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04 23
2016

主体性の剥奪

外発か、内発か――『学ぶ意欲の心理学』 市川 伸一

4569618359学ぶ意欲の心理学 (PHP新書)
市川 伸一
PHP研究所 2001-09

by G-Tools


 企業のやらされ感と自発的な生き方にたいする疑問を追究していて、モチベーション論に迷い込んだ。外発と内発はとうぜん教育分野でも大きな問題なわけで、教育心理学のこの本を手にとってみた。2001年出版だから、もう15年前の本。

 自分でもなにが問いたいのか、混沌している状況。強制されるものは嫌いになるという法則をたしかめたいのか、強制や外発が社会におよぼし、抵抗している社会の像を描きたいのか。少なくともモチベーションを上げるために読んでいるのではない。

 これは自分にとって大きな問題と思っていて、企業の強制にたいする抵抗で人生の多くを費やしてきたからだ。この反応についての客観性を手に入れたいのか。強制と自発性について読み解けるようになることは、自他にとってとても大切なことだと思っている。人を動かす、組織の中で生きることでも、このテーマは大きい。

 この本は動機づけの心理学をざっと展望していて、参考になる。それをめぐっての和田秀樹氏と刈谷剛彦氏との討論も合わさっている。

 外発と内発に、ほかの六つの細かい動機を付け加えたことも重要だと思う。充実志向、訓練志向、実用志向(外発寄り)が内発的動機にふくめられ、関係志向、自尊志向、報酬志向を外発的動機にふくめた。これはグラデーションに位置するが。

 後者になるにしたがい、内容より外的な報酬が重要になる。学習そのものを楽しむために学習する動機からより遠ざかる。知識そのものを楽しむ充実志向により近づけることが学習動機には大切なのだが、人はほかの報酬や自尊に動機をひきつけられるものだ。

 読書が好きだと思っていても、たとえば自尊志向や関係志向のようなものを動機にしていたら、充実志向のようにそのもの自体は好きではないといえるかもしれない。それによって成果や結果も変わってくるから、動機はなにがいちばんいいのだろうね。ブログでも動機がよく問われたりするしね。

 この本は2001年において自主性を尊重する日本は世界の潮流に逆行しているのかといわれているが、市川氏はいつも両論があり、和田氏は外発性に傾いていると言い張るが、市川氏は否定している。

 自ら学び、自ら考える個人は「強すぎる個人」であって、外発の方がいいという声もある。

 刈谷氏は学ぶことになんの意味があるのかという問いには否定的で、市川氏はそれこそ重要だという。小学生までにそれを問うことは酷だが、それに近いことがおこっているという。内発が重視されると、興味の追究という方法に傾くが、小学生にはきちんとした課題を与える方がいいといいう考えもある。

 学校の勉強は「基礎から積み上げることが大切」とよくいわれたが、市川氏は「基礎に降りてゆく学び」もとりいれていいのではないかと提案する。職業知識でもやっているうちにわからないところが出てきて、学習の必要性は痛感されるものだ。断片や底辺からはじめると、まったくなんのためにやっているかわからない。これはわたしも痛感することだ。

 抜き書き的なまとまらない記述になったが、内発と外発はこんがらがる。

 でもこういう学習理論やモチベーション論って、人によってはこの世に生まれたときから強制や統制の押しつけとしか思われない世界を生きてきた人もいるということが忘れられているのではないかと思う。内発なんか生まれない状況。そこで自発的なモチベーションなんて生まれるのだろうか。

 この世はすべて強制と思われる人にとって、外発や内発なんか問う意味はあるのか。ヤンキーや低学歴の発生にはそういう心情が絡んでいる気がする。ニートやひきこもりだって、そうだ。教育の上級に飛び上がっていった人にはそういう気持ちは一生わからないかもね。自分を強制して、また蔑む位置に押しつける階級社会の王座に居座る人なんだから。


自ら学ぶ意欲の心理学 --キャリア発達の視点を加えて学ぶ気・やる気を育てる技術伸びる子の法則 (PHP文庫)学ぶ意欲とスキルを育てる―いま求められる学力向上策ハマータウンの野郎ども (ちくま学芸文庫)

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