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2017

幻想現実論再読

永遠の名著――『世界の名著〈4〉 老子・荘子』  中公バックス版

rousisousi.png世界の名著〈4〉 老子・荘子
1978年  (中公バックス)

中央公論社 1978-07

by G-Tools


 老荘はいちどは読まれることを、絶対におすすめしますね。

 天地のスケールでものごとを見て、人間の狭い価値観を抜け出る。人より勝ったり、優れたり、欲望を満たすことしか教えられない社会で、逆説的にその愚かさを教えてくれる人なんて、めったにいないからね。

 この中公バックス版は、老子と荘子双方読めるお得版なのだが、絶版のようなので、残念。

 わたしはとくに荘子のほうが役にたつと思うのだが、老子は思想を語るには短すぎるし、荘子は専門用語や難しい言葉をほとんど使わず、たとえ話で終始言い聞かせようとしていて、わかりやすいのである。しかも、これが紀元前の教えなんだよね。

 老荘は、言葉や人間の限界を知って、天地のスケールから見た人間の価値の狭さを説く。知識や財貨、名声だって、批判の対象になる。人間は人間の小さく狭い立場を守って、運命をうけいれるべきだ。ある意味、無力や悲観にも見えるかもしれないが、人間の天分をわきまえない抵抗のほうが愚かだ。

 わたしは荘子の斉物論篇がいちばん好きだ。老荘の真骨頂はここにあると思う。そして、仏教でわからない部分も、荘子によって補われると思う。

 

「これらの対立差別は、人間の知恵がつくり出したものであり、自然の道からみれば、すべて一つなのである。
この自然の道の立場からみれば、分散し消滅することは、そのまま生成することであり、生成することは、またそのまま死滅することでもある。すべてのものは、生成と死滅との差別なく、すべて一つである。
ただ道に達したものだけが、すべてが通じて一であることを知る。だから達人は分別の知恵を用いないで、すべてを自然のはたらきのままにまかせるのである」



 天のスケールから見て、人間の違いや優劣、価値観などなんになろう? われわれはいつも、人間の小さなスケールでしか物事を見ないことに気づく。

「およそ、道というものは、最初から限界のないもの、限定できないものである。ところが、これをいいあらわすことばというものは、対立差別のあいだを往来して、絶えずゆれ動くものである。このために、ことばによって表現されるものには、限界があり、対立差別があることになる」



 言葉の限界を知ることもひじょうに重要だと思う。言葉や知性の可能性や優秀性ばかり教えられ、われわれはその限界や過ちを聞くこともない。老荘や仏教は、この愚かさや間違いをずっと説いてきたのである。

 また、人間の優越や世情の批判も、しっかりと聞いておきたいところだ。

「徳は名誉心に向かって流れやすく、知は競争心から生まれ出るものだ。名誉欲はたがいを傷つけあるもとになるものであり、知恵は争いの道具になるものだ。だから、この二つのものは凶器である。人間の行いを完成させるようなものでは決してない」



 優れたり、認めらられたりといった欲求が人間にはとりわけ大きいが、荘子はそれも戒める。

「富をよしとして追求するものは、自分の財産を人にゆずることができず、高い地位にあることをよしとするものは、人に名誉をゆずることができず、権力を愛するものは、人に権力の座を与えることができない。これらのものを手にしているときは、失うことを恐れて震えおののき、反対にこれを失えば嘆き悲しむ。しかも、このあわれむべき状態を反省することもなく、休むひまもない営みに目を奪われているものは、天から刑罰を受けてとらわれの身になっている人間だというほかない」



 いい言葉がたくさんありすぎて引用ばかりになって、とりとめもなくなるので、ぜひみなさんも老荘の書物に当たってほしいと思う。そのすばらしさを、短い文章であますことなく、つたえることはできない。

「「虚心のままに静かであること、無欲で心安らかであること、虚無のうちに無為を守ることこそ、天地の平安の道にかない、道徳の本心を得たものである」

無心にいこえば、心は安らかに楽しく、安らかに楽しければ、虚心のままに静かとなる。心安らかに楽しく、虚心のままに静かであれば、憂患も心にはいることができず、邪気もはいりこむすぎがないであろう」



 老荘はなんども読みかえす書物であると思うが、なんどかは部分を拾い読みはしてきたが、通読はひさしぶりだ。こんかいは、運命随順の考えがとくに目についた。いぜんは、優秀さや名声、知などの処世訓が目についたのだが、運命に逆らう気持ちが増していたのだろうか。

 人によっては、いろいろな部分が心にひっかかり、刺さってくると思う。人によって違いがあり、また時をへて、刺さるところも変わってくるだろう。

 老荘はぜひ読まれることをおすすめします。天地の視点で、人間や自分を省みる機会は、ほんと老荘の書物以外にほとんど見あたらない。


▼解説書ではなくて、原典に。わかりやすいですよ。
老子 (岩波文庫)荘子 全現代語訳 上下巻合本版 (講談社学術文庫)荘子〈1〉 (中公クラシックス)荘子 内篇 (ちくま学芸文庫)老子 (ちくま学芸文庫)



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