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01 03
2008

人生論

男の生き方とは~NHK『こだわり人物伝』から


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 NHKで『知るを楽しむ・こだわり人物伝年始スペシャル 語り継がれる男の条件』という番組を見た。あまりにも破天荒でスケールの大きい人物ばかりが登場して、比較されるのは困るのだが、男としての生きざまをなにがしか考えさせられることがあったので、紹介しておこう。

 開高健はベトナム反戦運動をやっていたのだが、人々になにも伝わっていないことに気づき、のちにアマゾンやアフリカなどの秘境の釣りに熱中することになる。「危機」と「遊び」のつながりを見い出してゆくのである。ベトナム戦争で死の危機に直面して、危機の中に人間の最大の魅力を見い出したのだろうか。

 つぎはマイルス・デイビスだが、ジャズ界の「帝王」の名をほしいままにするのだが、エレキ・ギターやロックが流行るとそれらを貪欲にとり入れてゆき、変貌をとげていった。ある音楽というのは新しいムーヴメントや新しい世代が台頭してくると、つぎの世代にまったく受け入れられなくなり、忘れられてゆくものであるが、マイルス・デイビスはそれを拒否して、ジャズ界の帝王の座もかんたんに捨てて新世代の音楽を採り入れてゆくのである。

 つぎは夏目漱石だが、ここでは『それから』の物語が語られた。主人公の代助は実業家の父の財産で「高等遊民」をしており――いまでいうパラサイト・シングルあるいはニートであるが――事業家である父を軽蔑しているのだが、親友の妻である三千代を奪って結婚したため父から勘当されてしまう。仕事を探して代助はたいへん困ってしまう。

 この漱石の物語をみているといつも現代社会とそっくりの問題を語っていたのだといつも唸らされてしまうのだが、この漱石の時代も社会が上昇気流から下降気流に変わる時代であって、その中の若者の「社会でのロマンのなさ」や「上に上るハングリー精神のなさ」に悩まされている。社会が完成し、目的や目標がなくなったとき、人はどうやって生計を得るのか、あるいは男としてはなにをめざすべきなのかが煩悶されていたと思うのである。いまの時代もそうだろうが。

 さいごはチェ・ゲバラであるが、キューバでカストロの下で社会主義政権の革命を成就させて大臣の地位につくのだが、カストロは小国キューバの生きる道としてソ連の軍門に下る決断をするのだが、ゲバラはそれに納得せず、コンゴやボリビアの革命に身を投じてその生涯を終えるのである。

 漱石の代助以外はあまりにもスケールが大きい人物すぎて、比較する気力も萎えてしまうが、男というものはもともとはそういう冒険や破天荒をのぞむものではないかと思う。礼賛はしないが、サラリーマンのような毎日毎日同じ職場に通って……といった人生をのぞむものではないだろう。

 この人選は危機や変化の中にこそ男の生きる道はあるようなテーマが流れているようで、それはそれでまた危険なことでもある。破壊や危機こそが男の生きる道だといったら、それは戦争や冒険のみの人生を礼賛してしまうことになる。平凡で凡俗でもあるけれど会社勤めの中にも幸福や満足もあるのだというメッセージかないと、いまの世の中を生きてゆくことができないだろう。あまりにも有名人や偉人ばかり見せられると、われわれみたいな小粒な凡人は生きてゆくよすがをなくしてしまうだろう。

 われわれの時代というのは代助の苦悩程度のものである。そして人生の成功パターンがいい会社に入って年金がっぽりが人生の最高目標だとう福祉にぶら下がる人生が礼賛される情けない時代である。紹介された三人はいずれも約束された安住の地を投げ打って危機のなかに自ら身をおくことによって人生の充実を得ようとした。この人選の中にそういうメッセージがこめられているのではないだろうか。


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