FC2ブログ

HOME   >>  人生論  >>  目的にするな、自分がなくなる――『「なぜか人に好かれる人」の共通点』 斎藤茂太
06 04
2019

人生論

目的にするな、自分がなくなる――『「なぜか人に好かれる人」の共通点』 斎藤茂太



 私は人に好かれることなど人生の目標にしてこなかったが、いまの職場の環境がそれをゆるしてくれないようなところなので、あわてて会話術や人付き合いの本を読んでいるところだ。

 私はともかく人に合わせるとか、みんながやっているからお前もやれという圧力に反抗心をいだいた生き方をしてきた。おかげでグループや集団が嫌いになり、避けるようになり、個人としてつきあうことだけを大切にして、やはり嫌われたり、うまく距離を見いだせないこともあった。今の職場のうまい距離感や遊泳術を見いださなければならない。

 いま世間は人に好かれることより、嫌われても自分をもつ勇気のほうがベストセラーになったりする時代だ。人に合わせてばかりて、自分をもてない不幸や不遇に声をあげるような時代になったということだ。

 この本の人に好かれる人の章題をざっと見てみると、やわらかくて、水のように自由に動き、頑固に固まっておらず、ひとりでも楽しめる人といった特徴があげられている。

 この特徴は、私の自己啓発を読んで得たばらばらに入ってきた知識に、総称として似ていると思った。自己啓発では人を尊重するとか、押しつけではなく、好みで人を動かせだの、人からなにかをほしいと思えば、まずはそれを与えよといったことを、いろんな自己啓発から学んだ。こういう方法をつみかさねてゆけば、たしかにこの本に掲げられている人に好かれる人の特徴をもつようになるのだろう。

 全体的には老荘的人物に近いように思われた。知識や固さと真逆の、水のようにやわらかで、融通無碍で、流れや自然にまかせる。それは時間や過去にこだわらない、過去を水に流すといった考えも流れ込んでいて、これは禅的な考えから得られるものだ。人文の知というのは、人と衝突しない、人に好かれる方向に、人を導てゆくものだと思う。

 ちょっと前にツイッターで自分で機嫌を治せる人の大切さがタイムラインをにぎわせたことがあった。自分で機嫌が治せない人は、まわりの人に不機嫌さを治してもらおうとする。この本では書かれていないが、人に機嫌を委ねない人も好かれる人の特徴につけくわえるべきだろう。これはウェイン・ダイアーの他人に感情をゆだねて、他人の犠牲者になる人という指摘に学ぶことができた。

 斎藤茂太はこの本のさいごのほうで、「好かれることを目的にすると、自分の魅力が消えてゆく」というこの本の否定になるようなことをいっている。私もまったくそう思うから、好かれることは目的にしてはならないと思う。これを目的にすると人に合わせてばかりいて、自分ひとりで楽しみを見いだせない人になる。そういうどこにでもいるトガったところのない人は魅力も消えてゆくのである。八方美人の苦しいワナにはまる。

 友達がたくさんいる人、いつも誰かに囲まれている人をこの本ではあげているわけではなく、ぎゃくに「ひとりでも楽しめる人」をあげている。自分ひとりだけでも好奇心をもっていろんな経験をしないと、まわりと同じような話題や興味しかもてず、その人しか知らないような魅力や楽しみを開拓できないのである。友だちがいつもつるむことが目標にされがちなのだが、これでは水が淀んでゆくばかりだ。

 これまでの時代はむしろ人に好かれること、みんなに合わせることばかりを目標にしてしまって、いまは『嫌われる勇気』がベストセラーになる時代だ。人に合わせてばかりいて、自分がなく、自分の楽しみを押しつぶされて、人に好かれるより、嫌われても自分を大事にすべきだと反省する時代になった。斉藤茂太のこの本は、もう時代遅れの本になったのだろう。私も環境がそうでなかったら、こんな本は読みもしなかった。

 自己啓発や人文書をよく読んできたが、総合的に人に好かれる、嫌われない方策を、ばらばらに学んできたのだなという気づきを与えてくれる本になった。ばらばらすぎて、まとまった仕入れをできる分野ではなかったが、人としてのよい生き方も、人文書は教えてくれるものなんだなと、読書もムダではなかったと思えた。


嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え人を動かす 文庫版大きく考えることの魔術―あなたには無限の可能性がある荘子 全現代語訳(上) (講談社学術文庫)どう生きるか、自分の人生!―今日を後悔しない生き方 ダイアー博士の「生活哲学」 (知的生きかた文庫)


関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

Kindle本、2冊発売中です。

 

twitterはこちら→ueshinzz

google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
FC2カウンター

Page Top