HOME   >>  販売・アフィリ  >>  「トモダチからはじめてください」――『キズナのマーケティング』 池田紀行
11 23
2015

販売・アフィリ

「トモダチからはじめてください」――『キズナのマーケティング』 池田紀行

4048685619キズナのマーケティング
ソーシャルメディアが切り拓くマーケティング新時代 (アスキー新書)

池田 紀行
アスキー・メディアワークス 2010-04-09

by G-Tools


 2010年に出された少々古い、SNS時代における広告やマーケティング戦略について書かれた業界人・企業向けの本である。

 わたしは97年のホームページ開設以降、完全に趣味で無料の生活者・消費者としての発言をずっとおこなってきた。だからこういう広告やマーケティングの目線からの戦略眼というものをまったくもっていない。この業界についてなにもエラソーなことはいえない。

 広告業界者や企業にとっては2010年はソーシャルマーケティング元年だったようで、「クチコミが爆発する」「低コストで何倍もの効果が得られる」「商品がバンバン売れる」と話題沸騰だったようだ。

 だが、売れない。とうぜんである。ネットやSNSは消費者や生活者としての自由な発言や交流がメインであって、そこに金銭や企業戦略がまぎれこんできたら総スカンを食らう場所であったのだ。

 でも企業サイドではそんな無料圏で、マス広告に変わって低コストの宣伝媒体を見つけられたと大喜びしたのだが、そんなわけがない。ここは消費者天国の、生産者・金銭関係お断りの世界である。

 2010年の時点で著者が講演をおこなった広告関係者のなかでは、ブログやツイッターをやっている人はだいたい10%しかいなかったという。広告にたずさわっている人は10人に1、2人ほどしかソーシャルメディアを使っていなかったのである。まあ、かれらは広告で自己表現や自己創造といった満足をうることができるからだろう。

 そこで「魔法の杖」ではないソーシャルメディアの使い方や要注意点がるるのべられるのが本書である。しかしこういうマーケティング・広告論はどうしてこう言葉が専門的で、微に入り細にうがち、細かな世界に入ってゆくのだろう。もっとたんじゅんにわかりやすく、短くしろと思うのだけど、専門ジャンルを高度化しないと信頼されない、専門家として認められない弱さでもあるのかと思う。なんだか、しろうと意見だが、虚構の塔みたい。

 ちなみにこの著者の会社でイケダハヤト氏が短い期間、はたらいていたことがあるそう。イケハヤ氏はゲラまで手伝ったという記述をネットで見つけるくらい深くかかわっている。イケハヤ氏はこういう目線でブログをとらえているわけだ。

 マーケティングは「お見合い結婚」から「恋愛結婚」になったというが、マス広告はせいいっぱいおめかしをして、自分の長所をアピールしておればよかったが、SNSはよいところも悪いところもすべて見透かされる消費者が強い時代になったということだ。

 上からマス広告で自社の都合のよいこと、いいところ、長所ばかり宣伝しても、もうだれも見向きもしなくなった。高い商品ならネットで徹底的に検討され、調査される。マス広告のように自分の都合のよいことだけをむりやり視聴者にゴリ押しなんてできない時代になったのである。

 これは消費者として生きている人には十分わかりきった話だろう。もう企業からのマス広告とか踊らされること、美辞麗句にうんざりしている。

 この本の読者に向けられた言葉はまるで消費者の気分や感情がまるでわからない、知らない世界の住人向けに書かれているかのようだ。そこまで企業人は消費者からかけ離れ、消費者ではなく、生産者・供給者のみの存在だったのだろうか。

 ブログはむかし金銭関係のまったくない発言や意見主体だったが、いまはアマゾンアフィリエイト、グーグルアドは当たり前のように貼られるようになった。お小遣いていどの金銭授受は容認される流れに動いてきた。

 でもこの人たちはほんとうにお金を得ることや儲けることをちっともめざさない記事目的、承認目的だけの「聖人」なのだろうか。ブログでメシを食いたい、ブログで儲けたいという金銭目的の流れもだいぶ増えてきたり、自覚されるようになってきたのではないか。

 というか、そこまで戦略的、マーケティングに考えないと、もうたくさんのブログやツイートの中から自分の発言が注目されなくなっているのではないか。効果的に結果を目的にした戦略を立てないと、勝てるフェーズではなくなってきたのではないか。

 そういう意味でネットでの消費者だった創作者は、もう生産者・供給者側にうつっているのではないか。ソーシャルマーケティング、広告脳といったネットで嫌われてきた存在に、頭を浸潤されている時期なのかもしれない。

 ブロガーやツイッターも、もうマーケティングや広告戦略の目線が必要になってきた時代なのかもしれない。

 「これはすばらしい商品だ、こんなに優れている、買ってくれ」とマス広告でいってきた企業・広告も、ネットの世界で消費者に歩み寄らなければならない。

 そこでこの本ではソーシャルマーケティングをあつかう担当者・企業は、トモダチからはじめなければならないと説く。上から押し付けて、ゴリ押ししてもだれも買ってくれないし、興味もしめしてもくれない。まずはネットでのトモダチにならなければならないというわけだ。それがタイトルの「キズナのマーケティング」というわけだ。

 販売とか営業の本ではもっとかんたんに書かれている。「売り込むな」、「信頼を得る前に売り込むな」という二点である。このかんたんなことをこの本ではむづかしい、迂遠な表現で300ページも書かれているのではないのと思います。

 企業は売ってやる、広告で長所をアピールすればバカ売れという時代ではなくて、ひたすらトモダチや共感の輪をひろげてゆかないと、自社商品の長い顧客になってくれないというメディアの時代にさまよいこんだということである。

 企業はトモダチや消費者としての顔で、相手が興味をしめしてくれるまでひたすら待たなければならない。いや、カネと量のマス広告でゴリ押ししてやるという気持ちにたえられなくなるかもしれない。でもそうするとネットでゴリ押しだ、と見透かされて批判される。

 企業や広告は生産者・供給者の顔を捨てて、ひたすら消費者、生活者の顔をしなければならないのでしょうね。そうやって信頼されてやっと買ってもらえる。むりやり売り込んだり、長所をひたすらアピールしても、だれも買ってくれない時代になったのでしょうね。営業や販売の最前線ではとっくに肌感覚になっていることにすぎないのではないでしょうか。



ソーシャルインフルエンス 戦略PR×ソーシャルメディアの設計図 (アスキー新書)アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業 (ウォートン経営戦略シリーズ)明日のコミュニケーション 「関与する生活者」に愛される方法 (アスキー新書)次世代共創マーケティングキーパーソン・マーケティング: なぜ、あの人のクチコミは影響力があるのか


関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

twitterはこちら→ueshinzz

FC2カウンター

Page Top