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06 19
2016

主体性の剥奪

ファッション雑誌的マザー――『毒になる母』 キャリル・マクブライド

4062816229毒になる母
自己愛マザーに苦しむ子供 (講談社+α文庫)

キャリル・マクブライド
講談社 2015-10-21

by G-Tools


 自己愛マザーというのは、ファッション雑誌や女優、タレントに憧れるような女性たちのことだろう。

 見栄えや見た目がなにより肝心で、世間体がだれよりも重要だ。そのために娘の人格や主体性、価値といったものはないがしろにされる。具体例として出されている母親の心ない発言はひどいものだと思う。

 しかしこれは個人的な性格の問題より、見た目やファッションをなによりも重要視する文化・社会的な問題という気がする。そういう成功や功績を追い求める母親にトロフィーや道具のようにあつかわれた娘はどう成長するかという話である。

 2014年あたりに毒親、母が重たいといったテーマが話題になったようだが、90年代は神経症や虐待といった問題で親のあり方が問題になっていたが、いまはより一般的なふつうの関係にも、その問題が認知されてきたと考えてよいのだろうか。

 新しい問題と思われる向きもあるかもしれないが、毒母は童話で山のように出てくるようにはるか昔から問題にされてきた。「白雪姫」や「シンデレラ」、「三枚のお札」などを思い出してもらえば、じゅうぶんだろう。童話のテーマは子どもの自立である。現代はそれだけいくつになっても母の支配と呪縛から抜け出せない関係が増えたと見るべきか。

 第3部からは「回復の5つのステップ」が教えられるが、これは母との親子関係を抜きにして、対社会的・対文化的なセラピーだけを問題にしてもよいようにも思われる。文化・社会的に植えつけられた価値観や基準を、自分から抜き去るためのステップのようにも思える。洗脳主や目に見える価値体現者が、目の前の母親であっただけで、文化・社会的な価値観と闘うのだ。

 そういう娘は結婚相手も、外見やイメージで決めようとする。収入やルックス、恥ずかしくない職業。ここですすめられるのは、内面はいいか、感情をコントロールできるか、共感や愛情を示せる人かといったポイントで選ぶようにすすめられる。ファッション的価値観からの離脱をすすめられており、これって現代社会の価値基準からの離脱である。毒親はそういう現代社会の価値観を象徴的に体現した自分を押しつぶす人である。

 母親からの離脱と独立をめざして、すすめられるほんとうの自己というのは次のようなものだ。

・さまざまな深い感情を、生き生きと自発的に感じられる能力
・自分には適切な権利や資格がある、と自分で認められる能力
・自分を活性化させ、表現できる能力
・自分で自分を尊重できる能力
・つらい感情を自分で慰められる能力
・親密な関係を結べる能力
・ひとりでいられる能力



 自己愛の強い母は、呑み込む母親か、無視するかの両極端にあらわれやすいという。そして娘は、頑張りすぎる娘か、自己破壊する娘の両極端になりやすい。

 支配され呑み込まれた娘は、自立や自分を育てられずに、母の支配と価値を背負って不全感を生きつづける。それは母の価値観であると同時に、文化・社会的な価値観でもある。

 いわば世間の価値観に呑み込まれた状態で、自分というものや自分らしい価値観というものを育てられずに、自分の人生を生きていることも価値観も感じられずにいる。世間の価値観に反抗も、自立もできないのである。世間への反抗期も、思春期の次に定義づけられる必要があるのではないかと思う。

 これは母との関係との問題なのか。世間との関係の問題なのか。親や世間の承認をのりこえて、自分らしい価値観をつかんだときに、母と世間から自立はようやく果たされるのだろう。世間への反抗期が、あまりにも認知されないで、世間の価値観に従順な人が多すぎるのである。


▼見栄えだけで生きた母の壮絶な終わり。われわれの時代の反省を迫っているのかもね。
 VERY妻になりたかった母の死から学んだこと アルテイシア


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