HOME   >>  幻想現実論再読  >>  時間の幻想性に気づけ――『人生が楽になる 超シンプルなさとり方』 エックハルト・トール
03 15
2017

幻想現実論再読

時間の幻想性に気づけ――『人生が楽になる 超シンプルなさとり方』 エックハルト・トール

4199060030人生が楽になる 超シンプルなさとり方
(5次元文庫)

エックハルト・トール
徳間書店 2007-11-09

by G-Tools


 エックハルト・トールのこの本ほど悟りについてわかりやすく書かれた本はないと思う。悟りというか、人間が陥る認識の誤りだと思うのだけどね。

 それには時間の幻想性についてたしかめてみるのがいちばんだ。よく「いま、ここ」に注目しろといわれるが、それには時間の幻想性を知らないとなかなかわかりにくいのではないかと思う。

「これまであなたは、「いま」以外の時に、なにかを経験したり、おこなったり、考えたり、感じたりしたことがあったでしょうか?
「いま」以外の時に、なにかが起きたり、存在したりすることは可能でしょうか?

過去には、なにひとつ起こっていません。
起こったのは、「いま」なのです。

未来には、なにひとつ起こりません。
すべては「いま」、起こるのです」



 時間というのは奈落の底に呑みこまれるように、瞬間瞬間、終わってゆく。それなのに過去の想起や思考がいつまでも過去を終わらせない。そのことによっていつまでも過去の後悔や羞恥や屈辱にさいなまされる。もはや永遠に存在しなくなった幻想の過去をいつまでもむしかえすのが思考である。

 しだいに人は「思考はわたしである」と思い込むようになる。「思考こそがわたし」「思考こそがすべて」「思考のないわたしは存在しない」「思考のない者は奴隷か、痴呆だ」と思い込むようになる。

 しかし思考というのは、もはや永久に失ってしまった過去の後悔や悩みをいつまでも存在させるものである。そのことによって、われわれの苦悩や苦痛はしじゅう再演されるようになる。人間の苦悩の構造は、思考による過去の再演や時間の想起にあるのである。

 エックハルト・トールを読むと、われわれの社会や学校がいかに思考を奨励し、思考を崇拝させる社会か、思い起こさせる。考えたり、計画したり、反省したり、改善するために思考を使いなさいと教えられる社会である。

 思考に悪を見たり、害悪を見ることは禁止されるか、もしくは思いもよらない社会になっている。そのために思考に自分のアイデンティティを重ねた人は、思考による苦悩、苦痛から逃れられなくなり、思考による病のうつ病になっても、その原因や解消策に気づけない。もはや思考が感情やうつ感情を生み出していることに思いもよらない社会になっている。

 あなたが苦痛や苦悩にまみれていまの状況や現実にさいなまされているときに、エックハルト・トールはたずねる。

「しかし、「いま、この瞬間」に、なにか問題がありますか?」



 わたしたちは思考や時間の幻想性にまったく気づけずに、思考や時間のフィクションにずっと苦悩を背負い込まされているのである。

 そして、思考がわたし、自分自身になった人には、思考が害悪をもたらしているとは思いもよらなくなっている。

 ほかに、「大いなる存在」の一体感については、わたしはわからない。「インナーボディ」という存在にも気づけない。

 エックハルト・トールは、感情の痛みを「ペインボディ」という言葉で表現しているのだが、これは「たとえ」であって、まちがって「実体化」して捉えてしまわないかと危惧する。エックハルト・トールがいっているのは、外界を自分の外側だと捉えたために、自分の思考の被害者になっている状態に気づけないことだと思う。これはウェイン・ダイアーやジャンポルスキーのほうがわかりやすい。

 人間は時間はあると思い、思考に自分を重ねている。そのことによって永久に去ってしまった過去をいつまでも再現し、苦悩し、悲観に暮れる。だが、そんなものは時間とともに永久に去ってしまったのだ。思考や想起の能力があるために、人は永遠の苦悩をいつまでも「呼び出し可能」になった。時間を見ると、そういうたんじゅんな認識のあやまちがわかりやすくなる。

 思考というのは、それ自体が幻想であり、存在しないものである。しかし人は思考を使いつづけて、それが「現実」や「実体」としてあるように思うようになる。思考こそがわたしであり、それ以外の認識形態はないように思うようになる。苦悩はいつでも再現可能の地獄を見るようになるのだ。

 たんに大脳新皮質の思考する・想像する能力による過ちに思える。これを現実化、実体化してしまった人間の悲劇を、われわれ自身が治せなくなっている。でもそうすることが「宗教」だといわれてしまうのだから、われわれの社会は、認識のあやまりや思考に同一化することに意地でもしがみたい社会らしい。メリットが大きすぎて、害悪を見ないのである。

 宗教ではなくて、たんに認識の誤りであると受け入れられるようになるのはいつのことだろう。


さとりをひらくと人生はシンプルで楽になるわたしは「いま、この瞬間」を大切に生きますニュー・アース -意識が変わる 世界が変わる-最初で最後の自由(覚醒ブックス)DVDブック マインドとの同一化から目覚め、プレゼンスに生きる ―「覚醒」超入門(覚醒ブックス) (<DVD>)

関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

twitterはこちら→ueshinzz

FC2カウンター

Page Top