『ネオリベラリズムの精神分析』 樫村 愛子
ネオリベラリズムの精神分析―なぜ伝統や文化が求められるのか (光文社新書 314)
樫村 愛子

新書としてはかなりレベルの高い書物である。専門書なみである。現代思想の新しい動向、スティグレールやヴィリリオ、リッツァやカストリディアス、ギデンズ、ル・ゴフ、ラッシュ、バウマンといった人たちの思想を紹介してくれる点でたいへんありがたい。どうも私はドゥルーズ、デリダ、ボードリヤール以降の新しい思想家の情報がいまいち入ってこないのである。
内容のほうは、「社会の流動化が進むことで、社会の「恒常性」が奪われ、長期的展望が成り立たないこと――。これが現在の私たちに突きつけられている問題であり、本書のテーマである」。ということでプレカリテや再帰性や恒常性、共同体などが語られてゆく。
私としては再帰性や恒常性ってなんだというはじめのところでつまづき、なにが重要で、なにが問題なのか、よくわからないと思った。思想家の紹介はたいへんに魅力的で、刺激に富む論考を垣間見せさてくれて興がのるところもあったのだが、全体になにを問題にしているのかいまいち私にはつかみにくかった。
思想家の紹介のつぎはぎだけでそれはじゅうぶん価値のある内容をもっていると思うのだが、紹介本のみでは、あるテーマを追究しているという使命感がなく、重要性を感じられないので、このようなテーマをもった本でいいと思うが、そのテーマ自体が読解力のない私にはさらに霧の中に隠されてしまった気分がする。
まあ、現代思想から遠のいてしまった私としては、思想家の新しい動向を知るという意味で、刺激に富んだ書物ではあったが、紹介された思想家を読みたくなったり、論考に刺激されてそれを考えてみたくなったということはあまりなかった。私にはもうちょっとの本だった。おおくの思想家の論考や分析はかなり興味のひかれるものであったのだけれどね。新書にはこのような思想家の動向を紹介しながら、みずからの思索をおこなうという本がたくさん出てくれればありがたいと思うのですが。
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