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2019

おすすめ本特選集

2019年、ことし読んだおすすめの本


 2019年、ことしは二十代のころに読んで感銘をうけた社会学古典を、二、三十年ぶりに読みかえしていた。この間にどれだけ読解力を増したか、またはほかの方面からも考えられるようになったのかの試金石みたいなものだった。

 そのあと、去年おこなっていた神秘思想の探究は一時棚上げしていたのだが、非二元やアドヴァイダの系譜の本を読むようになった。どうやらルーツはブラフマンを語ったウパニシャッドやヴェーダなどのバラモン教、ヒンドゥー教からきているらしい。

 おすすめの本となると、とうぜん読みかえした本は、ずっと変わらぬ不動の地位を占めているから、おすすめを外せない。新しくおすすめに加わった本は神秘思想の二冊だけである。


■『現代を見る歴史』 堺屋太一

 

 ことしは堺屋太一が亡くなった。堺屋太一の経済社会の歴史のアナロジーにはおおいに学ばされ、感嘆させられたものだ。現代の情勢に似た社会や国家を、歴史のある一時期から選び出して、現代の行く末の参考する。そうとうの記憶力と参照力がないとできない離れ技だと思う。工業社会から知価社会の転換を説き、インターネットの社会を予言したといえるだろう。


『大衆の反逆』 オルテガ

 

 二十代のころの私はマスコミや世論の強制や指示にたいへん腹を立てていた。そのような趨勢や強制力を生み出すものはなんなのかと、このような哲学・社会学の古典に範を求めるようになった。大衆が凡俗でありながら、道理も説かず、ただ自分の意見を押しつけるようになった時代の批判に、おおいに共鳴したものだ。だれかに強制されて腹が立つという人は、先人がその解明をこころみたこのような著作に出会うことができるのである。


『正統の哲学 異端の思想』 中川八洋

 

 二十代の私は現代思想ばかりを読み、その中ではどちらかというと社会主義寄りの思想に知らず知らずのうちに親和的になっていたといえる。この本は保守の思想の系譜をたどった本であり、マルクスの全体主義国家を生んだのはルソーの民主主義だという思想には、ずいぶんとうならされた。バークを読んでもいまいちわからなかった保守思想がこの本でかなり鮮やかに読めた。ここには人間の知性がすべてを統御できるという思想があり、その思想は理想にそぐわない人間や思想を切り離し、ついには虐殺を生むというパラドクスがある。進歩主義思想の知性万能主義こそを懐疑するべきなのだろう。


『善悪の彼岸』 ニーチェ

 

 二十代のはじめころ世界文学は読んでいたが、学術書は読めなかった私がはじめて読んだ哲学書である。理解できないところはところどころあったが、道徳が天才や才能ある人をつぶしてゆき、平均的な人間にしてゆくという警告にずいぶんと感銘した。ニーチェはこんにち自己啓発的に捉えられることがあるようになったが、「畜群」とか罵る哲学者に、そんな甘い顔があるようにはとても思えないのだが。ニーチェはインド思想にも影響されて、言葉がつくる世界の「虚構性」や「創造性」にも警鐘を鳴らしていた。それは『権力への意志』にも色濃く出ていたが、やはり神秘思想にはかなわない。


『自由からの逃走』 フロム

 

 ふつう人間は権力や権威から逃れて自由をもとめるはずだと思われているが、みずからが権力や常識といったものに服従してゆく人たちがたくさんいる。みんながしていること、ほかの人もしていることにみずから服従してゆき、みずからの個性や独自性をうしなってゆく。私たちの人生はたいていは他人の列からはみ出さないよう、みずから他人と異ならないように生きてゆくのではないだろうか。こういった人間の逆説にたいするフロムの洞察にはひじょうに感嘆すべきものがある。だが個性や自分らしさを求める先には、個性的消費といった他人とすこし異なるデザインや商品を買う消費の波に呑みこまれて、みずからを失う道の罠も大きく口を開けている。こんにちの日本はネトウヨや過剰適応といった趨勢も大きくなり、ナチスの社会を分析したフロムのこの書はますます重要な警告になっているのだろう。


『自由論』 ミル

 

 ニーチェにしろ、オルテガにしろ、民主政治の時代において「多数者の専制」といったものに呪詛を吐いた。このJ.S.ミルも天才や才能ある人が、一般人の鋳型にむりやり押しこめられて、精神的に殺されてゆく脅威を語っている。天才ある人は、一般人より、独自に個性をのばせる環境を必要とする。ミルとニーチェのいっていたことはほとんど同じである。卑近な例では、社会的嫌悪を向けられていたオタク・バッシングに近い例を見たように思うのだが、企業や組織で働く人間はますますこの画一化の波に呑まれる脅威を感じざるをえないのではないだろうか。創造的な知識社会にはそのような画一性が進化の阻害になると説かれたのだが、その趨勢が抑えられたと感じることは少ない。


『捨てて強くなる』 櫻木健古

 

 ひところ前の忘れられた自己啓発書であるが、愚かに堕ちることによって、人間の比較序列から逃れるという仏教の伝統を語った、私的にはたいへんに役に立った名著の位置づけをもっている本である。比較とか競争だけを自分の価値と思いこみ、あるいは教育され、学歴や社会の価値序列だけが自分の人生すべてだと思う人もたくさんいるのだろう。そういった世間の価値基準をみごとに落してくれる視点や考え方を注入してくれたのが、この忘れられた自己啓発書である。比較とか序列で自分の価値を計る視点を、そぎ落としてくれる身に染みる名著を、ほかにはまだ見いだせていない。


『脱学校の社会』 イリイチ

 

 再読しても身に染みる名著である。大人になって学校で学びなおしたいという人をたくさん聞くのだが、学校で学んだり、他人から教えられることがどんなに自発的な学習能力を削いできたのかという理解力が育っていないのだと思う。人からものを教えてもらうということは、自発的に学ぶ能力を削ぎ、知識を自分と関係ない「他人事」や「記号」にして、レストランのお客のように口を開けて待っている無能な個人に閉じこめてしまう。みずから自発的に選びとっていった知識だけが自分の血肉になる。イリイチのこの指摘は、身に染みてわかる。強制や教科が決まった学校で教えられることは、知識を自分からどんどん阻害してゆくことである。学校で学んだことを社会に出てほぼ忘れ、読書する人もどんどん減っている現在、イリイチの警鐘がまったく届かなかったのだろう。


■『愛とは、怖れを手ばなすこと』 ジャンポルスキー

 

 この本では、ふたつの大事な指摘に出会ったと思う。ひとつは現実は自分がつくっていること、もうひとつは攻撃的な人はだれよりも恐れている人であるということである。この本は他人や外界が悪いという考え方から、そういう考えも自分がつくっているにほかならないという自己啓発的な認識の転換を説いている本である。この転換ができないと、外界を責めつづけ、外界を変えようとして、そのあいだにどんなに感情的に最悪になろうが、それをやめることのできない愚かな結果に陥ってしまう。ストア哲学である。チャネリングの本から精神科医が学び、新たにビジネス書の自己啓発家が翻訳したのが本書である。他人を責めつづけることの愚かさに気づける本である。科学を信仰して、精神主義を嫌った現代人の陥穽である。


『覚醒の炎』 プンジャジ

 

 非二元・アドヴァイダの本を読むようになって、この本を読んだ。ラマナ・マハラシの弟子であって、あなたは身体ではないといったことや気づきだけがあるといったブラフマンに通じることを話す。非二元とはどの系譜かよくつかめなかったのだが、ブラフマンを語ったバラモン教やヒンドゥー教の流れであることを理解した。現代インド人はとうぜんヒンドゥー教なのであって、このプンジャジやラマナ・マハラシ、ニサルガダッタ・マハラジはヒンドゥー教圏内に属することになる。ヒンドゥー教を紹介した本では、クリシュナムルティもラジニーシも、ヒンドゥー教である。ヒンドゥー教であることをあまり大きくいわずに入ってくるのは、この国が仏教の国であるからだろうか。ブラフマンの一体化を目的とするヒンドゥー教は、あまり瞑想をすすめず、セラピー要素が少ないと思える。



『悟りを生きる』 キロビー

 

 名前も聞いたことのない非二元の著者であるが、読了後あまりに感銘したのでもう一度読み直したほどの感銘を与えた書である。分離された物質は言語や概念にほかならないというし、思考の抵抗が自我が独立しているという思いを強めるのだという指摘には、もっと理解したいと思った。抵抗やコントロール欲こそが、われわれを分離や独立した世界へと運びこむ。あるがままの世界にNOをつきつけた瞬間に、いや思考した瞬間に、この世界に亀裂は入れられるのかもしれない。あまり名前を聞くことのない著者であるが、折に触れて深く味わいたい明晰な書である。


 以上が2019年ことし読んだおすすめしたい11冊の本です。

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プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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