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03 29
2018

幻想現実論再読

むづかしさの理由――『生の全体性』 J. クリシュナムルティ

4892031038生の全体性
J. クリシュナムルティ
デヴィット・シャインバーグ  デヴィッド・ボーム
平河出版社 1986-02-01

by G-Tools


 ごぶさたしております。本を書くことに時間を使いたいので、読書もブログも二の次になっております。原稿用紙240枚書き上げましたが、書くたびに煮詰まることが多く、けっこうむづかしいんだなと思っております。人に自分の考えを説明するために、どの要素を出してくるかというひっぱりだす能力の不足を感じております。

 クリシュナムルティの『生の全体性』は、クリシュナムルティとはじめて出会った本です。独特の語法や言葉使いでずいぶん面喰う本だと思います。ずいぶん久しぶりに読み返しました。

 「悲しみは、時間と思考の結果である」とか、「観察者と観察されるものとの分裂は、葛藤のもとである」といった言葉は、読んだことのない人にはなにをいっているかわからない類の文章だと思います。

 この本の半分は対談集です。量子力学者のデヴィッド・ボームと精神分析医のデヴィット・シャインバーグとの対談です。この対談集はずいぶんクリシュナムルティの強引なところがめだち、あまり好きではないのですが、後半の講和をあつめた第Ⅱ部がすばらしいと思います。

 ひじょうに心理学的洞察に満ちていると思うのですが、宗教書と思われるのが残念です。

 クリシュナムルティの言葉がむづかしいのは、言語や思考の根底を話すことにそのむづかしさの要因があるのだと思います。言葉で語れない領域を、言葉で語ろうとしたむづかしさだと思います。目を近づけすぎて、見えない状態に似ていると思うのですが、禅なんかではもう語ろうとしなかった領域を、言語で明晰に語ろうと努力したのが、クリシュナムルティだと思います。

 「なせなら思考は、記憶、経験、知識の生み出したものであり、つねに過去から生じるものであり、したがって時間に制限されたものだからである」

 時間という定義を飛ばして語っているので、独特のわかりにくい文章になっていると思います。

 「恐怖は、思考の運動である。量、測定としての思考の──。恐怖は時間である。思考は記憶、知識、経験からくる反応である。それは限られている。それは時間の運動である。もし時間がなければ、恐怖はない。私は、いま生きているが、死ぬかもしれないと恐れている。私はそのうちに死ぬかもしれない──。思考によって生み出された時間の感覚がある。しかし、もしまったく時間の間隔がないなら、恐怖はいっさいない」

 これはけっきょくは、想像したものは存在しないといっているわけですが、言語や感情が想像したものから生み出されているという方面から語っていないことが、わかりにくくしているのかなと思います。想像力や空想、あるいは心象という物体でないものを、現実にあると思う勘違いが、わたしたちには根差していて、その自覚がないところに、言葉や感情の実在視がおこります。

 想像力や言語が実在しないという一点から語りはじめれば、理解の助けになったかもしれません。わたしたちは、想像力の力を軽視しすぎていて、想像力が現実と思われるわたしたちの認識に、あまりにも無自覚です。

 クリシュナムルティは、これまで開拓されていなかった領域を、独自に自分の考察で切り開いたために、独特の言葉使いになっているのだと思います。禅や仏教も語ってこなかった詳細な領域だと思います。言語での明晰化をめざしたために、人に通じにくい文章になっているのだと思います。

 ほかの領域からの理解も必要になると思うのですが、わたしはそれは想像力の範囲やカテゴリーをもっと広げることや、言語や過去が実在しないという考察を深めることに、その理解の穴があると思っています。

 クリシュナムルティは宗教者というより、心理学者だとも思っています。言語や思考が立ち上がる繊細な根源に立ち向かった心理学者だと思います。まだ読まれていない方は、ぜひクリシュナムルティの著作に当たって、面喰ってほしいと思います。


既知からの自由最初で最後の自由(覚醒ブックス)恐怖なしに生きる時間の終焉―J.クリシュナムルティ&デヴィッド・ボーム対話集全体性と内蔵秩序


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プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

初のKindleセルフ本、発売中。他人に感情を振り回されてばかりいる人、過去を後悔してばかりいる人、必読。長年の習慣から解放される心理セラピー。



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