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2014

おすすめ本特選集

2014年、ことしのベスト本6冊 「未来の黙示録」

 ことしのベスト本は、ひとつのテーマを深掘りしていて、そういった興味からでないとよさがわからない本かもしれない。

 ことしはずっと近代の精神史、戦前の思想史といったものを探っていた。戦前に市民社会がどうして戦争に向かっていったのか、そのプレ精神史を腑に落ちるようなかたちで実感しようともがいていた。そういった問題意識がないと、ちょっとこれらの本のよさはわからないかもしれない。

 2014年はヘイトスピーチ本や嫌韓嫌中本があふれ、日本の自画礼賛本がたくさん出された年である。右翼化、国家主義的な流れが一線を画しはじめた年である。そういった危機感と、長年の懸念であった日本の80年周期カタストロフィー説の検証というかたちで、明治から戦前の精神史をうきぼりにさせてみようと思っていた。

 明治の終りに西欧列強の仲間入りという国家目標を達成すると、青年たちのあいだには閉塞感と煩悶があふれた。左翼思想にかぶれるもの、右翼思想の勃興などをへて、戦争にのめりこんでいった。

 そのすがたは昭和の終わりに経済大国になり、ニートやフリーターになり目標もなく、ただよう現代の青年とそっくりである。大正、昭和にかけての精神史は現代にとっては「未来の黙示録」なのである。


 【追記】 天皇陛下も2015年の年頭所感にこういいました。「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」――「天皇陛下の新年の感想 全文



昭和維新試論 (講談社学術文庫)
橋川文三
講談社 (2013-10-25)


明治の煩悶青年がたどり、いきついた先を右翼思想の流れで読み解こうとした橋川文三がいちばん戦争へといたる精神史をうきぼりにした研究者ではなかったのかと思う。昭和維新へといたる精神史。

わたしの書評→「卓越した社会精神史――『昭和維新試論』 橋川 文三



4006002572橋川文三セレクション (岩波現代文庫)
橋川 文三 中島 岳志
岩波書店 2011-12-17

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国家目標を達成し、煩悶や恐慌にしずんだ日本の青年たちが向かった先は超国家主義や右翼思想だった。この「奇胎の40年」を生み出した精神史にいちばん肉薄したのが橋川文三ではなかったのか。

わたしの書評→「超国家主義の精神史に肉薄した一冊――『橋川文三セレクション』



昭和の精神史 (中公クラシックス)
昭和の精神史 (中公クラシックス)竹山 道雄

中央公論新社 2011-01
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八岐の大蛇のように分裂したのが戦時中の日本国家というものではなかったのか。戦前の超国家主義に導いたものはなんだったのか。資本主義や封建制の強化ではなくて、それを克服しようとした試みが泥沼の戦争へと導いたのではないのか。保守思想家の圧倒的な書物。

わたしの書評→「「主体」なき戦争国家――『昭和の精神史』 竹山 道雄



4314001712日本精神史への序論
宮川 透
紀伊國屋書店 1995-02

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忘れられた書物かもしれないが、わたしが読みたかったのは明治、大正、昭和にいたる精神の通史。戦争、超国家主義へといたる社会精神にどのようなことがおこったのか。そういった書物があまりにも少ない。

わたしの書評→「「日本への回帰」の警鐘――『日本精神史への序論』 宮川 透



4582766714昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)
半藤 一利
平凡社 2009-06-11

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これほどわかりやすく、読みやすい戦前と戦争史はないのではないかと思う。ベストセラーになっただけはある。

わたしの書評→「わかりやすく読みやすい――『昭和史 1926-1945』 半藤 一利



4061598171太平洋戦争と新聞 (講談社学術文庫)
前坂 俊之
講談社 2007-05-11

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細かすぎてかなり読みづらい書物であるが、時系列で戦争へといたる道、言論封殺がおこなわれてゆくさまが理解できる書はそうないのではないかと思う。戦争を歓迎し、政府の弱腰を批判したのは国民や新聞であったのがよくわかる。

わたしの書評→「新聞はどのように死んでいったか――『太平洋戦争と新聞』 前坂 俊之






 ことしはいつの間にか半年休むことになった。四ヶ月しか働いていませんw

 夏の終わりにバイク転倒で肋骨を折った。寝起きすらたいへんだった。バイクとのつき合い方を考える。

 Kindle Fireを遅まきながら買った。古本のほうが安かったり、ほしい本が電子化されていなかったりして、活用は多くなされていない。寝転がってのネットは生活の一部になったが。

 2015年がみなさんにとってよい年であるように。ご多幸をお祈りしております。


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