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03 08
2017

幻想現実論再読

知の正当化の方法論――『ポスト・モダンの条件』 ジャン=フランソワ・リオタール

4891761598ポスト・モダンの条件
―知・社会・言語ゲーム (叢書言語の政治 (1))

ジャン=フランソワ・リオタール
水声社 1989-06

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 共同幻想をひきはがすためにむかし読んだ本の再読がつづきます。

 共同幻想論を知ることの大切は、自分たちの社会で「事実や絶対」と思われていることの相対化ができることである。

 わたしたちは北朝鮮や新興宗教の盲従者たちを批判して笑うことはできる。だけど自分たちも同じような権力構造にのみこまれて、隷従や服従をくみこまれているのではないか、だとしたらどのような支配構造をくみこまれているのか、外観的に見ることができるようになる。自分たちがいっさいの権力構造から逃れられていることなんて、おめでたすぎるのである。

 リオタールの『ポストモダンの条件』は「知はどのように正当化されるのか」といった問いを、言語ゲームという戦略をもちいて分析した本であり、かならずしも知の権力にのみこまれる様を批判した書ではないと思う。ただ知の正当化のコンセンサスを客観的に見るという立場を与える書であると思う。自分たちの社会を斜め上から見ることは、自集団の真理や絶対から逃れることでもある。

 この本は150ページほどの薄い本であり、難解な現代思想の中では比較的読みやすい部類に入るのではないかと思う。でもわたしにはけっしてすべての文脈はかみ砕けるまでには理解をすすめられたというわけではないけどね。ぽつぽつと重要な指摘が浮き上がるという感じだ。

「物語知はその正当化という問題に価値を認めないことということ、すなわち、それは、論証にも証拠の提出にも訴えることなく、伝達という言語行為によってみずからを信任する、ということを指摘した。

科学的知は、もうひとつの知、つまり科学的知にとっては非知にほかならない物語的知に依拠しない限りは、みずからが真なる知であることを知ることも知らせることもできない」



 本書はこのように物語知や科学的知はどのようなものであり、どのように正当化されコンセンサスを得られるのかを垣間見せる本である。それは同時に政治権力のあり方でもある。こういった手続きをへないと正当化されないものが、われわれの社会の真というものである。

 リオタールは「大きな物語の終焉」という言葉で紹介されることが多いと思うが、ここでは人間の解放という物語や、富の発展などとしてさらりと触れられているだけで、そう大きなテーマにはなっていない。

 知が商業や富にのみこまれる様も指摘している。

「お金がなければ、証拠はなく、言表の確認もできず、そして真理もない。科学の言説ゲームは富める者のゲームとなる。

問われる問いは、もはや「これは真であるか」ではなく、「これは何に役立つか」なのである。知の商業化の文脈においては、この最後の問いはしばしば「これは売れるか」を意味している」



 わたしたちは自集団や時代の絶対や真実を信じて生きるが、そこには隷従や支配の構造がくみこまれている。それにぴったりと合致して生きることも可能であるが、そういう形態にしがみつこうとすれば、さまざまは苦痛や悲劇を背負うことになる。

 その社会においてなにが重んじられ、なにに価値をおかれるかはそれぞれ異なっている。それゆえに人生からとりこぼされるものは多くなるし、自分を十全に生きられないという思いも蓄積してゆく。だからこそ、共同幻想論のような自集団の相対化と脱却が必要となるのである。

 自分たちを縛りつけているものはなにか、その多くはこの社会の世界像であったり、常識であったり、当たり前の中にひそんでいるのではないだろうか。自集団の相対化は、自分を縛りつけていたものから自由になることである。


こどもたちに語るポストモダン (ちくま学芸文庫)ポストモダンの50人 -思想家からアーティスト、建築家まで相対主義の極北 (ちくま学芸文庫)知識人の終焉 (叢書・ウニベルシタス)言説、形象(ディスクール、フィギュール) (叢書・ウニベルシタス)

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