HOME   >>  社会批評  >>  「クロ現」の「サピエンス全史」特集 フィクションを信じる力の意味
01 05
2017

社会批評

「クロ現」の「サピエンス全史」特集 フィクションを信じる力の意味

 きのうの「クロ現」(2017/1/4)で、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』の特集をやっていましたね。


 世界のリーダーが注目 人類250万年の旅 NHK NEWS WEB

 
B01KLAFEZ4サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福
ユヴァル・ノア・ハラリ
河出書房新社 2016-09-16

by G-Tools


 認知力が生み出す虚構の力!『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』すべては7万年前に始まった。 HONZ YAHOO

 虚構が起こした革命──『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』 基本読書


 この本の目新しいことは、人類の飛躍的発展の理由を「人類のフィクションを信じる力」に求めたことですね。フィクションを信じる力が集団での共同作業を可能にし、ほかの生命をひきはなす能力や知能を人類につけ加えたのだと。

 宗教や貨幣もフィクションにすぎないし、国家も科学も会社もフィクションにすぎません。それを「事実」、「絶対的な現実」と考える力を手に入れたからこそ、人類の飛躍的発展を可能にしたのだと。

 これは読書好きな方ならすぐわかると思うのですが、吉本隆明や岸田秀、竹田青嗣がいってきた「共同幻想論」のことですね。ニーチェやリオタールのポストモダン思想家もいってきたことであり、一部の人には伝わっていたことでも、大半の人には伝わっていなかったのかもしれませんね。( 「共同幻想論」を知るためのブックガイド )

 フィクションを共同で信じる力を人類の強力な発展力の理由に据えたという意味で、この本の影響力は大きかったのかもしれません。

 ホモ・サピエンス(賢い猿)から、フィクショナル・サピエンス(想像する・物語る猿)に定義を変えることの意味はそうとう大きいと思います。

 フィクションは人間に大きな力を付与しましたが、同時に惨劇や悲劇をつけ加えたこともまちがいありません。フィクショナル・サピエンスと定義づけることで、その過ちを克服する道筋を見つけられるかもしれません。

 フィクションを「絶対的な現実」ととらえる人が大多数の世界では、フィクションによる戦争、対立が後を断ちません。共同幻想論は、フィクションからの相対化や客観視の賢明な視点をつけ加えますね。

 ハラリの『サピエンス全史』は共同幻想論の破壊力を大きくひきだす定義にふみこめたのかもしれません。


 フィクションに強くこだわってきた人間にとってはもうひと言もうさないわけにはいきません。

 人間は共同のフィクションだけではなくて、個人のまわりの認識もフィクションで補っているということですね。

 あなたの過去も未来もフィクションだし、あなたが人間関係をとらえる認識もフィクションだし、自分をどのようにとらえるかという像もフィクションにすぎません。さらにそのまわりを共同幻想、共同フィクションがとり囲んでいるということです。

 あなたの過去はすでに永久に失われ、あなたが思い出していることはフィクションにすぎません。あなたがあの人はどういう人だ、わたしはこういう性格だという認識もフィクションによって補われているにすぎません。

 人間がフィクションによって目の前に存在しないことを存在する現実のように思う力を手に入れたということは、終始フィクションの、虚構の世界に生きるということです。

 フィクションの力というのは、目の前に存在しない虚構の出来事を、あたかも「現実に厳然と存在する」と思い込める力と同然です。

 そのことによって、あなたは時間をこえた物事を操作する力を手に入れますが、同時に時間とともに終わらない苦悩や悲劇も背負うことになりました。あなたの苦悩というのは、フィクションであるのです。

 こんなことを急に聞いても現実は目の前にあるではないかと反発するかもしれませんが、自分が思ったり考えたりすることはモノとして目の前にとりだすことができるのか、過去はいまどこにあるのかと考えればよいかもしれません。存在しないものを想像する力がその正体なのですね。

 これははるか大昔に仏教がいってきたことなのであって、フィクションであることの理解がむづかしいために仏教は説明をあきらめてきたのでしょうか。怠慢すぎるのですが。


 『サピエンス全史』は未読ですが、クロ現の説明でおおよそは共同幻想論のことをいっているとわかりました。フィクションに強くこだわってきた人間には、この世がフィクションであるとわかることの価値はたいへん大きいものと思っています。

 フィクションをみんなで信じることの力の意味を多くの人が熟考する契機になればいいと思います。


共同幻想論の本
ものぐさ精神分析 (中公文庫)「自分」を生きるための思想入門 (ちくま文庫)ポスト・モダンの条件―知・社会・言語ゲーム (叢書言語の政治 (1))ニーチェ全集〈12〉権力への意志 上 (ちくま学芸文庫)人生が楽になる 超シンプルなさとり方 (5次元文庫)

関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

twitterはこちら→ueshinzz

FC2カウンター

Page Top