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2018

おすすめ本特選集

2018年、ことし読んでよかった本6冊

2018年のまとめ

 2018年の読書は、去年にひきつづき、神秘思想や仏教の本を読んでいました。去年から公共図書館を利用するようになり、専門書の読書がいつまでも尽きることはありませんが、ひとつの区切りをつけました。仕上げに書きおろしのKindle本を出版しました。これからひとつのテーマを深堀りしたら、一冊の本を仕上げに書き上げる目論見はもちたいと思ってます。

 それからいちおう神秘思想の探究はおあずけにして、テーマを決めずに手あたり次第、読書しています。お金がなければ古本の百円本しか買えなかったころと違って、図書館ではいくらでも専門書が読めます。いままで高くて手も出せなかった単行本がいくらでも読める僥倖を味わっています。バイクで1時間くらいかかりますから、中央図書館の近くにひっこしたいです。

 ことしは盆くらいに昼からの5時間労働に切りをつけて、それから失業中です。年内中に決めたかったのですが、この状態で年を超えることになりました。悩ましい。

 2018年はだいたい神秘思想を読んでいたのですが、過去に読んだ本以上の進展はあまりのぞめず、それ以外に読んでよかった本があったということになりますね。


2018年の読んでよかった本6冊


反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか
ジョセフ・ヒース アンドルー・ポター
エヌティティ出版 (2014-09-24)


 カウンターカルチャーや反権力はなぜちっとも世の中を変えられないのかずっと疑問でしたが、この本を読んでカラクリが目の覚めるように見えましたね。

 反逆というのはたんに、画一化や隷従したおまえたち大衆とちがうとなって、消費の差異化競争の原動力になるということですね。たんにファッション消費に呑みこまれてゆくだけ。反逆はポーズにしかならない。この反省を胸に刻んで、それに呑みこまれないようにどう振る舞えばいいのか、考える足がかりができました。





 ハイデガーの『存在と時間』を読んだ方はとても歯が立たなかったという人は多いと思いますが、なぜ読めないのかこの本はしっかりと教えてくれますね。

 私たちは自分の存在を「ないもの」とはとても思えませんね。これこのとおり身体があるじゃないかと反発するのがふつうです。でも時間に注目すると、過去の私はもう存在しませんし、この瞬間は刻々と奈落に消滅していきますね。私たちは瞬間に消えてゆく存在ですね。この実感をしっかりともつことによって、ハイデガーが読めるようになるといったのがこの本です。私たちは心や意識の持続性や実在性にどっぷりとひたっていますから、ハイデガーは遠いものなのでしょうね。あなたは自分が眠っているとき、自分の存在を確認することができますか?



嘔吐 新訳
嘔吐 新訳
posted with amazlet at 18.12.31
J‐P・サルトル
人文書院



 中島義道が、時間が「ないこと」をこれほど浮き彫りにした本はないと絶賛していましたが、上記の本と同様に、時間の非実在性の感覚をしっかりとつかまないと、なにをいっている本かまったくわからなくなるのでしょうね。

 サルトルは価値や意味のないむき出しの世界にニヒリズムの嘔吐を感じるのですが、神秘思想を読んだ私にはそれは同時に解放の瞬間であると見なした伝統があるのも知っています。ハイデガーはその指摘をサルトルに知らせようとした手紙は出されなかったようですが、このふたりの実存主義者はもしかして、神秘思想家でもあったのか私には思えます。

 西洋哲学は言葉を絶対に手放しませんが、時間の非実在性は、言葉の非実在性にも通じ、言葉を手放せない人にはその感覚はつかめえないのだろうなと思います。サルトルを神秘思想だといった声はあまり聞かないのですが。





 人生の大きな問いとして、自分はこの世の中になにか生きた証しを残せるかということは、だれしも気になることではないでしょうか。私は基本的にはなにも残さないでいい、なにも残せはしないという立場ですが、まあまったく振り切れたわけでもありません。

 この本ではユダヤ教ラビがこの問いに答えようとするわけですが、宗教の服従や禁欲はよいことなのかという現代的な問いもちゃんと発しています。とくに現代人は競争や自分の利益のために、孤独になる傾向がありますね。そういう人生への懐疑はとても心を打ちます。

 ユダヤ教の人生に対するとても懐疑的な聖典をもとに説かれていますから、宗教的な警戒心はそうもたないでいい本だと思います。人生は無意味で、束の間かもしれないが、消えゆくとしてもささやかなものを味わい喜べ、そういった立場のようです。



ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)
オマル・ハイヤーム
岩波書店



 11世紀のペルシア詩人の薄い本ですが、ここまで虚無主義をあけすけに語った詩は、もう笑うしかないですね。

 宇宙的スケールで、人生の無意味さ、無目的性を嘆く言葉が、こんなに語彙豊かに語られているとは思いませんでした。絶望をこえて、もう笑うしかない突き抜け具合。絶望の底には、大きな穴が開いていますね。もうなにもかも手放して、酒を飲むしかない。この詩は酒の宣伝かと思えるほど酒を讃える詩が出てきますが、中国詩にもそういうのがありましたね。





 そういえば、ドラマや映画に記憶喪失の物語がふえたなと思っていたのですが、なにを問われているのか言語化は、なかなかできがたいと思います。恋人の記憶が失われれば、私のなにが欠落し、私はなにゆえに悲しいのか。私たちは恋人の記憶になにを賭けているのか。

 記憶喪失のまとまった本は、私にはあまり見つけることができず、この本くらいしか見当たりません。この本はおもに20世紀くらいころからの記憶喪失物語をあつかっていて、なにもいまになって急にふえたわけではないことを教えてくれます。第一次世界大戦の戦争トラウマをきっかけに記憶喪失の物語は、フロイトの精神分析と絡めながら、つくられてゆくことになります。

 ただ、この本はデータベース的には強いですが、あまり解釈や読解には期待できない本なので、その作業はほかの人に任されることになりますね。

 私たちは思い出や記憶をとても大切にしますが、でも過去はもう地上のどこにも存在しなくなりますね。その存在しなくなったものをひじょうに愛するということは、一歩引いて考えれば、おかしなことではないでしょうか。この異化の目がほしいところです。





 以上で、ことし読んでよかった6冊の紹介は終わりです。

 ことしはKindleで二冊、自分の本を出しましたので、その本の紹介もおいておきます。

 『思考を捨てる安らかさ』は書きおろしです。私たちの言葉や心の認識のあやまちについて語っています。それを知ることが、永続的な心のコントロール法につながります。

 『労働と自由についての回顧録』はこのブログ上での労働論のまとめになっています。労働論の過去記事はそれにともなって削除しています。

 二冊の本をよろしくお願いします。







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プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

Kindle本、2冊発売中です。

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