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01 22
2016

おすすめ本特選集

金儲けブロガーが嫌いな人におススメの本、ハンス・アビングの『金と芸術』

 アフィリエイトや金儲けブロガーが嫌いない人が多いようですね。

 ブログやネットは無償で、ただ書きたい欲求、自分の記事がネットで認められるために書かれるべきだという意見も根強いですね。


 この構図って、芸術分野でくりひろげられてきた議論と同じだと思います。いわく、マーケットで売れる作品は質が低く、マーケットで売れない作品の中に質の高い芸術的な作品があるのだという意見。

 商業ミュージックや純文学・大衆文学、芥川賞・直木賞の対比でも語られてきたことと同じですね。

 ブログ界隈でも、この構図で語られようとしています。金儲けや大衆に迎合する記事なんて、気高いブロガーの行為ではないということですね。

 わたしたちはなぜ金儲け目的は汚いことで、無私で無償な行為は気高くて崇高な行為と思うのでしょうか。

 なぜ大衆的に売れる作品は、芸術的に質の高い作品とされないのでしょうか。

 わたしたちはなぜこういう行動につき動かされるのか意識したことはあるでしょうか。わたしたちは無償のブログによって、なにを手に入れようとしているのでしょうか。

 この芸術と商業の対立ってなんでしょうか。


 その構図をみごとに言語化した本が、ハンス・アビングの『金と芸術 アーティストはなぜ貧乏なのか』(グラムブックス)になります。

4903341003金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか
ハンス アビング
grambooks 2007-01-01

by G-Tools



 おススメするといっても3,672円の高い本でありますし、500ページの大部でありますし、かなり経済的にも専門的な書となります。政府の助成金についても多くを割かれています。図書館で探してみてはいかがでしょうか。

 芸術がめざすこと、貧乏でも儲からなくてもなぜ人は芸術家をめざすのか、芸術家はなぜ尊敬されるのかといった、ふだんわれわれがもやもやと捉えている事柄をみごとに言語化した本だと思います。もっとほかにかんたんにまとめた本があればよいのですが、ほかに類書を知らないのでこの本ほど適切なものが見当たりません。

 わたしたちはなぜ金儲けを汚いと思い、芸術的無償行為に憧れをいだくのでしょうか。

 これって、世俗の欲望や名誉を断とうとした坊さんや隠遁僧と同じ構図をめざしているようですね。

 利己主義と無私・利他主義の対立です。商業の利己主義に毒されていない無私・利他の行為が優れているという世間一般の思いが仮託されています。

 でも、わたしたちは金儲けやお金を稼がないで生活できる立場に、多くの人がいるものでしょうか。わたしたちの大半は、生活のために多くの時間と労力を捧げるしか生きてゆけないのではないでしょうか。

 世俗の欲望を断った坊さんのようにはなれない人はこの本を読んで、坊さんに憧れてしまう自分の欲求を言語化してみてはいかがでしょうか。

 かんたんにいくつかの文章を本書から引用しておきます。


「それは卓越化に用いられる。人々は自分がいかに有用性のない芸術にかかわっているかを他の人々に見せつけることによって印象づける。つまり、芸術の消費においては、自分がいかに日々の心配から解放されているかをアピールしたいのである」

「高いステータスを維持するためには、芸術は商業的な価値を否定し、経済を否定する」

「反マーケット的な態度は利益のためである。誰よりも非商業的な態度をとるアーティストや芸術関係者が、人一倍高いステータスを持ち、より多くの収入を得ていることがある」

「マーケットでは質に対する報酬はない」

「アーティストは他の職業の人々よりも内的に動機づけられているという意味において、相対的により「無私」である」

「アーティストは金銭的報酬を喜んで放棄する」

「アーティストは生産者であるよりも、むしろ消費者であるかもしれない」




 これらの引用文からも反商業や商業を否定することがなにをもたらすか見えてこないでしょうか。

 それは上流階級のステータスなんですね。

 わたしたちは経済的に自分の身を亡ぼす芸術ステータスの欲求につき動かされるだけでいいのでしょうか。

 なぜ金儲けをそんなに嫌うのか、芸術の先にはなにがあるのか、こういった無意識を言語化する意味で、この本をおススメします。ただすこし専門的すぎるかもしれませんが。

 わたしは金儲けブログには、欠点ももちろん多くありますが、読者を楽しませるための読書本位の視点があることが良いのではないかと思っています。読者を楽しませることでしかお金も注目も入ってこないのではないでしょうか。

 自己本位の趣味や楽しみだけでは、多くの人を巻き込む楽しみをもちえないのではないかと、自己反省もこめて思っています。


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