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01 10
2019

書評 マンガ論、サブカル論

敗北感――『時間SFの文法』 浅見 克彦



 頭がパンクする本だった。いくつものタイムトラベル物語が並列的にならべられて、あらすじをつかむだけで精いっぱいで、要約や思考につかうリソースはもうないと敗北感を感じた。

 こういう物語のあらすじを同時に頭に入れておくことがかなり苦手な私は、あらすじ羅列的な記憶はどうやって維持できるんだろうと思うが、まあ私は記憶力のなさはよく痛感することなので、みなさんはもうすこし私より便利にこの本を使えるかもしれない。

 私はタイムトラベルものにかんして、どうしてそういう切ない気もちや空しい気もちを味わうかの感情的な理由を探りたいタイプで、この本は時間の整合的な理論をさがすような理系の本になるのでしょうね。世界線が違う世界はどのように並列してゆくのかといったことや、それは同時に並列しているのかといった理系の本。

 映画より、小説の概括が多い書である。私はほぼ映画でしか見ないので、タイムトラベルものの映画は好んでたくさん見てきたが、小説の多さは、とても私の把握するところではなかった。

 ジャンルの俯瞰、決定論的世界、ニヒリズム、物語論といったものが語られる。ほぼあの物語はどのようなあらすじかと羅列してゆくような本で、個別の物語を追ううちに、もう普遍や要約に削ぐ頭のリソースは残っていないたぐいの本だった。

 この本を読んでいて、私の大好きな『ぼくは明日、昨日の君とデートする』と同じストーリーではないかと思わず確かめた物語があった。梶尾真治の『時尼に関する覚書』という短編。ネットで調べるとちょっと元ネタとして噂になっていたようで、あの映画に感銘した自分としてはちょっとショック。

 まあ、私にはこの本はあらすじを追うだけで精いっぱいで、要約や批評ができる読み方はとてもできたものではなかった。もう頭が働かない。とくに感銘したり、インパクトをうける記述にも出会わなかった。

 この著者には、ほかにも『SFで自己を読む』や『SF映画とヒューマニティ』といった私の興味ある題材をまだ探究した本もあって、性懲りもなく読むかもしれない。タイムトラベルものの創作を書こうとする人にも、俯瞰に適した書物かも知れない。


SFで自己を読む: 『攻殻機動隊』『スカイ・クロラ』『イノセンス』 (青弓社ライブラリー)SF映画とヒューマニティ―サイボーグの腑愛する人を所有するということ (青弓社ライブラリー)時間ループ物語論美亜へ贈る真珠 〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)


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うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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