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01 25
2017

書評 社会学

80年代の問題意識――『お金と愛情の間』 ナタリー・J. ソコロフ

158458.jpgお金と愛情の間―マルクス主義フェミニズムの展開
ナタリー・J. ソコロフ
勁草書房 1987-12

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 タイトルはエッセイ風のやわらかいものだが、内容はサブタイトルのほうがふさわしいおカタくて専門的なもので、読みとるのにだいぶ苦労するレベルの本である。

 87年の古い本だが、お金が払われている関係とお金が払われない関係のあいだの転換点に興味があるわたしは思わずダメもとで注文したが、内容にかなった書物ではなかったようだ。

 お金はどうも「自発的なもの」には自分で払い、「強制的なサービス」にかんしては賃金をもらうという関係があるようである。だから好きで結婚するなら女性は家事を無償でおこなう役割になるし、おなじように好きな趣味で働くなら低賃金でもかまわないだろうとなるし、やりがいがあったり、技能実習生のように教える関係があったなら、賃金が消滅する方向にはたらく。

 自発的になることはお金を払う側にたまらなく近づくことであり、もらう側から払う側へと切り替わる瞬間に近づくことである。労働者としてお金を必要とする者にとっては、気をつけなければらない転換点であり、好きなことを仕事にしたいというさっこんの思いは、なにをもたらすのだろう。

 本書はさいしょ、地位達成の理論や二重労働市場の理論が検討されており、ここがとっつきにくい。現実を分析する一次的資料はわかりやすいのだが、それを検討する二次的資料はややこしいものになるのだという関係ない気づきを得た。教科書のような本のことね。

 初期マルクス主義フェミニズムと後期マルクス主義フェミニズムも検討されるのだが、女性はなぜ低賃金で男性支配の家父長制や資本主義に閉じ込められているのか、家事は無償なのかといった説が検討されてゆく。

 女性は男性にくらべて劣位におかれている、搾取されているとなんどもいうのだが、男も権力によって賃金奴隷の労働に搾取されているのであって、男性も権力に牛耳られているという苦しみが配慮されていないのが残念に思えた。

 内容の検討については深い興味をひきつけられたわけではないし、手にあまる内容なのでひかえるが、この書物はのこってゆくことになるのだろうか。

 さっこんは若者の恋愛離れや非婚化によって、この本が出たバブル以降に勃興したマスコミによる恋愛至上主義が終焉しようとしている状況になっている。

 女性が低賃金で働かされ、家事を無償でひきうける性別分業は、恋愛至上主義というあだ花を咲かせ、おたがい高負担コストによる恋愛結婚からの逃走や回避をもたらしたようで、あらためてこの偏った性別分業の負担や重荷について、検討しなければならない時期にいたったのだと思う。

 無償家事労働論は70年代に花咲いたようだが、それから三十年、男女は性別分業の役割の重さに耐えきれなくなっている。わたしたちはこの歪みある性別関係において、どのような関係を築いていったらいいのか、もう一度問われているのではないだろうか。



性の政治学母親業の再生産―性差別の心理・社会的基盤母性という神話 (ちくま学芸文庫)性の弁証法―女性解放革命の場合 (1972年)家事労働に賃金を―フェミニズムの新たな展望

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