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07 30
2017

幻想現実論再読

神秘思想がなぜわからないのかのクソ・サンプル――『無の比較思想』 新形信和

4623028496無の比較思想
―ノーヴァリス、ヘーゲル、ハイデガーから西田へ

新形 信和
ミネルヴァ書房 1998-02

by G-Tools


 いっていることがぜんぜんわからないと読む進めてゆき、さいごのほうにはなぜこの書はこんなにわからないのかという読み方しかできなくなった本である。

 ノーヴァリスのさいしょの章で、神秘体験に近づきそうなのだけど、その経過ばかりをひたすら記述して退屈の極みに達したうえに、ヘーゲルやハイデガーは、わたしの西洋哲学の読解能力のなさも加わって、よけいにわからなく、クソ本だとしか思えなくなっていった。

 最終章の西田幾多郎の章で、どうやらこれは神秘思想を言葉やテキストのうえだけで論証しようとした過ちにおちいっているのではないかと気づいた。

 この人は実体験抜きで、神秘思想を言葉と論理で理解しようとした人なんだと思えた。いわば、神秘思想を言葉だけで理解しようとした壮大な失敗をサンプルとして見せている本だなということである。

 この人は、言葉や思考という道具の欠陥をいちども考えたことがないのだと思う。言葉の実在性や虚構性にいちども懐疑をもったことがない人のようだ。だから、ひたすら言葉と論理で、語れないものとしての神秘思想を理解しようとして、虚妄の推測世界を立ち上げる。

 人がなぜ神秘思想を理解できないかのサンプルとしては、活用できる本である。言葉の実在性を疑ったことがなく、その虚妄性にいちども気づいたことがない人が、神秘思想に近づくと陥る論理展開のまちがいを記述したサンプル本ということになるだろう。

 言葉を否定することは、反知性や反理性の非合理主義だと、われわれの文明ではとうぜん考えられている。それゆえに思考と論理を手放したくない気持ちはわかる。

 だが、言葉は存在しないものを存在すると思わせ、虚構の非実在性に人間をずっと閉じ込めておく認識のワナである。神秘思想はそれに気づいて、その虚妄世界からの脱出口をしめす思想なのであって、けっして反知性や反理性をめざすわけではない。この根本的なことがわかっていないから、本書はどこまでも思考のロジックをもちいた神秘思想理解というラビリンスに向かってしまうのである。

 思考を捨てるというメソッドや、思考がつくりだす虚妄世界という根本的な一点をつかまないばかりに、神秘思想にぜんぜんたどりつけないひどいサンプルになってしまった悪例である。

 言葉や思考こそがゆいいつの真理を知るための完璧な道具と信じているかぎり、言葉を捨てようとした神秘思想はぜったいに理解できることはないだろう。ただただ、言葉や思考にどんな欠陥があるかの知識がないばかりに、永遠に理解にとどかない地点にとどまってしまうのである。

 西洋哲学というのは、言葉と思考に無条件の信頼と完璧性をもとめる知的態度をもつ。言葉や思考を捨てることは、野蛮や反理性であり、ケモノレベルである。

 言葉がどんな弊害や悪弊があるかの懐疑をぜんぜん抱かないで成立している知識なのである。

 その一線を分けるのは、言葉の実在性を信じるか、信じないかの境界だと思う。西洋哲学は、オバケやサンタの実在を疑ったことがないような、言葉の実在性をちっとも疑わない知性のうえに成立している。

 というわけで、いちばん神秘思想に語ってはならない人が、初歩的なまちがいに気づかないままに、思考と言葉で神秘思想を語ろうとしたクソ・サンプルを読まされたということになる。

 ネットでは著者に対する批評はまるで書かれていないのだが、禅や神秘思想を理解する人はわたしの見解に賛同してくれるだろうか。


▼神秘思想を理解するためにはまずは言葉の実在性を疑ってみましょう。
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