FC2ブログ

HOME   >>  国家と文明の優劣論  >>  私の貢献は何もないのに日本の栄光に同一化できる私
03 12
2005

国家と文明の優劣論

私の貢献は何もないのに日本の栄光に同一化できる私


 この世の中で私が私と思っているものに同一化できるものはたいへん少ない。私の働く会社や家族や地域にわずかながらの「私」のつながりを感じる程度だ。ほかのたいていのものは「私」ではないし、私とつながりすらない。

 私は世界から隔絶され、孤立しているのではないかとおもうくらいだ。私のものといえるものは家の中にあるわずかなものだけで、この世の中にはほとんどない。

 人が私の範囲とよべるものはこのように狭いものだといえるのに、「日本国」や「日本文化」、「日本人の歴史」となったりすると、たちまちそれは「私」のものになりえる。私の範囲は孤立した状態からいっきょに巨大なものになるのである。

 身近な街を見渡してみたら、「私」とよべるものはほとんどなかったはずである。世間は同一化できないものがほとんどである。

 私はソニーの社員でもないからソニーが私であるとはいえないし、たとえば日産の車をもっていたとしても私は日産の社員であるとはいえない。でも「日本国」や「日本文化」となるとそれが許されるのだ。国家はどこかの会社員のように排他的な顔をしていない。

 私は日本のGNPが上るとうれしいと思うが、私は私が勤める小さな会社の従業員のみである。ソニーや日産のように大企業の社員でもないのに、日本国の経済繁栄をわがことのように思う。ソニーや日産の利益が上ったからといって、社員でも株主でもない私に喜ぶいわれはない。それよりもっと大きな日本規模になると「私」の喜びになるのである。

 私がソニーや日産の製品を買うと、それらの会社は「私」のことのように思うことができる。私たちは買うことによって、企業の威信や権威を身にまとうことができる。ブランド品を買うことによって私の価値が上ったように思う。

 私は日本国を買ったわけではない。税金を払っている。そのわずかな金額を出資しているから私は「日本国」に同一化できるのだろうか。より大きな出資をしている人はより「日本国」である資格があるのだろうか。

 私は日本文化にほとんど貢献したことはない。信長や秀吉みたいに歴史の舞台を駈けめぐったこともない。それでも海外で日本文化が評価されると自慢に思うし、歴史の英雄を理想化して同一化することもできる。

 私は地域の短歌や和歌をやるカルチャーセンターに通ったこともないのだが、そこの評価が高いからといって自分の鼻が高くなると思うことはない。日本文化となると、私のかかわりや貢献はかぎりなくゼロである。それでも評価される日本文化は私の自慢である。カルチャーセンターの業績を横どりしているかのようである。

 私はライブドアの社長やドンキホーテの社長となんの関係もない。地域の政治家ともいっさいかかわりがない。まったく赤の他人である。現代の偉い人たちとの関係がそうであるのに、歴史上の人物となるとなぜかわがことのように親近感が抱ける。愛着を抱くほど「私」のように感じることができる。

 同じような例として、自分の出身校だけが母校である。ほかの学校を卒業したことにすれば詐称罪に問われる。卒業していないのに、同じ地域という理由だけで応援されるのが高校野球である。「私」とはそこに住む範囲まで含まれるのか。「私」とは身体のみではなく、土地まで「私」なのだろうか。大家や家主のものではないのか。

 私はどこかのスポーツ・チームに属したこともないし、優秀な成績も収めたこともない。近所のスポーツクラブが勝利したからといって、私はうれしくもならないし、自慢にもならない。それを横取りして自分の手柄のように誇れば、そのスポーツクラブにひんしゅくを買うだろう。それがプロ野球やオリンピックになれば許されるばかりか、おおいに推奨される。私に何の関係があるのだろう?

 「私」の範囲とはおかしなものである。近くのものや同時代なものは私とまったく関わりのない隔絶された他人事であるはずなのに、「日本国」や「日本文化」、「日本歴史」となると「私」のことのようになる。

 ものすごい違和感を感じる。会員制のクラブが大きくなるごとに会員制でなくなって、だれでも入れるようになってゆくのである。できれば、私はこのおかしな感覚を大切にして、大きなものを「私」と見なす錯覚には警戒したいと思う。


関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

Kindle本、2冊発売中です。

google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
FC2カウンター

Page Top