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02 01
2020

幻想現実論再読

概念、肉体を去れ――『意識に先立って』 ニサルガダッタ・マハラジ

  

 『アイ・アム・ザット 私は在る』は巨星とよばれるにふさわしい書に思えた。ぶっきらぼうで、言葉は簡明で、経典や専門用語をつかわない日常の感覚でつかめる言葉で、質問者に答えかける。といっても理解はかなりむずかしい。言葉や観念でとらえられない世界のことを語るからだ。

 この『意識に先立って』はマハラジの最晩年の対話がのせられたもので、図書館で見かけたので思わず飛びついた。

 今回はかなり理解がおよばない気がした。前書でも理解がおよばないところが多く、理解できるところを結びつければかろうじてわかるところがある書であったことには変わりはないが。

 この書でもしきりに「私は在る」に帰ろと語られていた。しかしそれを肯定するのではなく、否定する言葉だったのかと今回気づいた。

「存在感、つまり「私は在るという性質」が客の印だ。あなたの答えは深い信念からのものだろうか?

…あなたは存在していないという知識を、あなたは完全に受けいれているのだろうか」



 「私は在る」という感覚すらも不要な概念だと断じられる。

「「私は在る」という概念を身につけると、あらゆる概念に巻き込まれる。この「私は在る」という概念が去ると、私は存在していたとか、こういった経験をしていたという記憶は何も残らない。まさに記憶がぬぐい去られるのだ。あなたが完全に一掃される前に、まず自分の痕跡が少し残っている前に、この場所を去ったほうがいい」



 肉体の否定もたびたびおこなわれる。あなたは肉体ではないのだ、肉体やそれにともなう意識の一体化を捨て去れという。この意識も肉体にともなうものであり、肉体が去れば、それもなくなるものだ。その一体化をぬぐい去れと。

「「私は在る」という第一の概念が、肉体のアイデンティティにしがみついているので、すべての問題が起こるのだ。自分は概念でないという結論に到達しなさい」



 概念も去らせて、肉体の一体化、記憶も意識も去らせる。私たちのあり方そのものが否定される。私たちはあまりにも概念、思考、記憶のとりこになっているので、マハラジは私の考えがあなたがたに理解されることはないと何度もいう。

「源泉に戻りなさい。存在性の概念である「私は在る」が起こる前、あなたの状態は何だったのか」



 前回の書では気づかなかった、もしくは忘れていた、私の存在性以前に戻れという言葉が発せられる。

「存在感が到着する前、あなたは時間の概念がまったくない状態にいた。ということは、何が生まれているのか? それは時間の概念であり、誕生や生きること、死ぬという出来事がいっしょになってまさに時間と継続を構成するようになるのだ」



 禅でも出生以前のあなたの顔はどのようなものかと問われる。存在感が生まれる前の状態は子ども時代に経験したことであり、キリスト教でも幼子のようになれといわれることと同じである。そして私たちは概念や思考にいっぱいになっているために、それらが生まれる前の子どもの状態に戻れることはないのである。

 言葉や思考が生まれると、時間の展望が生まれ、私たちは記憶とともに、人生の経験やエピソードとしての自分こそが「私」であるという信念を形成してゆく。その一体化こそを神秘家はぬぐい去れといっているのではないだろうか。

 マハラジの動画を見ると、ぶっきらぼうな粗野なおっさんだという印象がある。それでも話している内容はとても心理的、認識論的な内容である。けっして経典や教養のある高尚な専門用語で語らない。質問者からお金をとらなかったというし、グル的な威厳を見せつけなかった人だ。まさにタバコ屋のおっさんが、神秘思想を語るのである。市井に生きる人が、生の神秘から切り離されることはないのである。


▼かみつくような話し方のマハラジ。日本語字幕あります。






 
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うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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