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10 20
2018

幻想現実論再読

比較宗教学として――『神秘主義』 ジェフリー・パリンダー

神秘主義 (講談社学術文庫)
ジェフリー パリンダー
講談社


 比較宗教学者によって書かれた、世界の幅広い神秘主義について語られた本である。95年出版であるから、6、70年代のカウンターカルチャーの時代のものではない。

 客観的・歴史的に書かれた宗教学の本というのは、たいがいは内実や主観がうまく伝えられなくて、なにも学べないと個人的には思うことが多い。歴史や思想のちがいを語られても、理解したい内実の世界とは、ちがうのである。この本はだいぶ主観的な思想に迫っているほうだが、これをもっと深く知りたいとか、この本を読みたいという導き手にはならなかった。

 神秘思想の理解には、アン・バンクロフトの『20世紀の神秘思想家たち』がとても優れた入門書になるだろう。この人たちの思想や本をもっと知りたいと思わせる紹介に満ちあふれている。本書はそういう本の部類ではなかった。

 神秘主義的一元論と、神秘主義的有神論に、章を分けたのはいいと思う。神秘主義者の中には神を説かない人たちも多くいたが、仏教などは無神論だし、老荘もタオ・道を説いている。ブラフマンは神なのか。もっとも神とか、他の名でよぶにしても、境界は侵犯されることが多く、あいまいになりがちで、どっちなのかと混乱することが多い。

 この神秘主義を紹介した本で、神道やシャーマンも入れたのは、違和感があった。神道はアニミズムや自然汎神論なのであって、神秘主義的な合一をめざした宗教だったのだろうか。自然汎神論には章をもうけているが、エリアーデのアニミズムにくわしいわけではない。シャーマンは合一というより、憑依ではなかったのか。ムハンマドはシャーマン的宗教である。

 イギリスの比較宗教の本だから、東洋宗教やインド哲学に多くウェイトがおかれることにとうぜんなる。キリスト教では、エックハルトなどの神秘思想家もいたのだが、キリスト教では神秘的合一は異端であることが主流なのであって、神や唯一者との合一という思想は、ほかからの知見を頼むことになる。それが東洋宗教である。

 神秘主義という言葉は、不可知論や蒙昧という意味でつかわれることが多い。主知主義の西欧からすれば、ぞっとするものである。だが、根底にはあるものは、言語の否定と不信であり、言語が幻想の世界をつくってしまうことの警戒がある。その前提を理解しない神秘主義への無理解があまりにも多いのである。この言語不信という大前提をおかない理解には、無神論者、有神論者ともに、信頼にあたいするものをもたないだろう。


20世紀の神秘思想家たち―アイデンティティの探求 (Mind books)神秘主義 (文庫クセジュ 252)神秘主義と論理意識の進化と神秘主義神秘主義事典


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うえしんさんの労働論のkindle 読ませていただきました。日本の労働の在り方、価値観の変遷などとても面白かったです。うえしんさんにティール組織の本おすすめしたいです。ケンウィルバーの思想かわうまく組織論なり労働論が組み合わされて非常に面白く、うえしんさんの労働論考察にもさらなる深みが生まれると思われます。
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プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

Kindle本、2冊発売中です。

 

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