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08 25
2015

書評 社会学

女の利己心・自意識を嗤う――『モテたい理由』 赤坂真理



 女性のモテたい欲望、服や格好ばかりの自意識を、ファッション雑誌などの女性誌からあげつらって、斜め上からの視点であざ笑う本ということになるのかな。

 メディアを批判的に読み解くメディア・リテラシーの本である。

 女性の頭のなかにファッション雑誌しかないとしたら、そのような批判的、懐疑的な目が育つことはまずないだろう。商業誌的な視点しか持ちえないのは危機であり、悲劇であり、「喜劇」だと思う。煽られ、踊らされ、カネを使わされるだけの存在であったとしたら、悲劇をとおりこして「喜劇」である。

 バブル崩壊をとおりこして女性にもしっかりとメディアに踊らされるバカらしさは浸透したと思っていたのだが、たとえば雑誌のお仕着せのファッションをしないだとか、ブランド品ばかりまとうのはカッコ悪いとかね。でも2007年のこの赤坂真理の視点では、まだ雑誌に支配された世界は健在なのかもしれないなと思わせる。

 この本は女性の欲望を俯瞰して、まるハダカにして見せて、笑う本ということになるかな。欲望や自意識にかんして、そういう視点をもたないと商業的な欲望に操り、踊らされるだけの存在になってしまう。女の欲望を自身で笑う。

 そのような視点をもって職業的な欲望に踊らされるバカらしさを自覚できるようになるし、自身の無自覚な欲望を客観的にコントロールしたり抑えられるようになる。あまりひねくれすぎると情熱や人生の熱望もうしなってしまうのだが、手放しの欲望や利己主義だけでも商業に食い物にされるし、またまわりとの齟齬もきたしてしまうだろう。

 女性誌がゴルフ雑誌を出せば、男のフォームやスコアは二の次になり、ファッションや格好でどう注目されるかが中心になるし、女性誌がモテや愛され方をとりあげれば、どのような服やしぐさをすればモテるかばかりになる。どう見られるか、どう注目されるかの自分の視点ばかりになる。

 モテや愛されを追求して、ファッションや小技を開発してきたファッション雑誌はついに「男の狩り場」になってしまったのではないかと赤坂真理はいう。スペックや数を競う婚活はけっきょくは、「ヤリたい」だけの男性誌『Hot Dog Press』となんら変わりのない地点に達してしまったのではないか。

 自分が「どう気を引くか」や「他人にどう見られるか」ばかり気にして、女性誌は男性とどう対話するかということを語ってこなかったし、モテたいといいながら、男性への思いやりや共感のかけらもない。男性の好みや興味を考えたこともなく、同性の視線を意識したつばぜり合いばかりくりひろげる。

 女性誌はとことん利己的であり、自分のことしか考えてこなかったのではないか。そういった反省をうながしている本である。

 欲望というのは利己的なのだね。利他的な欲望をもつこともできると思うのだけど、お金の回るしくみは他者に利他的な奉仕をすることだと思うのだが、女性誌は他者を喜ばせる、他者に思いやりをもつという利他の精神をはぐくめなかったようだね。

 この精神をはぐくまないとお金もまた稼げないと思うし、また他者との関係もしあわせになるだろうか。他人から狩るだけの存在は、他人のメリットや利得を尊重しないので、ジリ貧になると思うのだが。それがお金の回り方というもの。

 この本は2007年に出ていて、芸能ネタのエビちゃんとか、『愛される理由』、ハンカチ王子などいささか古びた話題を語っている。芸能ネタは新書の長さには耐え得られないと思うのだけど、きょうびの新書は芸能雑誌なみのサイクルと生命でいいのか。


 赤坂真理はやはり文学者であって、社会学的な冷静さとか説明能力はすこし足りないように思えた。自分はわかっているけど、他人は知らないかもしれないという共通了解のしにくい文章に、わたし的にはいくどと出会った。

 最終章にはとうとつに戦後論や戦争論が出てきて、つながりはあるのか、のちの書『愛と暴力の戦後とその後』の伏線だったかわからないのだけど、これまで展開してきた女性論とどうつながるのだろうとべつの本に迷いこんだ気分で終わった。なんだったんだろう。戦争論や戦後論の文脈としては、興味はあるのだけどね。


愛と暴力の戦後とその後 (講談社現代新書)「モテ」の構造―若者は何をモテないと見ているのか (平凡社新書)電波男 (講談社文庫)結婚の条件 (朝日文庫 お 26-3)オリーブの罠 (講談社現代新書)

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