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07 17
2006

社会哲学

友人間での金のやりとりが嫌われるのなぜか


 私たちはお金とビジネスの世の中に生きているが、友人間や男女間では金のやりとりは嫌われる。だれかに親切にしてもらったり、助けてもらったり、うれしいことをしてもらったときに、金を差し出したりなんかしたら、ぎゃくに非難されるだろう。

 なぜなんだろう。私たちが人になにかサービスや行為をするときは、たいがいお金が絡んだ仕事やビジネスにおいてだ。お金をもらわないことには、たいがいの仕事――パンをつくったり、売ったり、モノをつくったり、売ったりする仕事はしないだろう。

 なぜ仕事は無償でないのだろうか。ぎゃくに友人間ではなぜ無償でなければならないのか。

 その分かれ目は「見返り」を要求するか、しないのかの違いではないかと思う。ビジネスにおいてはサービスを与えますから、代わりにお金という見返りをもらいますよというルールがある。

 反対に友人間においては行為は、「見返り」を要求してはならないというルールがある。つまりお金や自己利益のためにあなたに親切や優しさを与えたのではないということだ。ここでお金が払われるということは、無償でやった親切や優しさに自己利益という見返りのためにやったのだという侮辱を与えることになる。友人間においては、たとえお金のような互酬性がはたらいていたとしても、見返りをあからさまに返すのは、自己利益のためにやったのだという非難を与えることになる。

 ここからお金やビジネスが貪欲で汚いと嫌われるのは、見返りや自己利益のためにやっているという前提とメッセージがあるからとわかる。自分の利益のためにあなたにサービスを与えているのですよ、無償ではあなたにサービスをだれが与えるかとメッセージしていることになる。

 しかしビジネスでカン違いしてはならないのは、金儲けがいくら自己利益のためだからといって、客から奪いとったり、利益のみを得ようと思うのなら、まず儲からないだろう。ビジネスの基本は友人と同じように人に喜びや楽しみをさいしょに与えないことには、だれもお金という見返りを与えようとは思わないだろう。

 ビジネスは優れて利他行為である。友人間の関係と同じである。ただ違うのはさいしょから金という「見返り」を要求するか、しないかの違いがある。見返りがさいしょから返されるという前提があるのがお金のビジネスである。友人間においては、見返りは要求しないばかりか、ぎゃくにそれは侮辱になる。もちろん暗黙にはお金と似た互酬性が成立しないことには長続きするわけなどないのだが。

 ビジネスは利他行為である。見返りはあからさまに要求されるが、利他行為の喜びやうれしさを与えないことにはビジネスは成功しない。ビジネスには自己利益のためにやっているという非難が強いが、利他行為が社会にヒットしたからこそそのビジネスは儲かったのである。自己利益のためだけにやっている非難は当たらないように思うのだが。

 この利己行為か、利他行為かの線引きはむずかしい。お金という自己利益がなかったら、だれが利他行為に生涯を費やすというのだろう。労働強制キャンプにだれが喜んで入るというのだろう。ボランティアは金銭という見返りは要求しないが、おそらくはビジネスが覆った社会への異議申し立てなのだろう。

 私は労働を少なくして、自分の人生の時間を増やしたいとずっと思ってきた。仕事だけが人生じゃないと思ってきた。たぶんに自分勝手というわけではないと思いたいが、他人のために自分の人生を費やすのはいやだと思っているのだろう。だけど社会のサービスを手に入れるためには自分もたくさん社会にサービスを与えないことにはお金が手に入らない。

 お金の世の中というのは、自分のために生きようと思って、他人のためばかりに生きなければならない世の中だと思う。人がつくる魅力的なサービスやモノに幻惑されて、ますます自分のために生きられないドツボにはまる。利他行為がお金という自己利益でないと成立しないように、人は利他行為ばかりに生きたいとは思っていないだろう。

 貨幣のない世の中で生きたいものだが、それなら現代の消費分業社会も生まれなかっただろう。私は自分のために生きているのだろうか、それとも社会のために生かされているのだろうか。


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