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05 26
2016

主体性の剥奪

キリギリスで生き残れ――『ハイコンセプト』 ダニエル・ピンク

4837956661ハイ・コンセプト
「新しいこと」を考え出す人の時代

ダニエル・ピンク
三笠書房 2006-05-08

by G-Tools


 21世紀に内発的動機づけの必要性を説いた『モチベーション3.0』を読んだために、いささか古い2004年に出されたダニエル・ピンクのこの本をさかのぼって読んでみた。

 ひとむかし前は知識労働者がもてはやされたが、いまはその中の規定作業や反復手順に還元できる仕事は、もはやコンピューターや途上国に代替されるようになっているということで、第四の波の時代になっていると。

 そういう時代には創造性や感情、全体性がますます重要になるということで、陳腐な右脳タイプの賛美が説かれたりしているが、まあ、その詳細や違いを言葉で知っておくことは必要かもしれない。

 要は詩人や画家になれというか、もはや芸術家の仕事でしか生き残れないといっているのだけど、こういうクリエイティブ志向の未来予測って、世の多くを占めるルーティンな仕事といつも別世界感がある。

 ルーティンな仕事はあいかわらず残りつづけるし、フリーペーパーの求人にはそういう仕事ばかり載っているし、クリエイティブなんてどこの世界?といった仕事や会社組織に属する人も多いのじゃないかと思う。なんか現実と違う感はいつもある。

 先端のトレンドにはそういう動きがあって、創造性でしか生き残れない世界もあるが、また日本もそういう世界経済の流れに押し流されるが、ルーティンも低賃金に落ちながら存続しつづける保守的な想像力も必要なのではないかと思う。

 先端的には詩人や画家で生き残れといわれるのだが、これって、アリとキリギリスの寓話でいえば、キリギリスとして生きろということだ。

 日本はキリギリスにあいかわらず冷たい社会なので、アリ的な労苦賛美のなかで、世界経済の中から凋落する転げ坂から抜け出すことができないのだろう。

 義務や強制でつくられたものに人はもう魅力を感じられなくなっている。その人がみずから楽しんでつくったもの、そういうものが求められ、だからこそアリ的な価値観が、魅力を壊してゆく。

 そういう創造社会のなかで、もっと人を動かすエンジンの交換の必要性を感じたダニエル・ピンクは、内発的動機づけの重要性や必要性を強く感じたのだろう。20世紀は外発的動機づけで働かせても、成果をのぞめる生産物の時代であった。しかし創造社会において、外発的動機は、内発エンジンを壊してゆくばかりだ。義務教育はメモリチップの100円の価値しかないといわれる時代に、内面の部分の大きな転換はできるだろうか。

 終章のモノより生きがいの章、人生の意義を探す世界的な傾向も感慨深く、物質的に満たされた工業社会の終わりには、人々はそういうものを強く求めるのだろうと思った。

 人生の意義や自己啓発を探すということは、もはや「宗教の時代」といってもよいと思う。創造の社会は、宗教の時代でもあるのだ。科学的世界観を通過した後には旧来の宗教理解と違ったものがあらわれると思うが、世界観はより主観的に、唯心論的に変わってゆくのだろう。

 キリギリスと宗教がのびのびと生きられる社会に、日本は変わってゆけるのだろうか。従来、禁止されていたものを多く破ってゆくチェンジが必要な時代だといえそうだ。


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