力に翻弄されないための48の法則』をすすめる。人の社会というのは権力をもとめたり、奪い合ったり、権力のためにのしあがる争いという面が、平和な表面を一皮むけば必ずあるものである。冷酷で非情な現実の姿にしっかりと向き合うために。

7位には赤松啓介の『夜這いの民俗学・性愛論』をすすめる。こんにちは一夫一婦制とか終身愛といったひとりの人に操を捧げるという純愛の信条が一般的だが、これもひとつの信念や、あるいは市場関係に支えられているという相対的な目を養うために読んだほうがいいと思う。性というのもそんな大そうなものではない。目からうろこが落ちる本である。

8位にはイリイチの『脱学校の社会』をすすめる。学校で教えられるという経験がなにを殺してしまうのか、しっかりと見極めておくべきだろう。専門家の弊害や近代化された貧困と多くの問題意識をふくんでいると思う。
脱学校の社会 イリイチ (現代社会科学叢書)

9位には宮本常一の『生業の歴史』をあげる。学校では政治屋の歴史を勉強させられるわけだが、われわれの多くはふつうのサラリーマンとして働かなければならないわけで、そのわれわれにとっていちばん大切なことは職業や労働の歴史ではないかと思うのである。われわれの人生とは職業や労働である。どうしてこの歴史が教えられないのか。どうやってご先祖様や日本の庶民は働き、生きてきたのか。こんな重要な知識はないと思う。
生業の歴史 宮本常一(双書・日本民衆史)

10位には中川八洋の『正統の哲学 異端の思想』をあげる。少々過激であるかもしれないが、こんにち正義とされる「人権・平等・民主」という概念の危険性をとなえた本で、目からうろこの本でもある。ルソーの民主主義や社会主義が批判され、保守の正当性がとなえられていて、ひとつの相対的な視点の勉強になる。

まあ、試みに以上のような本をあげてみた。ほかによい本もいくつもあって、忘れられているだけかもしれないので、これは決定版ではありません。というか、すべての私の読んだ良著を思い出すのはムリ。まあ、思いつき次第ではこんなかんじということで。
コメント
なにがうれしくてあんな電波・・・
私が紹介した本は西洋の思想家を保守とリベラルの伝統に分けて概説していましたので、けっこう正統的に読めた覚えと、目からうろこの部分がありました。こういう保守の思想もしっかりと読んでおくべきなのかもしれません。
電波な人という意見は否定しませんけど。
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