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01 06
2018

幻想現実論再読

読みとりにくい大部の書――『意識の起源史』 エーリッヒ・ノイマン

4314010126意識の起源史
エーリッヒ・ノイマン Erich Neumann
紀伊國屋書店 2006-10-01

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 2018年の初記事です。本年もよろしくお願いします。

 600ページの大部で、がっしりした本で、とても権威を感じる本なのだが、残念ながらわたしには読みとりにくい書物であって、苦行に近いあまり得ることのない読書になってしまった。

 人類の無意識状態から自我を生まれる過程を、神話の太母や竜の状態から英雄神話によって自我が形成されてゆく様をたどった壮大な研究といえるのだが、なんかひじょうに捉えにくい書物なんだな。文章が難解というわけではないのだが、シンボルやイメージを捉えるといった象徴を読みとる作業が、自分の中ではよく働かなかったのかな。

 神話はおもにエジプトやメソポタミア、ギリシャの神話をあつかっているのだが、わたしは太陽信仰や豊穣神話、死と再生の世界観に興味をもっていたので、この角度からも神話を読みとりたい気持ちがあった。いま追求している神秘思想からも、自我の形成史には興味がある。だけど、有意なつながりをうまく見いだせなかった。

 太古の無意識状態を、ウロボロスやプレローマという言葉であらわすのだが、この言葉でケン・ウィルバーの『意識のスペクトル』、『無境界』を思い出したのだが、ウィルバーはきっとこのノイマンの本を念頭においていたのでしょうね。

 英雄というのは太母や竜を殺して、無意識的な状態から自我を生み出し、呑みこもうとする母を殺し、文化規範としての象徴としての父を殺し、自我を打ち立ててゆく。人類の自我の形成史は、そのまま個人の自我の発達史も重なる。

 エリアーデの神話解釈によると、古代神話は冬の死と春の再生をかたどった物語となるのだろうけど、ノイマンは死と再生のテーマを、自我の発達史にどう読みとったのか、わたしの読解力ではよくわからなかった。

 神秘思想は、自我を形成した後にふたたび母性的な無意識に戻ることを意図する思想だと思うのだが、ノイマンはその発達をよしとしたのだろうか。そういった無意識的全体性は、集団や国家ファシズムに呑みこまれて、危険な歴史をなんども見せてきたのだが、その呑みこまれを神秘思想は、回避する道を見いだしてきたのだろうか。まあ、残念ながらこの本からわたしは読みとれない。

 意識の起源史として、似たような本としてジュリアン・ジェインズの『神々の沈黙』とカップリングで読む形になったのだが、おもしろみという点では、だんぜん『神々の沈黙』に軍配が上がる。まだ『意識の起源史』を読まれていない方はご注意を。

 なお、この本は5,700円もする高い本なので、読むことをためらってきたのだが、図書館で無料で読めたので図書館様々である。本棚のハクづけには残しておきたい書物なのだが、そんな効用は自分の養分にはひとつもならない。


芸術と創造的無意識 (ユング心理学選書 (6))深層心理学と新しい倫理―悪を超える試みユング自伝 1―思い出・夢・思想神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡無境界―自己成長のセラピー論


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