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04 06
2018

幻想現実論再読

共同幻想論の社会学版――『あなたへの社会構成主義』 ケネス・J ・ガーゲン

4888489157あなたへの社会構成主義
ケネス・J. ガーゲン
Kenneth J. Gergen
ナカニシヤ出版 2004-11

by G-Tools


 共同幻想論にずっとこだわってきたのだが、社会学にひとつの学問として成立していたことをはじめて知る。

 社会構成主義は、「言語が現実をつくる」や「意味や現実は社会的構成である」といった説をとなえている。わたしはこれを自己啓発の「思考は現実ではない」というウェイン・ダイアーの言葉で知って、ずいぶんと格闘したわけだが、社会構成主義というのは、その社会学版である。

 この本は著者のケネス・ガーゲンが一般向けにやさしく社会構成主義を説明した本で、入門書として書かれたものだ。

 科学の真理や事実の写し絵理論のようなパラダイムが近代をおおっていたわけだが、社会構成主義は、それらもふくめて、言語が現実をつくるという相で捉える。真理のような客観的な世界観は消え去って、ただ言語がどのような現実をつくりだしているのかだけが問題になる。それは客観や事実ではなくて、言語で構成されたものだ。真理という覆いをとりはらわれれば、絶対的な真理の機制もその力を失う。

 ポストモダン思想が、この社会構成主義に結実したといえるのかもしれない。客観的世界を( )に入れるのは、フッサールの現象学からもおこなわれている。

 はじめて知ったといったが、共同幻想論を探っているころ、シュッツの現象学的社会学やガーフィンケルのエスノメソドロジー、廣松渉の世界の共同主観的存在構造や、ゴフマンの演技論的自己呈示などの本はよく読んでいたので、源流は知らなかったわけではない。マンハイムの知識社会学、クーンの科学革命、フーコーの権力論も、そのパラダイムにふくまれる。

 わたしは自己啓発の思考は現実ではないという言葉を契機に、トランスパーソナル心理学や仏教、神秘思想に、日常や通常の意識においての幻想やフィクションとしての考察にうつっていった。だから、社会構成主義はいかにも歯がゆい。言語で現実や社会構成を守ろうという防波堤の意識が強く、禅のような言語否定にはまったく踏みとどまる。

 言語が現実をつくるのなら、それはフィクションや虚妄であって、そんなものは存在しない砂上の楼閣だ、捨て去ってしまえというのが、禅や神秘思想の立場である。

 社会構成主義は、あくまでも言語が現実をつくるのなら、その考えを書き換えようという思想に収まる。まだ未読なのであるが、社会構成主義から発展したといわれるナラティヴ・セラピーもその立場を出ていないようなので、いかにも歯がゆい。

 社会制度としての言語をあくまでも死守しようとするのが、社会構成主義である。これには言語を捨てれば、無知や狂気におちいり、文明を捨て去るという禁忌が強く働いているからだろうか。

 禅や神秘視思想では、自我を捨て去れというわけだから、盲従や隷従への恐れも強い。仏教や神秘思想は、言語がマヤカシや虚偽の世界をつくるのであって、そんな夢から立ち去れといわれるのだが、言葉が現実をつくるという出発点が同じであっても、その帰結と方法は、社会構成主義やナラティヴ・セラピーとずいぶんちがう。

 わたしはもう禅や神秘思想の説に感銘しているので、社会構成主義もナラティヴ・セラピーも肩入れるするほど乗りこめない気がする。現代社会学や現代心理学がなにを語っているのか、参考や参照の域を出ないかもしれない。でももうすこし社会構成主義が共同幻想論をどう語っているのか見ないわけにはいかない。

 西欧というのは、言語をぜったいに手放そうとしない社会なんだなとあらためて思う。インドやアジアはずいぶんと言語の放棄はおこなってきた。言語は理性の砦であって、文明の閾だという禁忌が強いのでしょうね。ために言語がいかに砂上の楼閣をつくってきたという反省がうながされない。それは物質文明の砦でもあるのでしょうね。


社会構成主義の理論と実践―関係性が現実をつくる心理学とポストモダニズム―社会構成主義とナラティヴ・セラピーの研究現実の社会的構成―知識社会学論考ナラティヴ・セラピー──社会構成主義の実践生活世界の構造 (ちくま学芸文庫)


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うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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