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12 23
2018

書評 社会学

超おすすめ――『反逆の神話』 ヒース+ポター

反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか
ジョセフ・ヒース + アンドルー・ポター
エヌティティ出版 (2014-09-24)


 反権力や反権威、アナーキスト、左翼系の思想の人にはとくに、自己反省の意味で超おすすめします。

 私もカウンターカルチャーの時代に憧れて、いまの社会はどうしてこうおとなしくなり、反抗精神がなくなったのかと、ブラック企業の横暴にたいして思っていたから、反権力やアナーキーな思想にはとくに魅かれてきた。だけど、反逆や反抗がいっこうに効果をもたらすことはなく、しまいには反逆や反抗は「ファッション消費」でしかないのではないかと思うようになっていた。(「ケルアックはたんなる「ライフスタイル消費」なのか」)

 この本では見事にそのナゾを解いている。反大衆や反順応、反画一化がめざすものは、たえず差異化や優越化を志向して、けっきょくはそれは人と違う消費主義へと呑みこまれてゆくのだという逆説を、見事にあぶりだしている。反逆こそが、消費主義の原動力なのだ。

 「あんな従順で画一的なやつらにはなりたくない」という反抗心は、かれらと違う消費やライフスタイルをめざす原動力になる。大衆や画一から逃れよう逃れようとすれば、人とは違った消費スタイルを選ばざるをえなく、それこそ流行や流行り廃りをもたらす根底になるものだ。だから反抗がいっこうに世の中を変えず、ひたすら労働に呑みこまれる消費社会をつくってしまうのだ。

 ポール・ウィルスは似たようなことをいったのだが、学校社会への反抗がかれらを学歴落ちこぼれに追いこみ、だから労働者階級の固定化がおこってしまうのだといった。ポール・ウィルスは反逆に、下流化の固定をみたのだが、この本の著者のヒース+ポターは、差異化の消費主義の原動力をみた。私はこの著者の指摘のほうがよりしっくりくるのだが、カウンターカルチャーは下流化をもたらしたのか、それとも金持ち消費の上昇をもたらしたのか、どちらなのだろう?

 反逆は、抑圧の少ない異文化をもとめて、エキゾチシズムに希望をみいだす方向に流れがちで、観光や精神世界において東洋や禅が西洋に流入した理由もそこにあると著者はいう。ルソー以来の「自然の楽園」は外国にみいだされることになり、順応や画一にはなびかないオレたちはほかのやつらと違うといって、外国に優越をみいだす戦略がずっとくりひろげられることになる。医療においても代替医療や東洋医療がもとめられ、「わたしたちはやつらと違う」運動はたえずくりひろげられて、体制医療との軋轢をもたらす。

 ちょっとこの本は早口で論理が飛んだ文脈をまくしたてるのか、よくわからなくなるところもあるのだが、人間は優越や卓越をたえず競争する存在なのだと軸をしっかりとつかむべき本なのだろう。そのヒエラルキー競争こそが、終わりなき消費主義をもたらす。わたしたちはだれかの生き方やあり方を批判し、やつらのようになりたくはないといって、オルタナティブな消費をずっとくりかえすことになる。カウンターカルチャーはそうやってずっと消費の差異化の原動力になってきたのではないのか。

 あなたがなにをやろうが、自己の優越化の競争にとりこまれてしまい、消費運動のひとつの奔流として呑みこまれる宿命なのである。あんなやつらにはなりたくない、ダサい、カッコ悪い、下層だという批判が、消費や優越化の競争の発火装置になってしまうのである。あなたはなにをやっても、呑みこまれる。他人と違おうとすることが、消費社会の原動力にほかならないのだから。そうして流行や新しい技術の開発はつづいてゆく。人間たるわれわれの限界を見るようだ。

 大衆社会批判こそが、消費主義の原動力となってきたのである。下層や落ちこぼれを恐れる気持ちも、もちろん消費主義の競争に呑みこまれる原動力となってゆく。人には負けたくない、人より勝ちたい、世の中の役に立ちたいという自我の欲求は、この社会の消費システムと分かちがたくドッキングしている。そういった原初的な欲求を抜き去って、われわれは消費主義をやめることができるのだろうか。みんなが悟って、比較や競争をしなくなるような人間社会が到来することは、とうてい望めそうもない。

 この本を読み終えてできることはせいぜい、人と違おうとすることこそが消費主義をもたらすという逆説にたいしての繊細な反省をたえず思い返すくらいなのだろう。反逆や反抗がなにをもたらすのか、そのくりかえしの反省を忘れないでいることくらいしかできない。なにをやっても、優越化や地位の競争を、人間は避け得ることはできないのだ。

 あと、反抗やアナーキーの先に抑圧なき社会がたとえ訪れようとしようと、ルールや規範なき社会は、人間には可能なのかという反省を忘れてはならない気にさせられた。反抗的な人間は破壊や撤廃だけをのぞむが、そのあとに秩序ある人間社会は可能なのか。自由をもとめて女性はかえって守られるべき紐帯を打ち壊したという逆説も指摘されているが、自由はほかのなにかから守られない弱さもむき出しにしてしまうかもしれないのである。多数者や権力者に順応することは人間のなにを守ってきたのか、こちらの評価も忘れてはならない気にもさせられた。

 ある意味、保守主義的な批判や反省にもつながってくるのだが、この本は左翼への批判とも活用される本なのでしょうね。左翼の欠点や自己反省の書である。もっと類書は出てないかな。


資本主義が嫌いな人のための経済学ルールに従う―社会科学の規範理論序説 (叢書《制度を考える》)ハマータウンの野郎ども (ちくま学芸文庫)ブランドなんか、いらないヒップ アメリカにおけるかっこよさの系譜学 (P‐Vine BOOKs)


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Comment

面白かった

これはもう何年も前に読みました。
ナオミ・クラインへの批判は、なるほどと思いました。
Twitterではめいろまさんがおっしゃっていますが、ヒッピーも本人はともかく実家や友だちが裕福で堅実な生き方をしていて信用があったり、才能豊かだったりする。
で、その支えがあって、コミュニティを作ったり、自然食レストランを開業したり、ビル一軒も手に入れたりしている。
全共闘もSEALDsもお金持ち中心ですよね。
貧困だったら、都市のサブカルもカウンターカルチャーもチェックしていられない。
バックパッカーの日本侮辱も、自分を思うように厚遇しない日本と自分達以外への見下し意識が強いのはデフォです。
スピリチュアルも、元のいい意味は人生や世界について、宇宙とはと思索する内向的なものなのに、何からも自由、というよりも放縦なとイメージされる。
日本だと地域や世代にもよりますが、自我や自立が大事にされていないため、ただの現実逃避、想像的勝利法、幼児退行、「思考は実現化する」といった自己啓発の盲信等とミックスして、おかしなことになっているようです。
一部には、詐欺的な精神世界マーケットもありますし、カルト化する団体も。自己啓発セミナーも欺瞞的だし、営業・勧誘が強引・横暴、時には犯罪か犯罪スレスレです。
この間もある社長の家のバックパッカーと話を一緒に食事する機会がありました。苦労しないで出世したい意識や、旧第三世界へ行って、宗主国気分を味わっているようで、あまりいい気持ちはしなかったですね。
スペイン語会話もひけらかしめいていて、日本語の会話の幼さからすると、大したことは言っていないのも分かりますし。
喘息の発作みたいなきつい病気まで、自然、ハーブティー、なるべくおくすりを使わないで治した方がいいとか言って、ラテンアメリカ圏から連れかえった妻とまだ幼い娘にに負担・苦痛を与えていましたね。
ああ言うタイプは、このくらいのエッセイ本も普段読まないし、たぶん読めないだろう。もし読んでも、否認したり、適当に口先だけで話しを合わせて空気の読める様をアピールしておしまい。
ごまかしは、喘息の子どもへの「一緒に旅行したいんだよな」という、一見和やかそうな誘導尋問で欺瞞とわかった。
この「反逆の神話」に批判的に紹介されているカウンターカルチャーの薄っぺらさ、虚業めいた金持ちの道楽、どうなんでしょう。
スピリチュアルなり反ブランド運動なり、反対性の運動の中でも質の悪いものを偏って取り上げていないかしら。
だけど、この間、読んだ雨宮処凛と上野千鶴子の対談にの新書を見ても、雨宮の「世代」か、せいぜいシスヘテロジェンダーの中の性のみにこだわり、それ以外の職種差、階層差、地方間格差、都市と田舎と郊外の格差を度外視する、さらに自意識的に自分たちは最先端の議論をやっているのに、ついてこれないおじさんたちがいけないと非難する様には、予想通りとはいえ呆れましたね。
消費主義の中で消費者の女王になって成功したのが、元ホステスという虚業出身の雨宮処凛です。
実際以上に自身の窮状を大げさに訴え、ジャーナリズムで成功して東大教員、さらに規則を特例でねじ曲げさせて名誉教授という虚しい称号を手に入れたのが上野千鶴子です。
彼女も以前、広告代理店におり、教育は東大の次のランクのある大学で博士号持ち。教育消費でも上の世代の女性の割には大量消費しています。
こう言うのも、消費主義の中で、問題解決に寄与しないで終わるんでしょうね。


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うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

Kindle本、2冊発売中です。

 

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