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12 12
2015

販売・アフィリ

舌を巻く本――『急に売れ始めるにはワケがある』 マルコム・グラッドウェル

4797338121急に売れ始めるにはワケがある
ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
(ソフトバンク文庫)

マルコム・グラッドウェル
SBクリエイティブ 2007-06-23

by G-Tools


 舌を巻く本である。いったいなんの本かわからなくなる。各論が深堀りしすぎていて、全体を俯瞰できなくなる。わたしの脳の情報処理能力を超えた本だね。

 なんの本かというと、商品が一気に爆発的にひろがるメカニズムやクチコミの様相を探った本になるのだろうけど、あつかう題材が梅毒感染からニューヨークの犯罪率減少や、アメリカ独立革命での伝承、「セサミストリート」の徹底的精査、ニューヨークでのチンピラ相手の殺人の背景の力、読書会から生まれたベストセラー、ミクロネシアの自殺連鎖、若者の喫煙の誘惑など、各論が詳細に検討しすぎているために、全体の話がなんだったか、さっぱりわからなくなる。

 要は、爆発的感染を社会的にもたらす要因をさぐった書物である。その爆発的増加をもたらす一点をティッピング・ポイントといい、それが単行本刊行時のタイトルである。

 ただ、とりあつかう題材が伝染病から犯罪、自殺、テレビ番組と横断的にジャンルをこえて並べ立てられるので、もうなんの話かつかめなくなってくるのである。

 それぞれの題材はとても興味魅かれるもので、スリリングな謎にすっかりとりこまれる書物である。各論でなにかいいたくなることがたくさんになってしまうので、全体のテーマが飛んでしまうという書物である。

 この本のさいしょの意図、目的は、商品はどうしたら多くの人につたわり、買われるようになるのかといったクチコミのメカニズム・過程をえぐり出そうとした本だと思うのだが、あまりにも広がりのある各論のために、その根本のテーマがすっかり棚上げになって各論にのめりこんでしまう。

 まずは、ある商品なり、ものごとが人々につたわり、認知され、買いたくなったり、ほしくなったりする過程や伝染における不思議や謎を強烈に刻み込まないと、この根柢のテーマへの粘りつきが出てこないと思う。

 そのクチコミの伝染力を伝染病の事例や犯罪のとつぜんの減少などに重ねるから、なんの本かわからなくなるのである。

 わたしは各論に沈没しすぎるから、全体の俯瞰能力を失ってしまうのである。各論のテーマが興味つきなく、スリリングな謎解きすぎるからね。

 とくにニューヨークでチンピラ相手に射殺した犯人は、その本人の資質が犯罪をなさしめたのか、なにもかも荒んだ地下鉄の環境のせいだったのかという議論は、わたしの興味を強く誘った。人が犯罪や変貌をおこす理由は、その個人的資質であるよりか、背景や環境の力によるとことがかなり強いのではないかと思う。人は犯罪を裁きやすくなる理由からか、本人の資質に帰したがるのだけどね。

 ニューヨークでの1990年代に入ってからのとつぜんの犯罪率減少の話もとても興味魅かれるもので、それだけでさいしょのテーマがすっかり飛んでしまう。これは「壊れ窓理論」が功を奏したのだろうか。

 まあとにかく販売や広告の人が商品の爆発的に売れる感染力のティッピングポイントをさぐろうとして読んでも、迷宮の森に誘い込まれてしまうような本だね。もう鳥の目を失って、虫の目でしか目の前の対象しか見えなくなる。

 ぜんたいの展望はかすんでしまうが、各論のスリリングで謎に迫ってゆく文章は飽きさせないし、ぐいぐいとひっぱってくれるから、けっしてムダになる読書体験ではない。

 だけどどうしたら爆発的に商品を売れるようにできるかという簡便な方法は、とてもひっぱりだしてくれる本ではないだろうね。この本を書いた人と、この本の全体的展望をたえず手放さずに俯瞰できる人は、きっと脳の情報処理の能力が優れているのだろうね。



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