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03 31
2016

主体性の剥奪

革命が必要――『モチベーション3.0』 ダニエル・ピンク

4062816199モチベーション3.0
持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)

ダニエル・ピンク
講談社 2015-11-20

by G-Tools


 世の中にはまだ社会的革命を必要とする分野があったんだなと気づかせてくれる一冊。

 外発的動機づけより、内発的動機づけを重要とするモチベーション理論をまとめた概括書にしかすぎないかもしれないが、一部の人に知られたこの理論が、ビジネス界やまた教育界にどれだけ知られ、浸透しているのかのギャップを埋める書になる。

 だれだって人の強制される仕事や勉強より、自分からすすんでおこなう遊びや趣味、仕事にどんなにおもしろみがあるか、いろんな経験で気づいていると思う。

 さらに「意欲を高めようとして安易に報酬を用いることが、もっとも意欲を失わせるときだ」といわれている。

 モチベーション2.0というのは、工業社会に必要とされた報酬と罰の体系であり、いまでも企業や教育でも一般的であるが、創造的・知識社会になっているげんざい、内発的動機づけがいたるところで必要になっているのだが、それをピンクはモチベーション3.0といった言葉で違いを際立たせた。

 報酬と罰の体系は、工業社会に有効なしくみだったかもしれないが、新しい創造が必要な知識社会には阻害させるものにしかならない。

 危機なのは、経営界のみならず、教育界でも、その認識が浸透していないことだ。

 芸術家にこんなことをいって、芸術性の高い作品が生み出されると思うのはバカげたことだ。「午前八時半きっかりに絵を描き始めなくていけない。わたしたちが選んだ人と一緒に絵を制作する必要がある。こんな感じの絵を描くべきだ。このような種類の絵を描かなくてはいけない」。

「外発的な動機づけが学生時代に低ければ低いほど、卒業して数年後および二十年後も、プロの芸術家として成功する割合が高い」

「絵画にしろ彫刻にしろ、外的な報酬ではなく活動そのものに喜びを追い求めた芸術家のほうが、社会的に認められる芸術を生み出してきた」

 理由はあきらかだ。発見や創造自体が報酬だからだ。

 人間は放っておいたら怠けて勉強も仕事もしないと思う工業社会の認識とシステムで、ずっと人を縛っている。自分自身で好奇心や自発性をみいだし、向上や成長をのぞむ存在ではないのか。

 工業社会のモチベーションのしくみは、創造社会において、人々の意欲や希望、成長をますます奪ってゆくばかりになるのではないのか。

 日本ではその2.0が成功しすぎたため工業社会には適応できたが、ますます世界経済と経済成長においておかれる結果になっている。日本は内発的モチベーションを解放・発揮できる環境づくりに成功することができるのだろうか。それが日本社会の今後のありかたを占うカギになるだろう。

 モチベーション3.0のシステムを日本の企業に持ち込むことはできるのだろうか。それより教育界に自発的モチベーションの重要性が広くいきわたっていないように見えるのが、驚異的な危機かもしれない。

 1975年にフローにかんするチクセントミハイの本が出て、ポジティブ心理学のマーティン・セリグマンの本も出て、内発的動機づけにかんするエドワード・デジの本も出た。工業社会のしくみや認識フレームはおかしいと気づきはじめた時代だったのかもしれない。大きな変革のうねりは、今後ますます必要となってゆくだろう。


ダニエル・ピンクが奨める必読の書(邦訳のみ)
フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)マインドセット「やればできる! 」の研究報酬主義をこえて 〈新装版〉 (叢書・ウニベルシタス)

やりとげる力セムラーイズム最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か

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