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06 08
2017

幻想現実論再読

知覚と言語のまやかし――『忘れられた真理』 ヒューストン・スミス

20090628_531664.jpg忘れられた真理―世界の宗教に共通するヴィジョン
ヒューストン・スミス Huston Smith
アルテ 2003-12

by G-Tools


 図書館の宗教学の本棚においていたから、そういう角度から宗教の世界観を見てみたいと思った。

 主観的に悟りや認識の転換を描かれるより、なぜそのような認識が可能なのか、人々にはなぜそのような認識は閉ざされているのか、といった客観的な目線もほしいと思った。科学がいうなら、それは脳内幻想だとかいいそうな角度だが。

 この本は1976年に書かれており、訳者によると英語圏ではスタンダードな文献と目されているといっているが、どうなのだろう。

 ニューエイジではなく、量子力学や科学批判の地点から考える哲学であるからニューサイエンスに近い立場といえるように思えるが、スタニスラフ・グロフを付論でとりあげているから、ケン・ウィルバーなどのトランスパーソナル心理学に近い立場といえるかもしれない。ただ、哲学者であるからより思索的、逍遥することが目的なような本になっている。

 量子力学の描く世界からの知覚・物質世界の幻想や、科学批判の立場、進歩主義観といった批判もおおく語られて、どちらかというとわたしはこの批判はほかの本で読んだこともあるので、さして読みたくなかった。

 知覚のまやかしは、つぎのように語っている。長くなるのでだいぶはし折るが。

「感覚は、その机は動かない、という。それは間違いだ。…机は、凝宿された力なのだ。私の手と眼が報告するような生命のない魂というよりは、むしろ純粋なエネルギーに近いものなのだ。…感覚をどこに向けようとも、感覚が返してくるものはフィクションなのである。感覚は、自然のふるまいについて教えてくれないというだけではない。むしろ、わざとそれを教えないようにできているのだ。もし、ものごとのあるがままの姿を感覚が見せてくれたとしたら、私たちは生き延びていくことができないかもしれない」



 わたしたちは知覚・物質世界というものから離れられないのだが、量子力学が時空のゆがんだ世界をさししめすようになって、ずいぶんとこの時間・空間世界の齟齬に出会うことになった。

 ミクロの世界では時間や空間の法則は働かない。そういった意味では、霊的世界観に近いともいえるかもしれない。宗教とは、霊的世界観のことをいうのかと、あまり表ざたにされない古来の世界観に出会う。

 この本では思考・観念世界の幻想性にはあまり言及されないのだが、認識論にしろ科学にしろ、どうしてその観念世界をぶっ飛ばして、すぐに目に見える知覚・物質世界の信ぴょう性に飛んでしまうのだろう。人々を規定して、人々を行動させるのは、その思考・観念世界である。マスコミからの伝聞や人間関係などの日常を捉える思考・認識が、われわれにはいっそう重要である。知覚・物質世界に早々と飛びすぎなのである。

 言語について次のようにいわれている。クリシュナムルティは「思考は物質である」と面喰うことをいうのだが、言語は物質に近づこうとする幻想なのかもしれない。

「物質のカテゴリーと、そのカテゴリーをある部分反映し、ある部分を作り出している言語こそ、世界の罪なのだ」

「私たちが思考をする限り、空間的なイメージは必ず現れる。思考は言語を通じで行われるものであり、言語というものは、私たちが時空の世界と出会うことによって生まれたものだからである」



 言語や思考は、物質のように堅く存在するものになろうとする。わたしたちは如実に存在するように思える言語世界のリアリティにすぐにつかまるのである。そして目の前に存在しない想像力につなぎ合わされた世界を、あたかも現実に存在するかのように思う世界にどっぷりつかってゆく。感覚もまやかしだとすれば、言語のまやかしもずいぶんと罪なものである。

「完全なる道には何もむずかしいことはない
ただ区別することをやめればよいのだ
髪の毛一本のちがいであっても
天国と地獄ほどに分かれてしまう」
                        僧璨「信心路」





スピリチュアル哲学入門―魂と宇宙の根源へ向かって魂のロゴス―スピリチュアル思想を超えて深層からの回帰―意識のトランスパーソナル・パラダイム個を超える(トランスパーソナル)パラダイム―古代の叡智と現代科学比較宗教学の誕生   宗教・神話・仏教 (宗教学名著選)


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