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06 02
2018

幻想現実論再読

テキスト解釈な本――『無心のダイナミズム』 西平 直

4000291203無心のダイナミズム
――「しなやかさ」の系譜 (岩波現代全書)

西平 直
岩波書店 2014-01-18

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 無心について、これまで語られてきた系譜を集めた本になるのだけど、実感体験的なものを語れているのではなく、テキストを解釈するような本になっているので、体得的なものを得られるような本ではないと感じられた。

 無心を語った人たち――鈴木大拙、井筒俊彦、世阿弥、沢庵、石田梅岩の各テキストを読みこんでいるのだから、かなりバラエティーはあるが、心に刺さってくるようなことはなかった。

 著者の西平直という人がどういう人なのかわからない。『魂のライフサイクル――ユング・ウィルバー・シュタイナー』や『シュタイナー入門』という本も出しているし、エリク・エリクソンの本も訳している。教育人間学やライフサイクル研究をやっている人だそうだ。この本から感じられたことは、言語・テキスト解釈派であって、実感、体感をたいせつにしている人ではないということだ。禅に接近しながら、言語を重視している人だ。

 沢庵の『不動智神妙録』には、心をどこかにおけば、心をとられる、心におきどころはないということがいわれている。現代では、鎌田茂雄の紹介で読むことができる。意識が捉われることを防ぐことはかなりむづかしい。その捉われがついえ去ったところに、全体に生き生きと目配りのできる柔軟な心が生まれる。無心はぎゃくに凝り固まった心ではないものが、生き生きとはたらき出すことだ。

 石田梅岩の無心は、天分にしたがって、その職分をまっとうするという今日では反発される権力正当化の思想が語られる。仏教や宗教の嫌悪感というのは、だいたいはこの政治思想に極まるのではないだろうか。無心は、権力への服従だ。無心への警戒心が全開になるような思想の典型を、石田梅岩は語っていた。

 無心は、子どもの無心に帰ることだと宗教ではよくいわれるのだが、それは無知や痴呆とどう違うのか疑問に思うことを、鈴木大拙は答えていた。子どもの無心は、動物的な本能であって、いちど有心をへた大人の無心は、ふたたび有心を抱えることができる。特殊な二重性だ。ただ有心や有我にはとらわれない。この回答は大事だと思う。


無心ということ (角川ソフィア文庫)こころの達人―生きる意味を問い、語りかける達人たちのメッセージ (NHKライブラリー)沢庵 不動智神妙録 (タチバナ教養文庫 30)石田梅岩『都鄙問答』 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ14)魂のライフサイクル―ユング・ウィルバー・シュタイナー


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