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2007

労働論・フリーター・ニート論

安さの裏にひそむ現代の「女工哀史」



 私はほとんどの服をユニクロで買う。ジーンズでも3000円、シャツでも1000円で手に入る価格から離れられない。センスもいい。多くを人件費やコストの安い中国で製造しているからということだが、私はさいきん『大地の慟哭』という中国の出稼ぎ農民(民工とよばれる)の悲惨な労働状況のレポートを読んだ。つなげてみれば、現代の「女工哀史」によって、私たちは安い中国製の服や物を買っているという現実に思い当たる。

 1845年に出版されたエンゲルスの『イギリス労働者階級の状態』、そして1903年(明治36年)の『職工事情』、1925年(大正14年)の『女工哀史』などの本をまとめて読んでいるが、19世紀のイギリスや20世紀の日本でおこなわれた過酷な労働がこんにちの中国でもくりひろげられているのである。そして私たちはそのような過酷な労働のうえに安い商品を享受しているのである。

 明治・大正におこった凄惨な労働条件はこんにちでも決して終わっていない。まさに私たちの足元にころがっている。というか、私たちがもつ商品やブランドの向こうには現代の「女工哀史」が大きく広がっているのである。

 アメリカでもこのような労働が「スウェットショップ(搾取工場)」とよばれ、90年代中ごろから社会問題として認識されるようになった。たとえばこのような例がある。

スウェットショップからの問題提起」 宮坂純一からコピペ。

1)カリフォルニア州エルモンテ市の不法工場において奴隷状態で就労されている移民の衣服産業労働者、
2)非衛生的な労働条件で長時間労働させられている児童労働を責められた、エルサルバドルの現地工場から製品を輸入しているギャップ(Gap Inc.)(19)、
3)低賃金で長時間労働を強制させていると非難された、東南アジアにあるナイキ(1962年創立のスポーツシューズメーカー)の現地下請け工場、
4)低賃金、児童労働、除草剤の使用、等で非難された、スターバックスのグアテマラのコーヒー供給者、
5)パキスタンの子供たちが縫ったサッカーボールを販売していたアメリカの大手スポーツグッズ会社、
6)ホンジュラスの10 代初めの子供が低賃金で長時間労働を強制されて製造していた衣料品を、アメリカのテレビ界の人気女性キャスターKathie Lee Gifford が保証し、それを販売していたウォルマート(20)、
7)ハイチの工場で標準以下の労働条件のもとでつくられたディズニー・ブランドのグッズ。



 私たちが外国産の安い服や商品を買うということは、このような過酷で凄惨な労働条件を背負った後進国の人たちによって、その恩恵をこうむっているのである。つまりはかつての日本の女工たちが凄惨な労働を課せられた状況を、現代では私たちは後進国に背負わせて、安い価格の商品を手に入れているのである。いわば、明治のご先祖たちの姿を現代の後進国にわれわれは現出させているのである。

「95年に労働省が摘発した工場の悲惨さは、第三世界にまさるとも劣らぬものだった。たとえばロサンゼルス郊外の工場では、六十余名のタイ移民女性労働者が監禁され、1週7日、ときには1日20時間も働かされていた。時給はわずか70セント、脱走者には暴力とレイプが加えられたという。その製品は大手百貨店や通信販売を通じて、高級ブランドとして販売されていた。…同省によれば90年代にアメリカ国内で生産された高級衣料品の6割はスウェットショップがかかわったものだという」(「安さの陰にひそむ矛盾/古沢広祐ー『安ければそれでいいのか!?』(山下惣一・編著/コモンズ) 「PLAY FAIR プレイフェア」(オックスファム・インターナショナル・オリンピックキャンペーン)



Maquila Solidarity Network
カナダのトロントに本部を置くこの団体は、毎年コンテストを行い、年間最優秀スウェットショップ賞を有名ブランド企業に対して贈っている。今年1月、28カ国から2,000人あまりの人々が、「年間最優秀スウェットショップ」2002の名誉に値する企業にオンライン投票をした。今年の受賞者は、他を圧倒したウォルマートで、56%の票を集めた。この世界最大の小売業者は、世界中のスウェットショップで衣料品労働者を酷使し、北米に展開する販売店の従業員の権利をも侵害しているとして告発されている。その他にも次の様な罪を犯している。

・ウォルマート製品の縫製を行っているレソトにある20の工場の労働者は、1日14時間労働で月給は54ドルであるが、この金額では労働者の基本的なニーズの半分も満たすことができない。ウォルマートに製品を納めるある工場では、超過勤務が発覚しないようにするため、日曜出勤をタイムカードに記録しないように命令されているとの報告がある。
企業犯罪防止に全力で取り組む



 私たちは自国から悲惨な労働条件は追い払ったと認識しているかもしれない。私の職業経験からしてそんな話は露とも信じられないが、まあ世間並みに、あるいはマスコミがそういうようにそういうことにしておこう。しかし私たちが手に入れる安い商品や優良な企業の商品は、後進国の凄惨な労働状況のもとに生産されたものであったりするのである。人権無視の労働を、自国ではおこなっていないが、他国に背負わせて、私たちはその血と涙の商品を手にするのである。

 これが日本でマスコミの話題になることはほとんどない。考えてみたらTVニュースや新聞は広告やスポンサーによって成り立っており、企業や商業を非難するニュースなどとりあげる望みなんてありえない。絶望的である。アメリカのように社会運動が盛り上がるということも、企業や労働にたいして沈黙で従順な民に望むべくもない。

 後進国の労働者を酷使した企業のブランドを不買にするという抵抗もできるだろう。商品をその品質のみに目を向けるのではなく、労働から評価するという視点は大事だと思う。私たちはあまりにもそれらを切り離しすぎてきた。貨幣経済とはこのような人間としての痛みや苦しみ、境遇が切り捨てることができるからこそ、こんにちのような消費・労働社会がつくられたのである。しかし商品とはひとりの人間によってつくられたものであり、かれらはよい生活や楽しい人生を送りたいと思うのはあたりまえのことである。私たちはそれを奪ってまでして、安い商品を手に入れたいというのか。

 ただ安い商品を手に入れたいのはあたりまえのことである。しかしその商品の裏には搾取や酷使の労働が貼りついているかもしれない。経済の歴史とはこのような後進国の低賃金を利用することによってその差額によって安い価格で売ったり、高サービスを提供してきたという歴史・しくみがある。19世紀のイギリス、20世紀の日本、そしてこんにちの中国や東南アジアにそれはひきつがれてきた。安さを求める価格の欲望が、凄惨な労働条件に落とし込むのである。経営者が自己利益のためにおこなうというよりか、切り下げられた受注価格に対応するにはそうするしかない場合もあるのだろう。

 まだまだ考察をつづけるべきなのだが、長くなりすぎるので、今回はこのへんで終わりにしよう。あらためて考えるべき問題だし、もうすこし熟考を重ねたいと思う。

 私たちはある商品を買うときにその商品にこめられた労働者の状況というもの思い含めることも大切なのではないかと思う。商品がよくても、その労働者が酷使されたり、不幸であったりしたら、その商品をよいものだと見なすことができるだろうか。商品とは人間がつくったものであり、人生がある。労働や企業の過程もふくめた商品選択や消費をおこないたいものである。


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Comment

安物買い

この夏、とあるバッタやで、アロハシャツを二枚500円で買った。いったい、いくらが仕入原価だろうか。いずれにしても、中国製だ。
国際資本は、水が低きヘ流れるように、より安い労働力の国へと向かう。
ところで、資本主義の総本山アメリカでは、ほとんどの商品は、輸入にたよっている。つまり、生産工場は激減した。フツーの若者に待っているのは、ピザの配達人か、軍隊へ行くことぐらいだ。
今、アメリカでは軍隊が失業対策として、地方の若者に職場を提供している。頭のいい若者は、金融市場だ。
戦場へ行くか、賭場で稼ぐかだ。
いずれにしても、身と精神をすり減らし、得るものはワズカだ。

中国製のモノはどんどん身のまわりにあふれていますね。安いものは歓迎します。でもそこでの労働がかつての日本の女工哀史のようなものだったら。

考えさせられますね。経済や企業とはこのようなものなのですが。

アメリカにスウェップショップのような搾取工場があらわれているのは驚きですね。黒人や移民をこき使っている歴史はもともとあったのでしょうが、現代にもつづいていたのでしょうか、それともグローバリズムで新しくあらわれてきたのでしょうか。

アメリカの軍隊は労働者階級に属するような若者たちの雇用の受け口になってきましたね。でもそのような雇用の社会保障のためにアメリカが世界の各国の紛争に口や手を出さなければならない体質になっているとしたら、日本の土建国家の赤字の高速道路どころではすみませんね。どんなに先進で豊かになっても、貧困からは逃れられないのでしょうか。

ブログのほうはなかなかおもしろそうですね。お気に入りでたまに寄りたいと思います。

消費社会という地獄

お久しぶりです、うえしんさん。いい記事書いていますね。

実はわたし十代の頃、80年代おわりから90年代初頭ごろに、韓国のアジアスワニーという会社でこき使われていた十代半ばの女の子たちが解雇撤回を求めるために日本各地をまわりにきたときに、彼女たちと会ったことがあります。
それから、チキータバナナというブランド果物。この会社のフィリピンの労働者が農薬まみれになったり労働環境が悪いというので、消費者として不買運動に加わったこともあります。

ナオミ・クラインの「ブランドなんていなない!」という本にも、スターバックスやナイキのほかいろいろなブランド企業、ブランド商法の闇の側面が描かれ、それへの抵抗運動もカナダを中心に紹介されています。

100円ショップで売られている傘なども、中国あたりのスェットショップでなければ作れないでしょうね。
佐々木賢さんの「教育と格差社会」(青土社)とかNHKの番組を編集した「ワーキングプア」にも、中国の人件費の安さとか、それで日本の日常生活密着産業が成立できなくなっていることが記されています。

最近「希望は戦争?ーー丸山真男をひっぱたきたい! Returns」にSmile Slime名で書いたのですが、消費社会礼賛っていったい何だったのかと思ってしまいます。





リンク

今わたしも関わっている赤木智弘応援集団ブログの関連記事のリンク、貼らせて
ください。
http://ueshin.blog60.fc2.com/tb.php/868-ca3a91aa
よかったらこちらのほうにもうえしんさん、コメントしてやってください。

ワタリさん、こんにちは。

ユニクロや100円ショップなど身近なところに中国産や東南アジア産の安い商品が売られていて、かなりの恩恵をわれわれは受けているわけですが、ご先祖さまの「女工哀史」のような労働条件でかれらが働かされていると思ったら、喜んで買っていたらいいのかという気になります。

でも不買なんかしてもかれらの生活の糧が売れなくなるわけですし、消費者のホンネとしては安い値段でモノが買えるのはありがたいことです。ひどいといいながらも、一方ではその完成品を買わざるを得ない。難しい問題です。

消費社会にしてもムダで不必要なものをたくさん買わなければ、われわれ生産者としての生活が成り立たないのも事実ですね。矛盾の塊になります。

われわれは商品と労働、あるいは消費と生産をきっぱり分けすぎて、商品や消費から労働を見るという視点をあまりにも切り捨ててきたと思います。安くていいモノを変えるけど、これらをつくった人の労働や生活はどうなのかと、セットで考えるべきなのでしょうね。

会社を評価するモノサシとして売り上げや規模が大きいことが善とされてきましたが、あるいは商品のよさやブランドで評価されてきましたが、そこで生産する労働者の労働や生活はどうなのかというモノサシをセットで評価する必要があるのでしょうね。

それからマスコミも食品の賞味期限偽装のような問題より、スウェットショップのような搾取工場の問題をとりあげてほしいですね。なぜ商品と労働の関係が問題視されないのかと思いますが、スポンサーでなりたつマスコミにはかなり困難な話なのでしょうね。キャノンや松下の偽装請負問題を、自社製品の質と購買に結びつけてゆく世論や私たちの判断がのぞまれるところです。

なお赤木智弘応援ブログはこちらのほうですね。
http://d.hatena.ne.jp/t-akagi/

本が出たら書店で購買するかチェックしてみたいと思います。




こんばんわ。
記事読ませていただきました。

今更ながらコメントしても返信いただけないかもしれませんが、
あまりネット上でもこのような記事は数少ないものなので
コメントさせていただきました。

私もユニクロ等の価格の安さの裏には、
生産段階でのコストを下げるために工場から利益を搾取
しているのではないかと考えているのですが、
そこには明確な事実がなく、単なる推測にしか過ぎません。

会社概要の欄では第三者機関によって工場を評価させて
労働環境基準維持をしている、その他会社についての記事を
読んでも、SPAの利点やその品質の良さを評価するものばかり
で、実際のところは全く見えません。

もしそのような事実をお知りになった上でこのような記事を
書かれているのであれば、ぜひそれを教えていただきたい
です。


難しい質問をいただきましたね。

たしかにユニクロの低価格に工場搾取の黒い噂は聞こえてきません。

なお、この記事ではユニクロを名指しで搾取している企業だといっているわけではありませんので、ご注意を。日本と中国の格差関係から見えてくるものがあるのではないかということですね。

中国の労働状況の現実や、記事に引用したアメリカでのスウェット・ショップなどの周辺状況から、だいたいは類推できるのではないでしょうか。

明確な事実をつかんでいるわけではありませんが、日本は労働条件の過酷さをあまり表立って報道しない国という状況から、おおい隠されているといえるかもしれませんね。

この記事はあくまでも周辺や背景にはこのようなものがあると指摘しているにすぎないというべきですね。
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