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11 20
2018

書評 労働・フリーター・ニート

労働法から――『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』 今野 晴貴



 今野晴貴氏には日本の労働環境とこれからもしっかりと闘っていただきたいのだが、本の評価としては、あまり満足なものではなかったかな。タイトルの疑問は共感するのだが、これを問うてもその解決が見込めない読後感がのこったかな。

 タイトルの答えには社会権力的な構造を期待したのだが、本はほとんど労働法からの報告で、また歴史社会的な説明にも、そんな風に割り切れるのかという疑問が噴出した。

 氏は権利は主張しなければ守られないというのだけど、われわれは労働現場ではなんの批判もおこなえない圧力や慣習に呑みこまれる。この圧倒的な無力感――それこそアガンベンのいうような「むき出しの生」のような無権利状態におかれている感がするのだが、その圧倒的無力感にたいして、解明ではなく、権利を主張しろという言明はあまりにも酷だ。

 学校教育でえらいもの、目上の者には絶対に従えと骨の髄まで叩きこまれるのか、またお上は黙って我慢しておればいずれ報いてくれるという信仰でもあるのか、われわれは職場においては、徹底的な不可抗力な力に呑みこまれる。

 ひところ企業は終身雇用や社会保障などで温情的労働条件が期待できたのだが、その期待関係の中で、どんどん労働条件が切り崩されていって、権力が剥奪されたまま、経営側にいいように雇用環境の切り下げが一方的におこなわれるようなかたちになっている。いちど丸腰になってしまって、刃向かう存在でなくなったところに、一方的な労働条件の悪化ばかりを許すようになってしまっている。

 この労働状況の無力化、無権利化はどうしておこってしまったのか、その解明ができれば、その対処もわかるように思うのだが、労働関係はポンと押せば、ポンと結果が変わるような単純なものではないようだ。われわれはいったいどうすれば、企業にたいしてものをいえる対等な立場に立てるようになるのだろうか。

 日本の労働者はなぜこんなに無権力や無権利状態におかれているのだろうか。答えは同時に解決の道筋をしめすものではなくてはならないが、いくら答えが導かれても、その道にはたどりつけたことはないのである。

 経営と政治が手をつないでみずからの有利さを協同するこの国では、労働法もろくに守られない罰せられない労働社会がいつまでもつづいてゆくばかりだ。放っておいたら助けてくれる国ではないのだ。著者のいうとおり、権利を主張してゆくしかないのだ。



ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)ブラック企業のない社会へ――教育・福祉・医療・企業にできること (岩波ブックレット)会社で起きている事の7割は法律違反 (朝日新書)働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち (講談社現代新書)


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世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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