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05 21
2017

幻想現実論再読

世界は海、人は波――『インド思想』 北川 清仁

indosiso.jpgインド思想―その経験と思索
北川 清仁
自照社出版 2000-06

by G-Tools


 図書館で借りた本二冊目。

 入門書・概括書というのは、この人の思想をもっと知りたい、この人の本を読みたいと思わせるカタログ的魅力を見せてくれることがいちばんの良書だと思うが、この本は残念ながらそのような感化させてくれる本ではなかった。

 歴史的経緯より思想に的をしぼったという本ということで読書してみようと思ったが、すこしむずかしすぎたのかな。

 ヴェーダから近現代の思想まで紹介しているが、仏教のウェイトも大きくおかれている。インド思想では仏教の紹介はそう知りたくないのだが、仏教はインド思想だったはずだし、その文脈で理解すべきかも。

 近現代では、ラーマクリシュナ、ヴィーヴェカーナンダ、ラマナ・マハリシ、シュリ・オーロビンドといった人たちが紹介されている。いまでも本が手に入りやすいのは、ラマナ・マハリシかな。

 わたしのインド思想への興味は、ブラフマンの世界観であって、偏在し、全世界をおおっているといわれるブラフマンをどのように理解したらよいのかという興味が大きいように思う。

「しかし人々は自己の尊厳を忘れ、世界の喧騒の中をさまよっている。それは、あり余る財を継承しながら、それを忘れ、猟師として森の中をさまよい、ついに、王国を取り戻す王子のようなものである。人々は、自己の聖なる根源を忘れ、生と死の連鎖の中に動転し、始まりのない無知によって束縛されている」



 霊魂観と輪廻の世界観で聞いた話であって、この世界観をそのまま信じてよいかは、もちろん疑問であるが。

「ある男が海を見たとし、だれかが、「さて、海はどんなものか」とたずねたとしよう。その男は口いっぱいに開け「何という眺め、何というものすごい波と音!」と言えるだけだ。聖典の中のブラフマンの描写はそのようなものだ」



 海を見たことのない人に、海の説明はむずかしい。見たことのないものに対して、なにが説明できるだろうか。

「彼はブラフマンの性質を言い表す力がないのだ。あるとき塩の人形が海の深さを測りに行った。水深がどれくらいあるのか、みんなに話したいと思ったのだ。しかしその人形にはそれが出来なかった。水に入るやいなや、それは溶けてしまったからだ。さて、一体、誰が海の深さを報告するのか」



 ブラフマンの世界観は、海のたとえが合うようだ。わたしたちはそこに浸かっていながら、そこにいることに気づかず、説明もできない。未分化、切断のできない世界のたとえとして、海は適合しているのだろう。われわれは物体の個別の世界を見る。

「絶対者はかの海である。一方、あなたも私も、太陽、星、そしてその他の一切のものはその海の様々な波である。何がそれらの波を多様にさせるか? 形態である。その形態とは、時間、空間、因果律であり、すべては全く波にもとづいているのである」



 個体は海の波しぶきである。ブラフマンの世界観とは、この世を海やスープのような一体の世界を想定する。わたしたちの日常の知覚世界とはあきらかに衝突するわけだが、宗教者たちはなぜ古来からこの世界観をめざしてきたのだろう。

「心はそれ自体から世界を生み出し、また、それ自体のうちに収める。自己から心が現れるとき、世界が現れる。それゆえ、世界が(実在として)現れるとき、自己は現れない。自己が現れる(輝く)とき、世界は現れない」



 眠っているとき、知覚も世界も消滅しているが、この世界はどうなっているのだろう。もちろん目が覚めれば世界は存続しているのだが、わたしの意識が目覚めない限りにおいて世界は現れないという点で、世界はわたしである。その世界すべてを自己といってよいものだろうか。

「世界はくり返し現れる夢の現象以上の何ものでもないからである」



 ラマナ・マハリシのことばである。この知覚世界以外の世界を信じることは、われわれにはむずかしい。


インド思想史 (岩波文庫)インド思想史インド哲学七つの難問 (講談社選書メチエ)インド人の考えたこと―インド哲学思想史講義 (シリーズ・インド哲学への招待)インド哲学の教室―哲学することの試み (シリーズ・インド哲学への招待)


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