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2014

書評 労働・フリーター・ニート

タレント居酒屋談義――『「やりがいのある仕事」という幻想』 森博嗣

「やりがいのある仕事」という幻想
森博嗣
朝日新聞出版 (2013-07-02)


 なんだろう、人気作家のタレント本というのかな。工学部で作家というから浮世離れしているのかもと思ったら、そのまま客観的裏づけのない居酒屋談義を聞かされるだけ。百円本だったからよかったものの、ファンの方だけが読むシロモノだろう。

 世の中の大事にしている価値観をふっ飛ばしてくれた森毅ポジションに似ているかもしれないが、およびもしない。新書にも見かける方だが、進出していいの?

 すこしだけいい言葉があったとしたら、つぎの何点か。

 子どものときに好きなことを見つけたとしても「そんなオタクな趣味はやめろ」といって妨害される。周囲がゆるしてくれず、いやな顔をする、迷惑だといわれる。でも自分がやりたくてしかたがない、この抵抗感こそがやりがいである。その困難が楽しみの本質である。

 いつも楽しそうな人はその話を自分からしたがらない。そうでない人というのは、子どもの写真を見せたり、仕事の話をしたり、マンションの話とか、旅行の話を自分からいいたがる。ほんとうの楽しい者は人に話す必要などない。自分のためにするものだ。

 ほんとうに儲かる商売なら、ノウハウを公開したり、人を集めて指導したりしない。教えないこと、知られないことが儲かる状態をつづける最善の策だからだ。すでに流行っているもの、広く人気があるものは、これからビジネスをしてはいけないサインである。よく宣伝される商品は売れてないからこそ宣伝される。

 話をするのが苦手だ、考えて工夫するのが得意という人はぎゃくに営業に向いている。人と話をすることが得意という人は営業に向いていない。なかなか話せない人はよく話を聞く信頼できる人という印象を与える。営業の仕事で大切なことは、信頼を得ることであって、調子よくしゃべることではない。

 まあ、この本には仕事をおおげさに考えるなとか重い価値観を背負わせる必要はないといった価値転倒の基本ベースをもっているから、それなりに肩の荷をおろせる考え方を与えてくれるだろう。だけど作家で成功してもう稼ぐことの必要のないこの人の頭の中のことだけであって、世間やほかの人がどれだけ共有してくれるのかといった点でははなはだ頼りない。その共有ができない世の中だから、若者は仕事のことで悩むのではないの。


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