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08 28
2005

書評 小説

『肩ごしの恋人』 唯川 恵


4838712987肩ごしの恋人
唯川 恵
マガジンハウス 2001-09

by G-Tools

 唯川恵というのは女のVSを描く作家だと思う。生き方や性格の違う女性を対立項として登場させるのである。いうなれば選択の迷いである。あれもこれもなれたかもしれない女性の選択の可能性を何パターンも比較しているのである。

 この作品で比較されているのは結婚を何度もする女と結婚したくない女、または女を武器にする女と、女であることを弱点と思う女である。こういう比較をすることによって女性の選択の良否を探ってゆくのが唯川恵の作品の特徴だと思う。

 唯川恵はほかのさいきんの女性作家とくらべて安心して読むことができる。ふつうに楽しい。じつにフツーっぽい等身大のOLや女性たちが主人公なので身近に感じることができる。ふつうすぎるから直木賞には値しないとかもいわれるかもしれないが、ふつうだからこそ、そんなことも関係なしに読者には読まれる作家なのだと思う。恋愛や人間の観察眼にもためになることもあるし。

 作品を読んでいるときにいつも気になるのは唯川恵本人の幸福や状況のことである。いろいろな女性の陰には唯川恵自身の幸福観や選択の迷いが透けて見えるように思うのだ。作品の登場人物より、唯川恵本人は幸福なのかどうかばかりが気になるのである。

 選択の迷いをつむぎ出しつづけるこの女性作家はいまも選択の分かれ道でとまどっているように思えるのである。それはおそらく選択が無限に楽しめる消費社会の、けれども人生は何度も選択できないという矛盾の中に、多くの人がおかれていることと重なり合うのだろう。

 「カネでモノは買えても、人生は買えないのである。」


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プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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