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11 09
2016

書評 社会学

健康義務化はこわい――『健康不安社会を生きる』 飯島 裕一

4004312116健康不安社会を生きる (岩波新書)
飯島 裕一
岩波書店 2009-10-21

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 相模原障害者殺傷事件や、自己責任の透析患者は死ねのような発言から、人の命を軽視する風潮が生まれてきているのではないかという懸念から読む。

 先に『健康帝国ナチス』や『大日本健康帝国』といった本を読みたかったのだが、古本で見つけたこの本を。

 新聞連載の専門家数人のインタビューだから内容は浅く、一冊の本を読んだほうがとてもためになる。こういう断片的な記事は読んでも読まなくてもたいして変わりはせず、一冊のテーマで本を読むことが問題意識の醸成になる。

 健康の義務化は、

「健康を自認する人たちは、病気や障害を負った人に後ろ指を指し、「不健康な者がいるから健康なわれわれまで不利益をこうむる」と非難する、そんないがみ合う社会になりかねません」



 と指摘されているように、健康の優良化は、逆にそうでない人の非難、排斥をもたらす。その行き過ぎた先にはすでに歴史的に真のあたりにしてきたナチスのよる障害者抹殺や優生思想という黒い歴史がある。

 健康だけをめざすのだから手放しにすばらしくて終わり、という話にはならない。健康には対極の病気や障害を差別する思想とぬぐいがたくセットなのであって、義務や強迫になればなるほど、障害者差別はひどくなり、亢進して、排斥運動となってゆく。内面で追い込まれたものは、外部での標的を見つけるのが人間の心の作用だ。

 わたしは健康は放任派なので、病気が怖いと恐れさせるようなTVは見ないし、からだにいいとされる健康食品やヒット商品にはまったく無縁である。この本にはそのようなうさんくさい情報に対するための情報リテラシーの項目もある。健康情報は、情報リテラシーの問題なのである。

 ニセ科学にだまされるのは、理科教育に興味関心をそだてることをせず、暗記知識に終わってきた日本の教育に問題を感じる指摘もある。学校を出ていっさい学問から遠のくなら、教育を失敗してきたといえる。疑うことや検証することもおぼえてこなかったので、科学の信頼だけを植え付けられてきたので、ころりとニセ科学にだまされる。

 この本はインタビューされた専門家の著作を読まないとまったくためにならない本だな。



健康帝国ナチス (草思社文庫)大日本「健康」帝国―あなたの身体は誰のものか (平凡社新書)健康不安の社会学―健康社会のパラドックス (SEKAISHISO SEMINAR)健康の社会史―養生、衛生から健康増進へフードファディズム―メディアに惑わされない食生活 (シリーズCura)

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