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2006

読書

2006年のグレート・ブックス8冊



 ことしのグレート・ブックスに選出された本は8冊です。年間100冊以上よむ私がおおいに感銘をうけた本であり、みなさんにぜひおおすめしたい本ですが、なかにはあまりにもマイブームに走り過ぎた本もあり、おおくの人に普遍的興味を駆り立てられる本とは限りませんのであしからず。

 ことしの読書のテーマはブロックの『不道徳教育』を読んでからリバタリアニズム本を読んでみようとなったのですが、日常や社会を経済学する本はあまり心に響かなかったですね。本田健の『ユダヤ人大富豪の教え』に感銘して金持ち本を何冊か読んだりしましたね。

 ことしの最大のマイブームはレイライン(太陽の道)でした。宮元健次の『神社の系譜』には大阪や奈良に結ばれる神社や山岳の太陽の道が紹介されていました。そのレイラインや古代人の世界観や原始信仰をさぐろうとしたのが、ことしの探究の最大の楽しみでした。読書と探究の楽しみはこのような探索にいちばん秘せられていると思います。

 お正月に読書を楽しみたいと思っている方は興味をひかれた本を読んでみてはいかがでしょうか。


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 『新卒ゼロ社会―増殖する「擬態社員」』 岩間夏樹
 角川oneテーマ21 2005/12 686e
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 若者は会社のシェルターなんてほしがっていない。強烈に中高年の会社社会を批判しているのだが、いまの社会のムードとして非正社員はかわいそうという風潮になりかかっているから、会社のシェルターは解体されるべきなのか迷ってきた。


 『国保崩壊―ルポルタージュ・見よ!「いのち切り捨て」政策の悲劇を』 矢吹紀人
 あけび書房 2003/5 1700e
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 国保料のバカ高さは異常である。払えない人は保険証をとりあげられ、医者にかかれない人も続出である。国民皆保険の制度はすでに壊れているのである。月に何万も払って、何年も医者にかからない健康人のアホらしさ。いったい保険制度ってなんなのだろうと思う。だから国家が国民を丸抱えにする福祉制度って矛盾だらけで嫌いだ。平和憲法の自衛隊みたいなものでウソで固めた制度だ。


 『もうひとつの愛を哲学する―ステイタスの不安』 アラン・ド・ボトン
 集英社 2004 3200e
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 いまの世の中は会社で出世したり、金持ちになったり、有名になることを当たり前にめざす社会である。しかしそのステータスはほんとうに私たちを幸福にするのか、もし得られないときの不幸はだれが慰めてくれるのか。私たちはステータスをめざすことより先に、ステータスそのものが問われなければならないのではないか。『もうひとつの愛』とは世間から認められ、愛されることである。私たちはもっと愛されようとして心の傷を偉くなることで打ち消そうとするのである。ステータスをテーマにしたすばらしい本である。


 『「心」はからだの外にある―「エコロジカルな私」の哲学』 河野哲也
 NHKブックス 2006/2 1020e
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 感嘆の声をあげて読みたくなった本。こんにち支配的になっている心理主義を徹底的に批判した本だからだ。心理主義とはなんでもかんでも個人の心の問題に帰せられる考え方のことである。おまえの心が悪いのだ、おまえの心が異常だ、心を直せ、うんぬん。心理学がブームになる時代というのはすべて個人が悪者にされる政治イデオロギーの時代である。心理学の罠に陥っている自分たちの時代を見直せといいたい。心理学の悪弊は徹底的に批判しなければならない。


 『不安型ナショナリズムの時代』 高原 基彰
 洋泉社y新書 06/4 780e
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 安定した会社社会終焉の宣告の書。流動性の時代がやってくる。「安定した会社勤め」や「まじめなサラリーマン」といったイメージが「落ちこぼれ」や「失敗例」と見なされる時代がやってこなければならない。さもなければ日本は新しい流動性の時代にとり残されるばかりである。新しい世代のための本である。



 『大和の原像―知られざる古代太陽の道』 小川光三
 大和書房 1973/1 1400e
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 大和に残る古代太陽の道を見つけた発見の書である。奈良の三輪山を中心に伊勢斎宮跡や淡路の伊勢の森にいたる一直線上に神社や山岳が連なるのである。いにしえ人は神の山や神社を冬至や夏至、春分・秋分の太陽のラインで結びつけた。稲作に必要な暦を知ったり、または神と出会うためだったのだろうか。古代の人は太陽の昇るところと沈むところに神の国や死の国を思い描いていたのである。太陽は夕に死に朝に甦る。または冬至に死んで新しく甦る。そして古代の天皇は神と交わり、太陽のように神として甦ろうとしたのである。


 『天照大神と前方後円墳の謎』 大和岩雄
 六興出版 1983/6 1200e(絶版)
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 レイラインの太陽信仰の内実を知るのにこの本は最適であった。太陽は夕に死に朝に甦り、また冬至に死んで新たに甦る。生命の再生や誕生をつかさどるのは性交や性器である。ゆえに性交は神が甦る神聖な儀式になり、それは神と交わることであり、世界のあちこちに性のシンボルが探し求められることになった。太陽は性交によって生まれ、女陰をかたどる穴から生まれると考えられた。そしてその穴は再生と復活の子宮である。この神聖な場所での性交は神と交わることである。世界中で信仰されていた太陽の神や性と再生の物語がこの本から読めてきそうな気がするのである。


 『労働ダンピング―雇用の多様化の果てに』 中野麻美
 岩波新書 2006/10 780e
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 賃金や労働条件がバナナの叩き売りみたいに投げ売りされて転がり落ちてゆく現在の労働者。非正社員地帯は治外法権のボートピープルみたいなものである。保護された正社員もうかうかしていられない。賃金が半分や三分の一の非正規におきかえられるのも時間の問題かもしれない。かつて労働者は守られていたが、人生の丸売りをもとめられた。いまは守られない、安く叩かれる、細切れ雇用、と労働者はかつてないほど悲惨な状況に投げ込まれようとしている。とうとうこの国の本性がむき出しになったという感だ。日本人はむかしから国家や会社から守られてこなかったのである。とうとうほんとうの対決の時期がきたのかもしれない。


読書の流れを変えた本3冊

 グレート・ブックスに選ばれませんでしたが、この3冊はそれ以降の読書の流れを変えた本です。同じような本を読みたいと思わせる本はそれだけ魅力的なテーマを内包している本であったわけです。願わくば来年もこのような本に何冊も出会いたいですね。読者や探究の楽しみを啓いてくれる本です。

 『不道徳教育』 ウォルター・ブロック
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 国家の正義や禁止がその意図とは逆にいかに逆効果をもたらすかの仰天の経済書です。

 『ユダヤ人大富豪の教え』 本田鍵
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 金持ちとは人に喜びをおおく与えられた人。もらうことばかり考えている人にだれもお金や親切を与えようとしない。ほしければ与えよ。この世の基本ルールなのだろう。

 『神社の系譜』 宮元健次
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 レイライン探究に火をつけた本。なぜこの場所に神社や聖地があるのかの疑問に答えてくれる本である。



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