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01 25
2019

書評 社会学

ヘイトやレイシズム?――『広がるミサンドリー』 ナサンソン&ヤング

広がるミサンドリー: ポピュラーカルチャー、メディアにおける男性差別
ポール ナサンソン キャサリン・K. ヤング
彩流社



 ネット上で一部の社会学者やフェミニストが「頭がおかしい」といわれるほど、常識外れの発言をして叩かれることが多くなった。もう社会学者、フェミニスト全体が資質に問われるのではないかという風評にまで広がっている。性や男性批判にかんして、常軌を逸した心情がかもしだされているのではないか。なにか異常な憎悪感が煮えたぎっているのではないか。

 問題意識はそれほどはなかったのだが、図書館でこの450ページの大部の書をみつけて、もうすこし薄い新書あたりを読みたいと思ったが、ミサンドリー(男性憎悪、男性蔑視)と名づけられた本はこの本しかないから、読んでみることにした。

 90年代のポップカルチャーにあらわれるミサンドリーを研究した学術書だが、北米のポップカルチャー全般にくわしいわけでもないので、ついていけない議論が多かった。ストーリーを紹介してくれても、なぜか読みとりにくい。知っている映画でも、ストーリーが頭に入らない。せめて画像でも入れてくれれば、イメージはわいたかもしれない。

 文章も読みとりにくく、議論も頭に入りにくく、難解な部類ではないと思うが、議論の半分くらいしか読解できなかったかもしれない。まだミサンドリーの指摘には、距離をおいていることもあって、疑わしさも手伝ったかもしれない。

 世間は女性差別や地位の低さが糾弾される風潮があたりまえで、男性蔑視や男性憎悪が激しくなっているという目で見ることはなかなかできない。映画の『ドラゴン・タトゥーの女』はさすがにただの男性ヘイトだろ、ひどすぎるという感触をもったことはあるが、ミサンドリーの実感は私はもっていない。ただ、この本によってその指摘に警戒すること、視座をもちたいとは思った。

 この本では章ごとに男性ヘイトの激しい順にならべられているが、順番に笑われる男性、男性への見下し、無視される男性、責められる男性、男性の人間性の剥奪、男性の悪魔化と、段階づけられている。

 だんだんと知っている映画の分析も増えてきて、順番に軽いものから、ひどいものの章へとならべると次のようになる。『フライド・グリーン・ポテト』、『テルマ&ルイーズ』、『侍女の物語』、『ロング・ウォーク・ホーム』、『ミスター&ミセス・ブリッジ』、『幸せの向こう側』、『美女と野獣』、『羊たちの沈黙』、『愛がこわれるとき』、『死の接吻』、『ケープ・フィアー』とならぶ。こららの映画を、ミサンドリーという視座で見直すと、思い当たる節が出てくるかもしれない。

 私たちは女性が被害者であり、差別された弱者であるという目で見ているから、男性がバカにされていたり、悪魔化されていたとしても見過ごしてしまう。その事態がヘイトや男性レイシズムといった段階に進んでいたとしても、この登場人物はひどいやつだという個別化で流してしまうかもしれない。それほどまでにミサンドリーという視点は、私たちはもちえない。

 本書は2006年に出されて、日本で翻訳されたのは2016年だ。著者らはその後ミサンドリーの専門書を三冊ほど出して、邦訳はまだだ。ふたりは宗教学者なのだが、フェミニズムは宗教に近づいているということなのだろうか。ミサンドリーという警戒は、日本ではまだはじまってもおらず、女性の男性憎悪がひそかに煮えたぎっているのかもしれない。

 私もべつにミサンドリーに敏感だったわけでもないし、本書を読んでも読解力が足りないこともあって、強く警戒心を抱くにいたったわけではない。ミサンドリーの視座をもって、これから推移をみてみようという気持ちになった程度だ。

 一部のフェミニストたちがどうして異常ともいえる性嫌悪や性憎悪をもっているのかの疑問はもっているが、本書ではそのような解明はなかった。日本でもミサンドリーの研究や言及が増えていってほしいものだ。


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