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07 02
2019

書評 社会学

暗黙のマナーを読み解け!――『儀礼としての相互行為』 アーヴィング・ゴッフマン



 ゴッフマンはわかりそうで、わからないぎりぎりの世界を描いていて、今回もかなり難航した。遠い昔に『演技と行為』を読んで、大切な本として書棚に鎮座しているが、その本がひもとかれることは少ない。

 いちばんわかりやすい表現個所は、精神病院でのナースステーションに勝手に入っていい病棟の違いとか、医者と患者の関係など具体的な例が出てくるとわかるのだが、あとは抽象的な表現の砂漠にこばまれて、理解をとどこおらせる。

 これは具体的には新人やコミュ障があたらしい職場に入って、そこで学ぶ非言語的なルールやマナー、暗黙の決まりなどをなんとか表現しようとした社会学の研究のように思える。新人は職場のそのような言葉にできないルールを知らない。経験や時間がたつうちにじょじょにそのルールになじんでゆき、その場にふさわしいふるまいを身につけてゆく。ゴッフマンはその過程の一段階にふみとどまり、そこでの自覚を言語化しようとした人のように思える。

 職場やあたらしい場にふさわしいマナーやルール、ふるまいをなんとか表現しようとしたみたいだ。たとえば、コミュ障や内向的な人間が職場や新しい環境でどうなじむかという自己啓発的な本はいつも出されているだろう。ゴッフマンはその世界を学術的な表現で昇華しようとした人に見える。そして具体例が少なく、抽象的な言葉で表現しようとしたため、迷宮のような表現になっている。

 人がたくさんいるところで、ひとり言をつぶやいたり、なにかの喚き声や奇矯な声をあげれば、精神的ななんらかの疾患があるのではないかと思われる。これはふるまいや表現のルールやコードに抵触し、健常な人ではないという線引きを逸脱してしまう行為だ。精神病といわれる人のふるまいは、このコードをことごとく破ってしまう行為をおこなってしまうので、かれらは正常人の線引きから追放されてしまう。

 この精神病のラインだけではなく、日常の人の場にはこのようなふるまいのさまざまなルールやコードがある。あたらしい場や職場においては、新参者はその中での適切なふるまいや言動を知らない。非言語的な知見を重ねて、その場にふさわしいふるまいを身につけなければならない。ゴッフマンはその言語化されないマナーやコードを、意識的に記述しようとしたのだろう。

 ところがたいへん残念なことに抽象的な表現がおおく、具体的につかみがたい言語表現がつみかさねられるために、なにをいっているのか、了解をこばむ。これはまだしも内向的な人間や神経質な人間がどう自分を活かすかという自己啓発書を読んだほうが、参考になりそうである。このような社会不安障害的なものをもっていないと、かなり理解できにくい次元をゴッフマンは記述している。ゴッフマンはいまでいうアスペ的なディスコミュニケーションに悩んだ人だったのかもしれないね。

 アスペやコミュ障に悩む人にはなじみのある世界と思われるが、表現の迷宮さは容易に近づけさせてくれない本である。


行為と演技―日常生活における自己呈示 (ゴッフマンの社会学 1)スティグマの社会学―烙印を押されたアイデンティティ集まりの構造―新しい日常行動論を求めて (ゴッフマンの社会学 4)出会い―相互行為の社会学 (ゴッフマンの社会学 2)触発するゴフマン―やりとりの秩序の社会学


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