現代思想のはぐれ方。





左からドゥルーズ、デリダ、フーコー、レヴィ=ストロース、アルチュセール
文庫になって思わず買ってしまったドゥルーズ+ガタリの『アンチ・オイディプス』。6、7千円する高い本なのでなんども手にとっては読むのをあきらめていた本。内容も理解できないのではないかという思いもなくはなかった。じじつ、読み出してかなり難渋している(笑)。
ドゥルーズ+ガタリの『アンチ・オイディプス』はポスト構造主義を代表する現代思想書。フランスの思想ではフッサールやメルロ=ポンティの現象学、サルトルの実存主義という流れがあって、60年代前後からレヴィ=ストロース、アルチュセール、フーコー、バルトといった人たちによる構造主義がはじまった。そのあとにきたのがデリダやドゥルーズのポスト構造主義である。
80年代あたりに「ニューアカデミズム・ブーム」というのがあったそうである。浅田彰や中沢新一、栗本慎一郎といった人が立役者になった。このころから精神世界もひそかにブームになり、話題になることもあったのだが、けれども現代思想が表舞台にあらわれることはなかったと思う。
いまの私は現代思想を読むことはほとんどなくなったが、90年代は遅れてきた哲学青年として(死語だな)、現代思想にはばりばりに興味をもっていた。有名な思想家の一冊や二冊は読んだと思う。
なぜ、いまは読まなくなったのか。私の読書というのは「テーマ読書」であるからである。「なぜこれはこうなっているんだろうか」とか「これはどういうことなんだろう」という疑問のもとに本は読まれる。
いっぽう、現代思想というのは「有名人読み」である。「この人はすごい」とか「この人はエラい」という評価のもとに読まれる。フーコーはどうだとか、デリダはどうだという名のもとに読まれる。私の興味や疑問のもとに読まれるテーマはどうもなかなか現代思想のテーマと合致しないようなのである。だから私は現代思想からはぐれた。
学問の名著とよばれる評判本も、おおくをカバーしたわけではまったくないけど、いちおうそういう読み方の時期は過ぎてしまった。だから有名人読みの読書がなかなかできないのである。
現代思想のテーマってなかなか私の興味のひくものにならない。有名人はかなり「スゴイこと」を語っているらしいのだが、私の興味の射程がとどかない。現代思想のいちばんのテーマというのは「真理はわかるのか」あたりだと思うので、べつに私はそんなことにはあまり興味がない。そして私の知りたいこと、考えたいことは長いあいだ、現代思想とクロスすることはなくなった。
「有名人語り」ってしてみたいんだよな。フーコーがどうだとか、バルトやラカンはどのうのこうのと。でももう私はテーマや興味を度外視しての、「有名人読み」のような冒険はもうできない。なんせ、現代思想って難解で、理解できない代物も多く、興味のない最中にそんな本を読んでもますます文脈は霧の中である。
現代思想について「人はどうしてそんな思考の中に突入できるのか」みたいなことを瀬古浩爾がいっていたが、まさしくそんな気分である。思い出せば、ハイデガーの『存在と時間』は氷の上をつるつるとすべるようにほぼわからなかったし(以下、笑)、メルロ=ポンティの『知覚の現象学』は知覚のことを語っておりながらなぜここまでわからないのかと不可解に思えたし、デリダの『グラマトロジー』なんかいったいどこのなにについて語られているのかさっぱりわからなかった。ヘーゲルの『小論理学』は絶望の淵に立たされたし、カントは不可能だと思って薄い本でも手を出せなかった。有名人だからといって、まったくわからない本を最後まで読み通すのはもういやである(笑)。
私が哲学を読みはじめてものすごく興味をもてたのが「大衆社会論」である。フロム『自由からの逃走』やオルテガ『大衆の反逆』、リースマン『孤独な群集』、ミル『自由論』、ニーチェ『道徳の系譜』などである。これらはほんとに興味をもてたし、貪るように読んだ。思想や哲学というよりか、社会学である。私には理解できるものとできにくいもの、相性というものがあるのだということがよくわかった。そして自分の興味にしたがって読んだほうが有益で、ためになることもわかった。そうして現代思想の「有名人読み」の用途は失われていったというわけである。このHPの97年からのアーカイヴはそういう一皮向けてからの記録である。
しかし有名人読みができる時代というのは幸せなときだと思う。知的好奇心や探究心があふれだして、なんでもかんでも知の頂点とよばれものを読んでみたいと思う時期なのである。こんなに好奇心が「発情」する時期というのは、後にも先にも「有名人読み」をしてみたいときだけである。そんな無邪気な時期があったんだなと、すっかり自分の興味のみに読書や思考がおさまったいまの私は回顧するのである。
▼私の現代思想の勉強本。(たぶん古い)



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