fc2ブログ

『女の子って、どうして傷つけあうの?』 ロザリンド ワイズマン

0 Comments
うえしん

453558429X女の子って、どうして傷つけあうの?―娘を守るために親ができること
ロザリンド ワイズマン Rosalind Wiseman 小林 紀子
日本評論社 2005-10

by G-Tools

 なんでこの本は親に向かって書かれたのだろう。思春期の仲間関係でいじめられたり、無視されたり、いやがらせされたりする当の本人は娘のほうである。この解決策や対処法をいちばん知りたいのはその本人自身ではないのか。本人向けに書かれた本であってほしかった。

 紹介したり、まとめるのがむずかしい本だ。なんだか私の頭の中でまとめにくい。それから仲間や集団の中をうまくわたる技術を教えてくれそうな本に思えたのだが、読み終わってもなんだか懸命な知恵がついたという読後感もない。コマ切れな雑誌を読んだような感じかな。

 思春期の少女たちは派閥や権力争い、美人コンテストや意地悪な女の子たちに囲まれながら、その救命ボートにしがみついて、生き残ってゆかなければならない。それらの暴力から身を守る術を教えるNPOのエンパワー・プログラムをおこなっているのが著者である。少女たちはどのような世界に足を踏み入れているのかの解説はよくわかるのだが、どうも解決策を得たような気にならない。

 女の子たちは仲良しグループに入り、その派閥の中でいじめられたり、傷つけられたり、たいへんな関係の中をすごさなければならなくなる。これは集団の中で生きなければならない人間の宿命だ。女の子たちに特徴的なことは陰で悪口をいったり、うわさ話をしたり、やきもちをやいたり、競争心が強く、友だちを選ばせたり、裏切ったりすることだとされている。

 著者は派閥にはそれぞれのポジションがあると説明している。女王蜂にナンバー2、銀行家、浮動層、板ばさみの傍観者、おべっか使い・とりまき・メッセンジャー、ターゲットである。この社会的地位を維持するために少女たちは自分を犠牲にし、派閥に属するために自分の思い通りにできなくなり、弱い立場の味方をするようにと教えられた少女たちも残酷で冷酷なおこないをするようになるのである。派閥というのは救命ボートであり、援助が来るまで何年かそこで過ごさなければならないほかの選択肢がないものなのである。

 救命ボートはゆり動かされ、いつだれかをいじめや仲間外れのターゲットに絞りこむかわからない。のけ者にされたり、だれからも相手にされないようにならないよう、この派閥という救命ボートにしっかりしがみついていなければならない。たとえ友だちが自分を傷つけたり、みじめにする存在であってもである。そうやって派閥の地位や序列は維持されてゆくのである。

 これは少女のみならず、すべての人間に共通する集団や仲間関係でおこる事柄だろう。男でも女でも同じことだ。ただ女性は陰湿で内輪もめが多いと伝え聞いたりする。集団で生きることは人間にとっていつまでも終わらない難問でありつづけるのだろう。そして傷つけあい、おたがいをおとしめあい、もちろんときには楽しみや救いも多くもたらすものであるが。

 この本は期待は大きかったのだが、いまいち満足できるものではなかったが、ぜひこのような本やプログラムはもっとたくさん出てほしいものである。集団の中でのいじめや傷つけ合う関係というのは、一刻でも早く脱出したいものである。その解決策があるのなら、ぜひ教えていただきたい。私たち人間は集団の中で、茫然としながら、人を傷つけたり、あるいは暴力の中に巻きこまれたりと、のっぴきならない日々を送っている。「Help Me!」である。あなたは集団の中でうまくやりつづけられる自信とテクニックはありますか。


関連記事
うえしん
Posted byうえしん

Comments 0

There are no comments yet.