FC2ブログ

HOME   >>  幻想現実論再読  >>  実在性のベクトルが違うのかもね――『実在と現実』 山本 幾生
10 07
2017

幻想現実論再読

実在性のベクトルが違うのかもね――『実在と現実』 山本 幾生

4873544149実在と現実
―リアリティの消尽点へ向けて

山本 幾生
関西大学出版部 2005-04

by G-Tools


 わたしとしては、実在しないことの感覚をもっとつかみたい。そのことによって、思考や感情、存在の威力がなくなってゆき、安らぎの境地に入れると思うからだ。

 東洋哲学がこのような考えをたくさんもっているのだが、西洋哲学の精緻で論理的な思考が、その理解をもっと助けることがある。

 わたしたちは言葉や思考、感情が実在していて、リアルであるという感覚を当たり前のものとして日々を暮らしていると思う。それらが実在しているのかと、いっときも疑問に思うことがない。そのことによって、東洋哲学では、偽りで虚偽の苦悩や苦痛を抱えることになっていると告げる。

 わたしたちの現実というのは、心象や言葉、思考によって組み立てられている。しかし、言葉や思考が頭の外にあるのを見たことがないし、それらは頭の外には出ない。頭の中に存在しているのは、霞のような心象や言葉ではないのか。物体として存在するわけではないし、ほかのことに気をとられると存在しなくなっているし、意識するまでは存在しない。

 わたしたちは、その言葉や思考で捉える現実というものを、リアルに厳然と存在していると信じ込んでいるのだが、じつはもっとはかない、危うい存在を実在していると信じ込んでいるだけではないのか。

 そういった考えの確証をめざしているのだが、この本は西洋哲学の流れによって、実在と現実の問題について論じる。おもにショーペンハウアー、ディルタイ、シェーラー、ハイデガーといった哲学者の思索をなぞりながら、問題の検証をおこなってゆく。

 難解すぎて、わたしには服の上からかゆみをかいているようなもどかしさをずっと感じつづける読書になったのだが、どうも西洋哲学はこの世は幻想であっては困る、意地でも実在の確証を求めたいかのようで、わたしのような非実在の確証を得たい者とは、ベクトルが違うようだ。

 処世訓のファンであるショーペンハウアーのこんな言説は、なにをいっているのか、さっぱりわからない。

 「物質は、意志が単に可視的になった姿である」。「意志が客体的表象という形式を取るかぎり」、「物質は意志そのものである」

 意志というのは、たんに意識や思考の意向のことではないのか。それが物質だとかいいだす。意志というのは、物体の確実性から遠く離れたものに思えるのだが、ショーペンハウアーは意志を確実なものと見なしたいようだ。

 「もし世界が表象にすぎないのであれば、世界は空虚な夢や幽霊の幻影のようにわれわれの傍らを次々に移り行くものにすぎず、考察に値しないことになる」

 世界が表象なら考察しないという態度は、なんなのだろう。

 デカルトの思考が存在の証明のような言説すら、東洋哲学の常識から考えて、どうやって打ち立てられたのかまったくわからない。とにかく、西洋哲学は思考であれ、意識であれ、実在していることの確実性を打ち立てた世界をお望みのようである。

 そういった意味で、思考や心象が実在しないと見る立場のわたしには、この西洋哲学の主流の考えが、どうも土台から違っているとして、感覚をつかめるものにならない。数学のように存在しないものの概念の証明を、西洋哲学は架空の空でやっているような感じがする。

 ということで、つづくディルタイやハイデガーの思想も、わたしのつかめるところにならなかった。

 わたしは、思考や心象が実在しない感覚をつかみたい。西洋哲学は実在している世界の確証を得たい。わたしはこの世界が幻影やマボロシであるほうが、安らかさを手に入れられると思っている。

 強化と破壊では、ベクトルが違いすぎる。そのことによって、理解は離れてゆくのではないかと思う。


現実と落着―無のリアリティへ向けて君はいま夢を見ていないとどうして言えるのか―哲学的懐疑論の意義 (現代哲学への招待Great Works)現実を生きるサル 空想を語るヒト―人間と動物をへだてる、たった2つの違い実在論を立て直す (叢書・ウニベルシタス)実在論と理性


関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

初のKindleセルフ本、発売中。他人に感情を振り回されてばかりいる人、過去を後悔してばかりいる人、必読。長年の習慣から解放される心理セラピー。



twitterはこちら→ueshinzz

google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
FC2カウンター

Page Top