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10 16
2018

幻想現実論再読

虚無主義に笑うしかない――『ルバイヤート』 オマル・ハイヤーム

ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)
オマル・ハイヤーム
岩波書店


ルバイヤート
ルバイヤート
posted with amazlet at 18.10.16
(2012-09-27)


 たまたま古本祭りで、「なんの本なんだろう」と手にとったら、最高ですね。

 人生の無意味さ、虚無主義を、直接に、あけすけに語っていて、もう笑うしかない。宇宙的スケールでの人生の無意味さ、はかなさ、ムダに帰す嘆きがずっとつづられていて、短い詩だけど、ここまで語った人がいたのかと感服。

 もっともオマル・ハイヤームは11世紀のペルシアの詩人であって、わたしが知らなかっただけ。

 ヨーロッパでもエドワード・フィッツジェラルドが自費出版で出版したが、売れず、ようやくラファエル前派の詩人たちによって注目されたというエピソードが、まえがきに書かれている。このフィッツジェラルドは、あのアメリカのスコット・フィッツジェラルドではない。

もともと無理やりつれ出された世界なんだ
生きてなやみのほか得るところがあったか?
今は、何のために来たり住みそして去るのやら
わかりもしないで、しぶしぶ世を去るのだ!

自分が来て宇宙になんの益があったか?
また行けばとて格別変化があったか?
いったい何のためにこうして来たり去るのか、
この耳に説きあかしてくれた人があったか?



 ただ、この世界につれ出されて、意味もわからず、またそのままでこの世界を去る。人生の無意味さ、わからなさが、短い詩だけど、語られていて、共感の思いにつつまれる。

 母から生まれなかったほうがよかったとも嘆く。どうせなにも残せないなら。なぜ連れて来たのか、それすらもだれも答えてくれない。

 この世の真相もわからず、影のような人生も、水の泡のようにあっという間だ。オマル・ハイヤームは学者であったというから、真相を究明しようとした人生の焦燥もふくまれるのだろう。

九重の空のひろがりは虚無だ!
地の上の形もすべて虚無だ!
たのしもうよ、生滅の宿にいる身だ、
ああ、一瞬のこの命とて虚無だ!

戸惑うわれらをのせてはめぐる宇宙は、
たとえてみれば幻の走馬燈だ。
日の燈火を中にしてめぐるは空の舞台
われらはその上を走りすぎる影絵だ



 短い詩だから、このような引用に出会うより、本書で直接にあたってほしいので、引用は少なめにしたほうがいいのだろう。

 ただただ、人生の無意味さ、わからなさ、はかなさに共感するしかないのだが、このような嘆きを読むことにどんな効用があるのだろうと思う。

 「メメント・モリ」――死を思えのような効用があるのだろうか。オマル・ハイヤームは酒をのんでたのしめと、これは酒の広告なのかと思うほど、酒をすすめるし、一瞬を生きろともいう。刹那主義や享楽主義に傾いている。

 現世を否定して、宗教に望みを託せというわけでもなく、地獄や天国から帰ってきた人はひとりでもいるのかと問う。ひじょうに唯物論的であって、現代人の感覚に近いといえる。唯物論では、この人生のはかなさを嘆くしかないのである。

 この自虐的な嘆きに笑うしかないのだが、これが効用かもしれないなと思う。言葉や思念で嘆くことの無意味さに、また連れ出してくれる。もう嘆いても仕方がない。思っても、考えても仕方がない。そういう境地に運んでくれるのではないかと思う。

 それは瞑想の境地に近いものだ。言葉や思念の力を信用せず、いっさい捨てさせる。ただ「あるがまま」に身を添えるように、たんたんと過ごしてゆく。嘆きは嘆きを継続させるのではなく、嘆きを浄化させる。言葉や思念の消えたところに、もはや嘆きも悲しみもない。この『ルバイヤート』はそういう境地に連れていってくれるのかもしれない。


ルバーイヤート (平凡社ライブラリー679)ルバイヤートの謎 ペルシア詩が誘う考古の世界 (集英社新書)アラブ飲酒詩選 (岩波文庫)サマルカンド年代記―『ルバイヤート』秘本を求めて (ちくま学芸文庫)ルバイヤート集成


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