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10 26
2015

書評 社会学

「貨幣」や「商品」のふり――『ファッションの文化社会学』 ジョアン・フィンケルシュタイン

4796702792ファッションの文化社会学
ジョアン フィンケルシュタイン Joanne Finkelstein
せりか書房 2007-09

by G-Tools


 ファッションとはなにか、ファッションはどう読むのかといった本はいがいに少ない。せいぜい鷲田清一の名前が思い浮かぶくらいだ。

 この本はヴェブレンやジンメル、バルト、ボードリヤールなどの社会学などを中心にファッション論を読みこんだ入門書、概括書となっているので、はじめてファッション論にふれる人には参考になる本だ。

 ヴェブレンは「ファッションは社会の中でのその人の地位を明らかにするシステム」であるといった。上流階級はそのファッションを模倣しようとする下層階級とみずからを区別するためにたえず新しいファッション、流行をつくりだしてゆかなければならない。これは「滴り理論」というものだね。

 現代日本では階級によって消費が異なるといった違いを明確にみとめられるわけではないので、ジンメルの議論により近づくと思う。

 ジンメルは流行を他人と異なる個性を見せたい願望と、ほかの人と同じ格好をして所属欲求を満足させる画一化の流れの緊張のなかで生まれるといった。これは現代でも人と違いたいという欲求と、同じ格好をして人と違い過ぎたくないという欲求として、われわれにも実感されることだね。

 だれも知らない都市の中ではわれわれは自己喪失や匿名性、画一性に埋没してしまう。そこで個性や違いをファッションにたくして自己表現や自己優越をこころみようとするのだ。これもまたわたしたちの実感に近いものではないだろうか。

 われわれは「社会的貨幣」のように社会の中でファッションという言語、記号をもちいて、社会での価値や意義を都市の中で示そうとするのだろうね。まるでわたしたちは貨幣の価値をまねて、価値ある貨幣であるかのようにファッションにそれをたくすのである。つまり、「お金になりたい」のである。

 流行やファッションというのはだれにでもわかるというものではない。わかる人だけがわかる記号体系であり、その暗黙かつ厳密なルールを知っている者だけが他人を排除したり、差異を誇示できるものである。ブルデューのいうような文化資本が必要というわけだ。

 ファッションはしばしば言語や記号だといわれるのだが、言語のように定義や概念がさだまっているわけではなく、多義的であり、メッセージも明確ではない。下層階級をバカにしたり区別するための上流階級の流行が中流階級にカッコいいものとして流行ったり、また上流階級を揶揄し、批判するための対抗文化は、中流階級や大量生産の流行の中にとりこまれてゆく。

 ファッションの言語・記号はあるときとある人たちだけに有効であり、時間と人とによってその意味も価値も変わってきて、やがて言語や記号の意味さえなくしてしまうのである。泡沫的・一部的な言語発生がファッションというものかもしれない。そしてそれを読む解く能力と技術も文化資本や情報力によって左右されてゆくのである。

 ファッションとは都市の中でわたしたちの貨幣的な価値や社会的な価値を見せたり、隠したり、それでもあらがいがたく社会のモノサシや価値の目で測られる指標となるものである。

 わたしたちは都市の中で、商品や貨幣の価値としてたえず目踏みされる社会に生きているのでしょうね。そしてわたしの幸福や安心、豊かな気持ちといったものもその指標や変動にゆだねられているのではないでしょうか。


▼巻末の参考文献から
有閑階級の理論 増補新訂版 (講談社学術文庫)モードの体系―その言語表現による記号学的分析衣服哲学 (岩波文庫 青 668-1)儀礼としての消費 財と消費の経済人類学 (講談社学術文庫)

性とスーツ―現代衣服が形づくられるまでキャリア・ウーマンの服装学 (1978年)衣服のアルケオロジー―服装からみた19世紀フランス社会の差異構造 (1985年)


ジンメル著作集〈7〉文化の哲学 (1976年)

衣服の記号論 アリソン・リュリー

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