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04 29
2016

主体性の剥奪

がんばろうで日本沈む――『がんばると迷惑な人』 太田肇

4106105993がんばると迷惑な人 (新潮新書)
太田 肇
新潮社 2014-12-17

by G-Tools


 がんばることが迷惑になる時代になったことはどうやったら広く世間に伝わるのだろう?

「そこ(がんばりを評価する風土)には仕事の効率化と逆に力学が働きます。つまり仕事を効率化すると”がんばり”を示せなくなるので、ムダだとわかっていても効率化しません。それどころか逆に非効率なほうがトクなわけです」

「そもそも給料やボーナスに大きな差がつかないわが国の平等主義そのものが”がんばり病”をもたらしているという見方もできます。がんばっても給料が増えるわけではないのにがんばっているから「えらい」と評価され、さらには昇進や、昇進につながりやすい部署への異動といった形で報われるからです」



 バブル崩壊後の失われた二十五年といわれる日本の凋落の道は、こういうふうに用意されたのではないだろうか。

 工業社会のキャッチアップ型の経済成長のように、一致団結してひとつの目的に猪突猛進すれば成功するという時代ではなくなったのだ。それでもその時代のガンバリズム、成功体験で個人評価する組織が幅をきかせ、みんなで非効率なムダな努力、内輪ウケする努力だけに向かってしまう。

 機能性が必要な組織が「共同体化」してしまって、自己犠牲だけを測る組織に死に至る病に日本の企業はおかされてしまっているのである。

 それでも、「精一杯」だとか「全力」、「一丸」、「絆」といったガンバリズムのかけ声はあちこちからわき出る。シロアリみたいに日本社会の発展や進歩の土台を腐食するようなガンバリズムの言葉たち。

 がんばることの大いなる逆説、パラドックスというものが、日本人の多くの人には気づかれていないのである。

 日本企業の強制的な労働威力というのはとても強い。フリーターやニート、ひきこもりといったエスカレーター人生の乗れなかった人への風当たりも強い。ぎゃくにかつて強みだったそれが、みんなでがんばって乗り切ろう型の非効率なガンバリズムを生み出してしまう。

 脱工業社会というのは、工業社会で成功したものがことごとく逆になる、悪役になる時代だと認識を周知すべきなのだろう。

 工業社会の成功体験は、脱工業社会の成功を殺しにかかる。

 日本の労働システムや企業風土といったものはテコでも動かないような不動な硬直性をもっているように思われる。そういう中でシロアリのような昭和の成功体験やガンバリズムが、組織の機能性をどんどん食い殺しにかかっている。

 日本人の労働観や努力感が360度変わらなければならない時代の峠はとっくに超えていると思うのだが、いつまでもむかしの郷愁にしがみつく日本人。

 プロジェクトXではなくて、ガンバリズムの失敗例や弊害例をとことん啓蒙する広報活動が必要なのかもね。


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